第3話 二回戦:対決、スポーツロボチーム

 「「ありがとうございました!」」


 試合が終わり、双方が全員揃って礼をする。


 金馬達は初の全国大会出場で一勝目を挙げたのだ。


 「覚えてなさいよ金髪蛇男、次は叩きのめしてやるんだから!」

 「真珠さん、お上品にですよ!」

 「真珠ちゃん、駄目だよ! ああ、ごめんなさい!」


 悔しさから金馬に向けて叫ぶ真珠と、彼女を抑える花子と亜麻色の髪の眼鏡美少女の鷲尾薫子わしお・かおるこの二人。


 「蛇男じゃねえ、俺の名は金馬きんまだ! 名前は知らないが元気な奴は大好きだぜ、何時でも山梨に遊びに来い♪」


 真珠達に対して、優しく微笑みサムズアップしてみせる金馬。


 「……まあ、真珠さんに動じないなんて度量のある方ですね」


 薫子が驚く。


 「良い人、いや龍なのかな? あ、私は七草花子ななくさ・はなこって言います!」


  花子も真珠を引き取りに来て、金馬達に自己紹介をする。


 「私は魚崎真珠うおさき・しんじゅ金蛇男きんへびおとこ、絶対に次は勝つんだから~っ!」

 「真珠さん、お行儀が悪いですよ? 私は鷲尾薫子わしお・かおること申します♪ いずれは、私のアルシャインともお手合わせを♪」


 金馬を人の姿でなく、学生服を着た二足歩行の龍として見ている真珠達。


 金馬の人柄と言うか龍柄に触れつつ、両脇から真珠を取り押さえて引きずって帰るワルプルギス魔法女学院の生徒達。


 「何でだろ、人と仲良くなるのは難しいな?」


 ちょっとへこむ金馬。


 「まあ、複雑だがまずは一勝だぜ♪」

 「「いえ~~い♪」」


 気を取り直し、チーム全員でハイタッチする金馬達。


 試合が終ったので素早く撤収する。


 「諸君、見事な戦いだったぞ一回戦突破おめでとう♪」


 後方で観戦していた飯盛先生が、テントに戻って来た金馬達を出迎える。


 「先生もお疲れ様でした」

 「ありがとう、私は門外漢だが雑務は任せてくれ」

 「「ありがとうございます!」」


 チーム是認で飯盛先生に一礼する。


 会場を後にして宿に戻った金馬達は、クラッカーの音に出迎えられた。


 「おめでと~♪ 流石は家のキッズ達ね♪」

 「「おめでと~っ♪」」


 生身での出迎えたのはジンファ。


 部屋の巨大なモニターの画面が複数分割で表示され、皆の家族がネットを通じて祝福していた。


 「オ~♪ パパ、ママ、皆サンキューデ~ス♪」

 「オ~ッホッホ♪ ありがとうございますわお父様、お母様♪」

 「父ちゃん達、ありがとう♪ スーパー明日野の広告入れろ、無理だよ!」

 「え~っと、勝っちゃいました」

 「父上、母上、二回戦は僕も出ますからね♪」


 カナメ達メンバーは、家族とテレビ越しに通話する。


 「祖母ちゃん、連絡ありがとうな♪」

 「当然よ、あなたの大事な友達は私にとっても大事な人よ♪」


 仲間の家族に連絡してれた祖母に礼を言い、ハグする金馬。


 金馬のスマホが鳴り、開くと両親達から祝辞のメッセージが届いていた。


 決勝には応援に行くから勝てと、ジンリーからのメッセージに金馬が微笑む。


 返事を送信しながら呟く金馬。


 「じゃあ、今夜はラム肉よ♪ パイロットも体力が資本よ♪」


 ジンファが叫ぶと、皆が盛り上がる。


 「そう言えば、先生はご家庭は大丈夫なんですの?」


 メープルが思い出したように呟く、先生も奥さんや家族はいたはずだ。


 「ああ、心配するな♪ 妻は呼べば来てくれる」


 飯盛先生が笑顔で答えた。


 「あら、お招きするわ♪ 呼んで頂戴♪」

 「お招き感謝いたします、龍の女王♪ 夫がお世話になっております」

 

