第7話 口は災い?の元
「えっ…と」
「………」
どっどうしよう
空気が死んでいるのがわかる。
俺は、ただどうすればいいか聞かれたから
反射的に答えただけなんだが…
「……馬鹿にしてるの?」
紫織は、肩を震わせてこちらを睨む
その目には、涙が溢れ出している。
「いっいや馬鹿にはしてませんよ
ただ俺は、紫織さんの事を詳しく
知らないし聞かれてもそのッ
…ごめんなさい」
星夜は、必死に弁解するが
紫織が流す涙に言葉を詰まらせる。
…やってしまった。
星夜は、女性の気持ちがわからないって
空気が読めないって散々言われていたが
それが今になって身にしみる。
「もういい、…私なんて…
君を信じたのがバカだった
君なら君だったら…私を」
「…紫織さん」
俺は、どうやら本当に
許し難い罪を犯してしまった様だ。
「もういや…」
どうしたらいいんだろう…どうしたら…
「…死にたい」
紫織は、ポツリとつぶやく。
「!?…ふざけるな…」
「…えっ?」
「軽々しく死にたいなんて言うな!!」
紫織の言葉により
頭が真っ白になり怒鳴りつける。
「なっ何でそんな事…
貴方に私の苦しみがわかるの?」
「だから俺があんたのこと知る訳ないから
わかる訳ないだろ!!」
「だったら」
「でもな勝手に死なれて残されていった
人間の苦しさは誰よりもわかってる!!」
「うっ…でも、私にはそんな人」
星夜の迫力に言葉を詰まらせる。
「いるに決まってるだろ!!
少なくともここに一人」
星夜は、自分の胸をドンと叩く。
「…私と君は、初対面だよ…」
「ああそうだな…だがそれが何か?
あの雨の中拾って助けたんだ
それぐらいの権利は、俺にもあるはずだ」
「…捨て猫みたいね…」
「捨て猫だって生きたいと足掻きますよ」
「そう…ね、わたしはそれ以下ね」
紫織は、悲しそうに笑う。
「なら捨て猫に負けないように
紫織さんも足掻いてください」
「足掻いた先に何があるの?」
「そんなのわかるわけないでしょ」
「そうだねわからない
そんな未来を君は、生きろと言う
君って…無責任だね」
つまり紫織さんは、こう言いたいわけだ
私の人生を背負う気もないのに無責任だと。
…ふざけた話だ
何でそこまで面倒を見ないといけないんだ。
心の中で面倒くさいと思いながらも
無責任と言う言葉が心に刺さる。
星夜は、元々隠キャの小心者であり
これまで結果は、どうであれ面倒事に
巻き込まれないように行動して来た人間だ。
そんな人間が勇気を出して自ら行動した結果
無責任と言われた。
それに対して怒りと理不尽さを感じ
そこまで言われたら後悔させてやると
決意する。
「わかりました。
俺が貴女の人生の責任取ります。」
「えっ……自分が言ってる事の意味
わかってる?」
「はい!!」
星夜の自信満々に返事をする
その態度に紫織は、困惑する。
「本当に言ってるの?」
「ええちゃんと覚悟を決めましたよ
後は、紫織さん次第です。」
「私次第…」
「はい」
星夜は、困惑し考え込んでる紫織の姿に
心の中でほくそ笑む。
困ってる困ってる…そりゃそうだよな
今日会ったばっかりの見た目もパッとしない
男から責任取ると言われるなんて、
…まぁでもこれは、紫織さんが言い出した事
自業自得…いや口は災いの元の方が合ってるか?
「星夜くん…ごめんね」
「ん?ふっ…気にしなくていいですよ」
やっぱりなと思いつつ
自分がイケメンだったら違う展開だったのかな〜と星夜は、苦笑いを浮かべ外を見る。
窓の外は、土砂降りの雨が降り注いでいた。
雨が酷すぎる…もしかしたら
警報も出ているのかもしれない。
(…早めに紫織さんを市内の方に送った方がいいかもな)
視線を紫織さんの方に戻すと
紫織さんは、姿勢を正し正座して
こちらを見ていた。
「紫織さん?どうしました?」
「星夜くん」
「はい」
「不束者ではありますが
どうぞよろしくお願いします」
そう言って紫織は、頭を下げる。
「へっ?どっどう言う」
予想していなかった言葉を聞いて
星夜は、混乱する。
「これから私の人生、私の全ては、
星夜くんの物……よろしくね星夜くん」
そう言った紫織の目は、妖しく光っていた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます