第41話
それを軽く振ってみると、とても扱いやすかった。
「これかなりいい剣だな」
「前に鍛冶師の人とコラボしたときに作ってもらったんだよね。かなりの腕だったよ」
「なるほどな。ただ、完全に玲奈用に作られてるからちょっとしっくりこないな」
「まあそこは仕方ないけど、戦闘してもらっていい?」
「ああ、分かった分かった」
少し俺が使うには得物が短い。
そんなことを考えているとシャドウナイトが現れた。剣を持った個体が三体か。
迫ってきたシャドウナイトたちに、俺は魔力を込めた斬撃を放った。
斬撃はあっさりとシャドウナイトを両断する。残ったのは一体だけ。
魔物としての本能か。
怯えた様子ながらも挑んでくる。
こちらへと斬りかかってきたので、それに剣を合わせ、相手の剣を受け流すようにして武装を解除し、その体を両断する。
「はい?」
戦闘を終えたところで、玲奈が困惑した様子で首をかしげている。
「まあ、こんなところだな」
「なんか剣からびゅっ! って出たんだけど」
「剣に魔力を纏わせて、それを放っただけだ。勢いよく振ればあんな感じで使えるんだ」
〈は?〉
〈何言ってるんだこいつ……?〉
〈お兄さんはやっぱりすごいや……〉
〈もうね。凄い以外の言葉が出てきませんよ……〉
〈本当にこいつ凄すぎるだろ……〉
「あ、あたしもできる?」
「ああ。ちょっとやってみろ。魔力を剣に纏わせることはできるんだろ?」
「まあ、多少は……」
彼女に剣を渡すと、早速魔力剣を試す。
「魔力の質が悪い。ちょっと調整するぞ」
彼女の肩に手を乗せ、魔力を操作する。とたん、玲奈は甲高い声をあげる。
「うひっ!? マイダーリンに体の中弄られてるよぉ……」
「誤解されること言うんじゃない。こんな感じの魔力だ。分かったか?」
彼女の剣にまとわせている魔力を修正すると、しばらく玲奈はその魔力を確かめるようにしている。
目を閉じ、じっと魔力を感じ取っていた彼女は、それから剣を振りぬいた。
剣から斬撃が放たれた。
一度使用したあと、玲奈は再度練習するように放つ。
……まだまだ威力は低いが、ほぼ習得したな。
「さすがに、天才だな」
「えへへ、ダーリンの教え方がうまかったからね。……なるほどねぇ、こんな感じで使うんだ。魔法の準備に比べて速いから、いい感じに攻撃に使えそうだね」
「ただまあ、あくまで魔力操作の基礎を身に着けてないと使いこなせないからな。まずは身体強化とかの基本をある程度できるようになってから訓練したほうがいい」
「だそうです。視聴者のみんな」
〈こいつら、やばすぎる……〉
〈お兄さんのせいで霞んでたけど、レイナちゃんもやべぇんだよな〉
〈そのレイナちゃんが手も足もでないこの迷宮の魔物を蹂躙できるお兄さんって……もうパワーバランスがおかしすぎる……〉
俺は玲奈と雑談をしながら先に進んでいった。
100階層へとつながる階段を歩いていたときだった。
「ひょ?」
玲奈が奇妙なうめき声をあげる。
いつもの奇声だと思って無視していたのだが、バシバシと背中を叩かれる。
「マイダーリン。今の接続者数30万人こえてるよ! ていうか、今もまだ止まらないんだけど!」
「そうなのか? それって多いのか?」
「滅茶苦茶多いよ!」
〈ちょうどいい夜の時間だしな……〉
〈Twotterのトレンドに入ってたぞ?〉
〈そっちから来たわw〉
〈ていうか、女子高生とおっさんのSランク迷宮とか珍しすぎてなw〉
「誰がおっさんじゃぼけが」
「ダーリン落ち着いて。ていうか、初見さんも多いみたいだね! このチャンネルはあたし、真紅レイナとダーリンのカップルチャンネルなんだよね! 皆誤解して帰ってね!」
「んな日本語の使い方があるか。俺の可愛い可愛い妹のマヤチャンネルをよろしくなー」
〈こいつらロクなこと話してないぞ……〉
〈でた、お兄さんのダイレクトマーケティング……〉
〈お兄さんの視聴者が増えれば増えるほど、兄の情報について話してくれるマヤチャンネルの視聴者も増えていくというね〉
〈皆も早く、妹と兄を手に入れよう!〉
視聴者たちは、俺と麻耶の間になるらしい。俺から見れば弟、妹、麻耶から見れば兄、姉といった感じである。
「そしてなんと、今なら妻もついてくる!」
「ついてこないぞ」
「いざってときはあたしが勝手についていくから大丈夫!」
「それはもはやストーカーだからな? 大丈夫じゃないからな?」
……って、ふざけていたのだが、今もさらに視聴者は増えているようだ。
この迷宮攻略に日本の多くの人が注目している、ということだろうか?
いや、日本だけじゃないな。海外の人と思われるコメントも多くある。
ただし俺は外国語は分からん。英語は精々中学卒業レベルしかできないため、長文で書き込まれてもよく分からない。
少しの間雑談をしたところで、俺たちは迷宮の100階層へと向かう。
「それじゃあ100階層に降りるか」
「了解! あたしは撮影係に徹するね?」
「ああ。階段から出てきてもいいが、気は抜くなよ」
「了解!」
彼女と共に俺は階段を降りていく。
―――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
『楽しかった!』 『続きが気になる!』という方は【☆☆☆】や【ブクマ】をしていただけると嬉しいです!
ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます