第11話
俺が咆哮をあげたところで、ふと思った。
「ていうか、そのルカ? って人は先週も名前出てたのか?」
〈はい炎上〉
〈なんで忘れてんだよ……本人降臨してたろーが〉
〈こいつじゃなかったら炎上発言だろ〉
〈いや炎上してもお構いなしなんだよ。すでに、何度も炎上してるぞこいつ〉
そうなのだろうか? ネットは全く見ないので知らない。
今チャンネルがどうなっているのかもすべて事務所に任せているしな。
「なるほどね。まあ、俺は麻耶のサインが死ぬほど欲しいんで、あとはどうでもいいや。とりあえず、自慢だ。俺は参加券を手に入れたからな」
〈マジか〉
〈買いまくったのか?〉
〈身内だから優先的にもらってたとか?〉
……そうやって疑われる可能性もあるのか。
「いや、俺は迷宮に潜って買いまくったんだよ。金にもの言わせてな。これがおまえらにはできない芸当よ」
〈俺たちだって親のカード奪えばできるぞ?〉
〈あまり舐めるなよ?〉
と、コメント欄と雑談しながら迷宮の階段を下りていく。
迷宮の一階層に降りると、霧崎さんは顔を青ざめて周囲を見ていた。
「まあ、話もそこそこに、今日は迷宮配信だからな。マネージャーさん曰く、戦っている間はコメントとか見れなくても仕方ない、というわけでこれからは無視していいか?」
〈見れないと無視は意味違うぞ〉
〈迷宮配信楽しみ! ここのランクは?〉
「Aランク迷宮だ。事務所近くにあるから、聖地巡礼したい方はどうぞー。マネージャーさん、出る魔物ってなんですか?」
「それ調べてないのにつれてきたんですか!?」
「いやまあ、どこでも大して変わらないし。そんで、出現する魔物は?」
「……ミノタウロスです」
〈ファーw〉
〈Aランク!? いや何やってんだ!?〉
〈Aランク迷宮の配信とかもっと大人数でやるもんだぞ!?〉
〈いやいやさすがにカメラマンとお兄ちゃん一人じゃ危ないだろ!〉
……コメント欄が大荒れ状態だ。
Aランク迷宮は別に苦戦しないのだが、言葉で説明しても理解してもらうのは難しいだろう。
「まあ、見てもらったほうが早いかね。ちょっと待っててくれ。魔物呼ぶんで」
「……へ? 呼ぶ?」
〈おい、こいつ何するつもりだ?〉
〈いや、たぶんだけど魔力を開放して集めるとかじゃないか?〉
〈は? どゆこと?〉
「おお、コメント欄賢い! 魔物を探して歩くなんて面倒だからな。魔力をこうして開放すれば……勝手に寄ってくるわけだ。皆も参考にな!」
〈参考にしたら普通は死ぬんですがそれは……〉
〈初心者冒険者の人たち! 絶対真似するなよ!〉
そういいながら魔力を放出すると、周囲が揺れる。
同時に、魔物たちの足音が響きこちらへ迫ってくる。
〈おい地響きやべぇぞ!〉
〈なんだよこれ、何が起きてんだよ!〉
「ひっ……!?」
現れたのはミノタウロスの群れだ。数は五十くらいか?
一階層のミノタウロスすべてが集まったという感じだろうか。
霧崎さんは腰を抜かしてしまっていたが、場所は外へと繋がる階段だ。
そこはセーフティエリア。魔物が入ってこない場所だ。
俺は軽く拳を鳴らしてから、霧崎さんに声をかける。
「そんじゃマネージャーさんはその階段からこちらに出ないように。そこからでなければ狙われることはないからな」
俺は笑みを浮かべてから、ミノタウロスの群れへと突っ込んだ。
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