第13話 お茶と見えない笑顔と
「どうぞ小さい車ですけど」
こじんまりとした白い小型の愛車に
紫織さんを乗せる。
「ふふ可愛いわ」
「それは、ありがとうございます」
クスリと笑う紫織さんを横目で見ながら車を発進させる。
(道は大丈夫そうだな)
星夜は、心の中でほっとする。
大雨の後は道には枯木や枯葉などが多く落ちているものだが
雨がひどすぎて押し流したのか
それとも誰か近所の人が掃除したのか
わからないが車が通れるほど綺麗だった。
「紫織さん……ん?
どうしました?」
返事がなくチラリと隣を見ると
紫織さんは、窓の外をぼーと見つめていた。
「ん?茶畑だな〜って思って」
「そっそうですか……もう少し寒くなると
秋の剪定が始まって、
もっと綺麗になるんですけどね」
そう言ってチラリと茶畑を見る。
茶畑は、夏の暑さに負けず生き生きと栄えていた。
まぁそれと同時に雑草も酷いが…
「そうなんだ…もしかしてこの茶畑って」
「自分家の茶畑ですよ
うちは、お茶農家をしてますので」
「へぇ…そうだったんだ
もしかして、ご飯の時に入れてくれたお茶って」
「うちのですよ」
「そうだったの?とても美味しかったわ」
そう言って紫織は、こちらを振り向く
残念な事に顔が髪で隠れている為
どんな感情か分かりにくいが
声から察するに本心からの言葉の様だった。
「ありがとうございます。」
「あっでもちょっと飲んだことがない
お茶だったわ後味が爽やかで」
「そうですかうちは、釜炒り茶ですので」
「釜炒り茶?」
「えぇまぁマイナーよりな製法で
後味の爽やかなのが特徴のお茶です」
「そうなのね、私とても気に入ったわ
家では、毎日お抹茶や玉露を飲むんだけど
…好きなんだけどね
私には、ちょっと味が濃くて」
「へっへぇ〜そうなんですか…」
(毎日、抹茶や玉露を飲むって!?)
紫織の言葉に心の中で驚く
その後話を詳しく聞いてみるが
話に出て来るお茶の名前がどれもが
高級なお店の物や知る人ぞ知る名茶の名前が出てくる。
(こんなにもお茶の事話せる女性珍しいし
もしかして紫織さんってお嬢様?)
「星夜くん?」
「あっいえ、すごい知識だな〜って」
「そっそう?
君にそう言ってもらえたのは、
嬉しいな」
そう言った紫織さんの顔は、
髪で隠れていても不思議と
満面の笑顔だろうなと星夜は感じた。
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