第10話 感触
「ハァ…どうしよう絶対
女性を家に泊めてることを隠さないと」
家族が旅行中に家に女性を連れ込むとか
こんなのがバレた日には、
どんな目で見られるか。
星夜は、椅子に座り頭を抱える。
「おじさん達は、旅行中だから
バレないと思うけど問題は…」
ちょうどタイミングを測ったように
スマホが鳴る。
「うわ…噂をすれば」
星夜は、嫌そうな顔をしながら
電話に出る。
「もしもし」
『あっもしもし〜聞こえてる〜?』
電話の先から元気の良い女性の
声が聞こえる。
「はい聞こえてますよ」
『あれ?なんて?』
あっ電波か…
星夜は、部屋の窓側に移動する。
「もしもし?聞こえる?」
『あっ聞こえた聞こえた
もう…いつもの事だけど電波悪いね〜』
「すいません先輩
特に今の天気だと余計になんですよね」
『あぁ〜なるほどね
そうだそっち大丈夫?』
「大丈夫ですよこっちは、
雨が酷いぐらいで」
『そう?なら今からそっちに行こうかな?』
なっ!?まっ不味い…
「いっいやダメですよ!!」
『えっ何で?…なんか怪しいな…』
星夜は、冷や汗がダラダラと流れる。
「いや…確かに大丈夫って言いましたけど
それは、家で大人しくいるからであって
外を出歩くのは、危ないですって」
『うーん』
先輩は、納得してないようだった。
(くそっ今うちに来られたら不味すぎる)
「そっそれより何か様ですか?」
『むっ…何か様がなければ
電話かちゃダメなの?』
「いや…そんな事は」
先輩が不機嫌になるのがわかる。
(ハァ長くなるぞこれは…)
星夜は、バレない様にため息をついた後
先輩との会話に戻ろうとした時
ドアをノックする音が聞こえる。
トントン
「あの星夜くん?」
「えっ!?しおッ」
ヤバいと思い途中で自分の口を塞ぐ。
『ん?今…女の声が…』
「あっいや!!ハハ気のせいだよ
それじゃちょっと用事があるから
切るね」
『えっちょっと!!』
星夜は、通話を強制的に終わらせて
スマホを伏せる。
「ふぅ紫織さん中入って良いですよ」
「それじゃ失礼します…
わぁ…ここが星夜くんの部屋」
紫織は、キョロキョロと
部屋の中を見渡す。
星夜の部屋は、
ゲーム機や漫画本などが置かれていて
男の子の部屋だな〜と紫織は、感じる。
「紫織さん?」
「ううん、男の子の部屋だなって
私、家族以外で男の子の部屋に入るの
初めてだから」
「そっそうですか…」
「うん、あっそれとごめんなさい
電話中だったんでしょ?」
「いえ大丈夫ですよ
それよりどうしました?」
「あのね…スマホの充電器あるかしら?」
そう言いながら紫織さんのだろう
スマホを見せてくる。
「その機種ならありますよ」
星夜は、充電器を紫織に渡す。
「ありがとう困ってたの」
「そうなんですね良かったです」
「………」
「……ん?どうしました?」
紫織さんが動かず何かを
待ってるかのようにこちらを見る。
「えっううん…何でもない」
何でもないと言う割にはテンションが下がっている。
星夜もそんな態度を取られたら
嫌でも気になって仕方ない。
「紫織さん何か気になることがあるんだったら何でも聞いていいですよ」
「いや…でも」
「紫織さん」
紫織さんは、何か観念したように
ぽつりとしゃべりだす。
「気にならないの?」
「えっと…何が」
「私がなんであんな場所にいたのかとか
荷物はそれだけなのかとか」
確かに今までなんであそこにいたのかなどを一切聞かなかったことに気づく。
「あー確かに聞いていませんでしたね
やっぱり聞いたほうがよかったですか?」
「…星夜くんは気にならない?」
「気になりはしますけど
紫織さんが嫌がるかもしれないし…
もちろん何か事件性があったりしたら
聞いたほうがいいと思いますけど?」
「いや…事件とかでは無いけど」
「そうですかだったら、
紫織さんが話したいと思うまで
俺からは、聞く事はないと思いますよ」
星夜がそう言うと
紫織は、星夜に抱きつく。
「ありがとう、優しいね」
「…無関心なだけです」
星夜は、ぶっきらぼうに返事を返しながら
紫織の感触にドキドキする。
(柔らか!!いい匂い!!うぉ!!)
「ううん君は、本当に優しい人だよ」
そう言って、紫織は体を離す。
星夜は、つい「あっ」と名残惜しそうに
言葉を口に出す。
「ん?」
「…いえ何も」
「そう?…それじゃ私は、戻るね」
「はい」
紫織は、部屋のドアに手を掛けた後
くるりと星夜の方を向き
「私…今何もつけてないから…ね?」
と言った後部屋を出ていった。
つけてない?
言葉の意味がすぐには、
分からなかったが少しした後
紫織が自分の胸をちょくちょく
気にしていた事に気づく。
「もしかして、つけてないって!!」
この後星夜は、紫織の感触を思い出しながら
悶々とするのであった。
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