第56話


 玲奈に関してはまったく問題ないな。

 あとは麻耶が可愛いからって気を抜くなよ。

 それからも三人の配信を見ているが、雑談を交えながらも特に問題なく進んでいく。

 ……今回の配信、麻耶が可愛いくて強いのは知っていたが、凛音もかなり力をつけているな。


 まだまだ凛音の魔力を考えれば、まだまだ伸びしろはかなり残っているが、それでも前ほど魔法に対しての苦手意識はなささうだ。

 近接戦闘はそこまでせず、魔法ですべてを薙ぎ払っていく。

 ……俺とは真逆のスタイルだな。


 身体強化はあくまで敵から距離をとるためだけに使っているようだ。

 麻耶が敵をかきまわし、凛音が魔法で仕留める。

 麻耶がアタッカー兼タンク、凛音がアタッカー兼サポーターといった感じの布陣ができあがっているな。




〈二人の能力高すぎるな〉

〈心配してたけど、これならまったく問題なさそうだよな〉

〈どっちも余裕すぎて俺の心配が無駄みたいじゃんw〉


 確かに、コメント欄の言う通りかもしれない。


〈……「リトルガーデン」かなり実力のある子増えてきたよな〉

〈もうこうなってくるとギルドみたいになってきたよなマジで……〉

〈まあ、配信者たちの集まる事務所って疑似ギルド、みたいな部分もあるからな〉

〈最近低ランク迷宮の発生も増えてるからな。協会だけじゃ対応しきれないし、そのあたりは事務所とかで引き受けるってのもありなのかもね〉


 協会は……まあ、人手不足だからな。

 協会に所属している冒険者というのはかなり少ない。

 単純に協会は公務員なので、給料が決まってしまっているからなぁ。


 実力のある冒険者が所属するメリットといえば、安定感くらいだろうか?


 協会でもっとも能力があるのは会長ではあるが、もうかなりいい年齢だしな。


〈もう「リトルガーデン」もギルドにしちゃえばいいのになw化け物いるんだしw〉

〈それに、「リトルガーデン」には核兵器みたいなのいるしな……〉


 核兵器。

 確かに、麻耶は世界中の戦争を止められるだけの可愛さがあるが……そんな言い方はないだろう。


 とはいえ、「リトルガーデン」がギルドを名乗っても悪くはないかもしれない。

 ……ただまあ、所属メンバーが若い子ばかりというのは問題かもしれない。

 誰か引っ張っていける人がいなければ、皆も迷いが生まれてしまうだろう。


 配信は特に事故などなく、この迷宮の最終階層である十階層へと到着する。


『さてさて、次でいよいよ最終階層だけど、二人とも準備いい!?』

『大丈夫です』

『大丈夫だよっ」

『それじゃあ! 行こっか!』


 玲奈の宣言に合わせ、三人は十階層へと降りていく。

 それから五分後。無事迷宮のボスモンスターは討伐され、さらにその奥の部屋へと進んでいく。

 そこには小広間が広がっており、中央には台座に乗せられた大きな魔石があった。


 ……ここは迷宮の心臓部と呼ばれる部屋だ。

 迷宮は、ここにある魔石によって管理されていると言われている。

 魔石から流れてくる魔力によって、迷宮内に魔物は生み出されたり、破壊された迷宮内部などが修復されると言われている。

 台座から魔石を外すことで、迷宮への魔力の供給が絶たれ、まもなく迷宮は消滅することになる。

 麻耶がその魔石へと手を伸ばし、台座から外した。

 すると怪しく光を放っていた魔石は、急に静かになる。迷宮全体もどこか静かになったようだ。


〈これで迷宮攻略なんだっけ?〉

〈そうそう。あとは一時間くらいで迷宮が壊れるから速やかに脱走する必要がある〉

〈魔物も今出現しているやつ以外は再出現しないから、まあ問題ないだろうな〉

〈この迷宮も転移石あるし、それ使って終わりよ〉


 そのコメントの通り、麻耶たちはそれからすぐ迷宮からの脱出に成功した。

 予定通り、何の問題もなく終わってくれたな。


『よーし、無事解決! あとは協会に連絡しておけば、あとは協会の人が確認して完全終了って感じだね』

『そうですね……まさかここまで快適に行くとは思っていませんでした……。麻耶さん、かなり強くなりましたね』

『いやいや、私がっていうよりも凛音さんだよ。凛音さん、滅茶苦茶強かったもん』


 確実に麻耶も強くなっている。俺としては、身を守れる程度の力をつけてくれればと思って指導したのだが、いつの間にかずいぶんと成長してしまった。


 ただ、あんまり強くなると今度はギルドとかからスカウトが来るからな……。

 俺がいい例だ。

 今も色々なギルドから事務所へ連絡が来ているらしい。


 すべて事務所にシャットアウトしてもらっているので快適だ。


 とにかく、今日の配信をまとめると。

 今日も麻耶は可愛かった!



―――――――――――

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