 ジンファが言った途端に、黒髪おかっぱ頭で赤い着物の美しい女性が出現した。


 「福子さん、いらっしゃい♪ 固い挨拶は無しで楽しみましょう♪」

 「はい、ご相伴に預からせていただきます♪」


 ジンファに礼を言う福子さん。


 皆でラム肉の料理を食い元気をチャージした。


 「明日の試合、合体禁止? マジですか?」


 食事の中先生から、明日の試合のレギュレーションを聞かされて驚く金馬。


 「ああ、対戦相手の埼玉スポーツ大学付属高校とのサイズ差調整でな」

 「と言う事は、僕のシャルルロアにも出番があるんですね♪」

 「勿論だ、頑張てくれ♪」


 喜ぶシャルルに微笑む先制。


 「では、私のロコモはお休みですの?」

 「いや、ロコモは武装枠でシャルルロアと合体で行ける」


 メープルの質問に先生が答えた。


 「この大会が終わったら、マグナデウスは各機人型変形機能がいるわね?」


 ジンファが今後に備えて呟いた。


 翌日、試合会場に集った選手達。


 対戦相手の選手達は、アメフトのプロテクターを付けている男子学生達。


 小柄に細身に太目にマッチョにヤンキー風と、個性的なパイロット達。


 機体も全機体が銀で統一された、アメフト選手風のロボットが五体。


 金馬達はシャルルロアと合体したロコモ、ファンロン、ウルフ、タートル、フェニックスと動物型が多いと対照的な構成であった。


「普段は即合体だから、新鮮な感じ」

「亀はノロマじゃないで~す♪」

「ウルフも速いよ!」

「行くぜ、コンバット・ゴ―!」

「決めましょう、メープルさん!」

「お任せあれですわ♪」


 合体せずの集団戦、アメフトロボ軍団を迎え撃つマグナデウスチーム。


 「突っ込めば潰せるなんて思うなよ、脳筋野郎っ!」


 金馬の操るファンロンが、龍型の特性を活かして相手機体に絡みつく。


 「くそっ! 離れろ蛇野郎!」


 頭部に五番と記され、釘バットを装備した機体を操るモヒカン頭のヤンキー学生。


 田中ジュリアンと言う本名があるが、彼が金馬達に名乗る事はなかった。


 ジュリアンがコックピット内でレバー操作を必死に行い、機体をもがかせるもエスケープできず。


 「ドラゴンロック、ブレイクだ!」


 金馬のマグナファンロンは、相手の抵抗を物ともせず五番機の手足の関節を外して行動不能に追い込んだ。


 「マッシュさん、ファイア&ムーブで~す!」

 「了解、正面は任せた!」


 ドロシーとマッシュは、タートルが相手の三番機の正面から挑みウルフが後方から奇襲をかけてと連携を取って攻める。


 「く~っ! 僕、こう言うの苦手!」


 両手にシールドを装備した三番機を操るのは丸坊主で太めのパイロット。


 ディフェンス担当の山栗権太やまぐり。ごんたは、パワーはあるがスピードが低いタイプであった。


 彼はタートルとウルフの連携攻撃から抜けられず、二体に粘られてエネルギー切れでダウンした。


 「ちいっ! ヤンキーと坊主がやられたか! あっちは飛び回りやがてっ!」

 「聞こえてるよ。鳥が飛ぶのは当たり前♪」


 カナメのフェニックスが相手取る二番機に乗るのは、長身細身の参謀役。


 目つきの悪さだけなら、金馬にも引けを取らない大門バッツと言う少年。


 彼が操る二番機の武器は、模擬弾入りのマシンガン。


 「鳥なら射ち落としてやらあっ!」


 二番機がフェニックスへと、マシンガンを放つ。


 「トルネードパリーッ!」


 カナメが機体を回転させ、旋風を起こして弾丸の雨を逸らす。


 「畜生、弾切れかっ!」

 「うんじゃ、こっちは止めのフェニックスダイブ!」


 カナメのマグナフェニックスが炎に包まれて突貫、二番機を跳ね飛ばして撃破。


 これで相手の機体で生きているのは一番と四番。


 「シャルル達は一番、残りは全員で四番を叩くぞ!」

 「「ラジャーッ♪」」

 「ちょ! そっちは総攻撃かよ!」


 四番機のパイロットの筋肉質な男子学生は、抵抗空しく撃破された。


 彼の名は佐山玉三郎さやま・たまさぶろう、個性を発揮できずにダウンした。


 最後はシャルルと一番機の対決。


 右腕がマグナロコモと合体した、機関車の右腕を持つ白き騎士シャルルロア。


 「行きますよ、勝負っ!」

 「望む所だっ!」


 相手の一番機のパイロットは、小柄な少年。


 本人も機体もスピードが自慢のアタッカー、小早川夏夫こばやかわ・なつお


 仲間達が倒され、自分一人になった事から闘志を燃やす。


 シャルルロアと一番機が激突する。

 

 「アイアンミラージュッ!」


 夏夫の一番機は素早く動き回り、四方八方から分身の術のように格闘で襲い来る。


 「凄い早さです、けれども負けれません!」

 「ロコモスチームを受けなさい!」

 

 マグナロコモの煙突から蒸気が噴出されて一番機に当たり動きを止める。


 相手が動きを止めた時がチャンス、シャルルロアの瞳が赤く光る。


 「ロコモドリル、お借りします! スパイラルストライクッ!」


 マグナロコモの先頭部分に付いているドリルが回転し突進、相手をアッパーカットで吹き飛ばした。


 「よっしゃ、やったぜシャルルッ♪」

 「お見事で~す♪」

 「うん、分離してても無事に勝てたね」

 「これで二回戦突破か」

 「お~ほっほっほ、大勝利ですわ~♪」

 「やりましたね、皆さん♪」


 金馬達が喜びの声を上げる。


 マグナデウスチームは、個性的なアメフトロボチームを倒し二回戦を突破した。


「あいつら、次は覚えてろよ!」


 ヤンキー田中は、リベンジを誓う。


 「次は、徹底的に情報を抜いて勝つ」


 大門も、リベンジを目指す。


 「いや、僕達の本分のロボアメフトの方を頑張ろうよ!」


 山栗の叫びに佐山と小早川が頷く。


  試合後の礼を終え、解散した両チーム。


 友情はまだ芽生えなかったが、金馬達は彼らから勝利への執着を学んだ。


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