二章 仮初の三日間

第9話 仮初の人生

「これからどうしますか?」


朝食を食べ終わりひと段落ついたところで

星夜は、紫織にこれからの事を聞く。


「これから?ずっと一緒だよ」


「そっそんな冗談」


「冗談じゃ…ない」


「えっ?」


「冗談じゃない」


「あっはい……じゃなくて」


「ふふ…わかってるわ」


紫織さんがくすくす笑う

どうやら揶揄われていた様だ。


「私としては、こんな状況だし

 あと三日はここに居たいな…ダメ?」

 

こんな状況か…確かに、

星夜は、外の様子を見る。


昨日から降り続ける雨は、

住んでる地域に猛威をふるい

今現在も警報が続いている。


まぁこの状況で放り出すのは、問題外だろう

それでも三日は、長いと思うが。


「まぁ大丈夫…です。

 旅行に行ってる家族も帰ってくるのが

 四日後ですから」


そう紫織さんに言ったが

何処かに気まずそうにしている。

どうやら俺が家族に置いて行かれたと

思ったようだ。


「ん?…ああ!!違いますよ

 俺は、長期旅行は、ほらっ仕事があるから

 できませんし今回は、お留守番で」


「…本当?」


「本当ですって、信じてください」

 

危ない危ない…後少しで

変な勘違いされる所だった。


         ・

         ・

         ・

「まっ…また負けた…」


「ふふふまた勝った。」


星夜は、目の前の惨劇に項垂れる。


星夜と紫織は、雨により家から出かける事も

出来ずどうしようかと話し合い暇つぶしに

家の中で遊んでいた。


「紫織さんやっぱり将棋強いですね」


「そう?ありがとう」


くそ…紫織さんは、

余裕そうな顔をしている。


紫織さんから、将棋やろうって

言い出した時、疑うべきだったんだ。


ここまで手も足も出ないなんて…


「次は、別の物をしませんか?

 ほら人生ゲームとかありますよ?」


「人生ゲーム?私した事が無い」


「そうなんですか?

 それじゃこれにしましょう」


「うん楽しみ」


「うっ」


紫織さんの笑顔が自分に突き刺さる。

でも人生ゲームした事無い人なんているんだな…

        ・

        ・

        ・


「その…お金貸そうか?」


プルプルプル

「だっ大丈夫です。ここで一を出せれば!?」


「…5だね」


星夜は、勢いよく後ろに倒れ込む。


「だっ大丈夫?」


「紫織さん…俺は今、

 世の中の不条理について考えています。」


「ふふ…大袈裟ね」


「何でこんな差ができてしまったのか」


「私は、資産15億で」


「俺は……借金10億…」


最初は、仲良く人生を歩んでいたが

自分の受験失敗から人生が別れ

紫織さんは、エリートへ

自分は、無職へと進んでいった。


「星夜くんそんなに落ち込まないで」


「ちょっ!?」


紫織さんは、こちらに回り込み頭を優しく撫でてくる。


同じ石鹸同じシャンプーを

使っているはずなのに不思議と

紫織さんからは心地よい甘い匂いが漂ってくる。


「星夜くんには、ここから人生巻き返せる

 方法があるよ」


「…何ですかそれ」


星夜は、頭を撫でられ

照れながらぶっきらぼうに返事をする。


「それは…」


両手で俺の顔を包み

紫織さんの方にぐいっ顔を向かされ

見つめ合う形になる。


紫織さんの目は、美しくもあり

妖しくも感じた。


「私と結婚しよ?」


「なっ何を」


星夜は、突然の言葉に動揺する。


何を言い出すんだこの人

俺達は、昨日会ったばっかりだぞ!?


「だってほら…私達独身じゃない」


そう言って人生ゲームの駒を見せてくる。


「えっ…あっそう言う…」


「ふふ…星夜くんは、何だと思ったの?」


「あっいや」


星夜は、自分が勘違いした事に気づき

顔を真っ赤にする。


「…私は、本当に結婚してもいいよ?」


紫織は、ボソッと小声で囁く。


「ばっ!そんな…いや」


「ふふ…ほら起きて」


紫織は、寝っ転がりながら顔を真っ赤にしてボソボソと喋る星夜を優しく起こし

人生ゲームの方に促しす。


「ね?星夜くん

 こうやって二人一緒になって」


紫織は、駒を一つにしてルーレットを回し、


「人生を一歩一歩…歩んでいこう?」


星夜の震える手と手を合わせながら

逃さないようにゆっくりと

人生を進んでいった。








ここまで読んでいただきありがとうございます。

突然ですが二章になります。

リアルが忙しすぎてなかなか更新出来なくてすいません。

ハートや星など大変励みになっております。

ありがとうございます。

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