第19話
〈……マヤちゃんめちゃ強ない?〉
〈前回の黒竜に襲われたときのイレギュラー除くと、普通に高校生の中でみても上位の冒険者だよな?〉
〈この兄妹やばいよ〉
〈お兄さん、質問です! 自分遠距離魔法が苦手で、距離をうまく詰められないんですけどどうすればいいですか?〉
これ麻耶の配信なのだが、俺への質問が飛んできた。
俺が答えてもいいが、ここは麻耶への指導も含めて麻耶に聞いてみよう。
「麻耶。この質問の対応はどうやってやるとおもう?」
「えっとね……こうやるんだよ!」
俺は以前麻耶に教えたとおりのことをやってみせてくれた。
ゴブリンの懐へ一瞬で迫り、短剣で喉をかっさばく。
「一瞬で相手の間合いに踏み込む!」
「そういうことだ。さすが麻耶。質問者さん、分かったか?」
〈できるかぁ!〉
〈脳筋すぎるだろww〉
〈お兄ちゃん……同格の相手の場合無理です。どうすればいいですか?〉
「もうそうなったら遠距離魔法をダメージが出ない程度でもいいから出せるようにするんだ。陽動として使えるからな」
〈なるほどな〉
〈まあ、ダメージがないかどうかは相手も分からないしな〉
〈見掛け倒しでも使ったほうがいいてことか……〉
〈これは確かにその通りだよな〉
「まあ、今回質問者さんは魔法攻撃自体が苦手みたいだから……あとはこれだな」
俺は足元に転がっている小石を見つける。
〈石?〉
〈ああ、なるほど。それでうまく相手の気をひくと?〉
迷宮内ではこういった自然の物質があるから、使い道は色々とある。
コメント欄の解答は少し違ったので、実際に試してみせよう。
ちょうど霧が集まってきて、ゴブリンが出現する。
俺はカメラを小石に向けた後、麻耶に下がっているよう手を動かしそれから、
「シュート!」
俺が思い切り石を蹴りぬく。同時に、小石に魔力を纏わせる。それで頑丈さを強化する。
石はゴブリンの頭を悠々と貫通して仕留めた。
「こういうわけだ」
「おお、お兄ちゃんさすが。私だとまだちょっとした石とかに穴をあけるくらいしかできないんだよね……」
「いやいや麻耶は可愛いし、何より火魔法が使えるんだから気にするなって」
「……そうかな? でも魔法が準備できない場面もあるんだし、使えるようにはしたいんだよね」
向上心の塊すぎるぞ麻耶……。
やる気に溢れている麻耶も可愛らしいので、しっかりとカメラに収めていると、コメント欄が何やらざわついていた。
〈は?〉
〈何言ってんだこの兄妹……〉
〈今、何をやったんだよ……?〉
〈え? お兄さん小石蹴っただけじゃねぇ?〉
〈なんでスナイパーライフルで射抜かれたようにゴブリンの頭を貫通してるんですかねぇ……〉
そんな質問が来ていた。
きちんと説明しておかないと、視聴者が混乱してしまうか。
「魔力をものにのせて強化しているんだ。武器とかに簡単に使う人もいるだろ? それを突き詰めていけばこのくらいはできる」
〈……マジかよ〉
〈いや確かに剣とかに魔力をちょっと纏わせるのは知ってるよ? でもここまでの威力になるなんて聞いたことないんですけど……〉
〈いや、結局遠距離相手の対策がバケモンにしかできないようなことなんですがそれは……〉
「まあ、ここまでは無理でも小石を普通に投げるだけでもいいからな。ある程度投擲の能力を高めること、その場の環境にあるものを使えるように立ち回ることも大事になるってわけだ」
遠距離攻撃があまりない俺としては、そうやって使えるものはなんでも使うというスタンスだ。
〈なるほどなぁ……〉
〈戦闘面に関してはお兄ちゃん結構理知的だな〉
〈こうして話している分には普通にできる冒険者だなぁ〉
〈やってることは脳筋に見えるけど、すべて鍛え上げた結果だもんな〉
「まあ、そういうわけで魔力の強化訓練からがオススメだ。体内での身体強化を行って、体に負担、異常が出た場合は失敗だから失敗しないように反復して練習。物を魔力強化する場合は、紙とかティッシュのようなものがオススメだな。そこまで金かからないし、うまくできればまあ、普通に斬れ味抜群になるからな。失敗したときは壊れるから見極めやすいし」
俺は近くの雑草を引っこ抜き、魔力を伝達させる。
それまでだらんと垂れ下がるようになっていた雑草たちは、魔力を帯びるとピンと伸びた。
「こんな感じでピンと伸びれば、うまく伝達できてるってわけだ。ここから、魔力を鋭く磨くようなイメージで強化していくと斬れ味が増していく。極限までいけば――」
俺は近くの木に近づいて、振りぬく。俺が拾った雑草は木を切断した。
〈おおおおお!?〉
〈マジかよ……〉
〈ここまでできたらもう武器いらないじゃんw〉
「そんなことないぞ? 元の物が強いほうが強化しやすいし、強化の限界値も伸びるからいい武器を持っておく分に越したことはないな。ま、麻耶の放送でも流しながら訓練してたらいいんじゃないか?」
〈いや、この配信普通に冒険者学校とかの指導で使えるよな〉
〈ていうか、お兄さん。マヤちゃんの指導しているのを見るにめっちゃ教えるのうまそうだな……〉
〈魔力の感知とかに関してでいえばお兄ちゃんはずば抜けてるからな〉
〈あとマヤちゃんへの愛もな……〉
ってまああんまりこっちの話ばかりしていても誰の配信か分からない。
「そういうわけで、まあまた何かあれば俺の配信のときにでも質問してくれ」
〈いやあんた配信あんまりやらんやんw〉
「だって、マヤの動画見るのに忙しいし……」
〈草〉
〈ていうかこれコラボ配信なんだし別にいいんじゃないのか?〉
「だから、あとで振り返った時に俺がいたら嫌なの! ちゃんと切り抜き頼むぞおまえら!」
〈切り抜きってそういうのじゃないんだけどなぁ……w〉
〈まあ、別にいいけどよw〉
〈ほんとこの人自由だなおいw〉
そんなこんなで、ちょこちょこ麻耶に指導しながら配信を行っていった。
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