第1話 

「…はいどうぞ」


「あっ…ありがとうございます」


紫織さんからご飯を受け取る。


星夜の前には、美味しそうな朝ごはんが

並べられていた。


「おっ美味しそうだな〜」


「…そうですか」


「ははは………スー…」


会話が続かず冷たい空気が漂う。


彼女が不機嫌な理由が

自分にあるのは、理解しているが

ここからどうやったら

機嫌を直してくれるのか

星夜には、分からなかった。


…とりあえず謝るか…?


そう考え星夜は、恐る恐る彼女に話しかける。


「あの…雨宮さ「紫織」…へ?」


「昨日私の事そう呼んでって

 お願いしたはずです。」


えっ?そんな記憶は無いはずなんだけど…


「……まぁ忘れるのも仕方ないですね

 私の事も寝たら忘れるぐらいでしたから」


紫織は、星夜を的確にチクチクと言葉で

刺しながら目の前の朝ごはんに手をつけ始める。


「いやっ!それは…寝ぼけていて」


「本当に?」


「うっ」


本当?と問いかけた紫織さんの目を見て

自分は、言葉を詰まらせてしまう。


昨日初めて会った時から感じていたが

紫織さんの何もかも見通すかの様な目に

何か不気味さを感じていた。


「…現実とは思えなかったんですよ」


星夜は、不気味さから逃げる様に

隠していたはずの本心をポツリと呟く。


「えっ?なんて」


「だから現実とは、

 一瞬思わなかったんですよ!!

 だって起きたら紫織さんみたいな

 美人さんがいるんですよ!!」


「私が美人!?」


紫織さんが私が!?信じられない

みたいな目でこちらを見てくるが

俺から言わせるとそれこそ信じられない。


料理の為だろうか綺麗にまとめられている

黒く長い髪は、光沢のある美しい髪で

顔立ちも良くスタイルも良い


そんな紫織が美人じゃないとは、

言わせない。


「ええそうですよ、

 紫織さんが美人じゃないなら

 誰が美人なんですか?」


「そっそれは、いくらでもいるでしょ」


「いません」


「そっそんなハッキリと

 …えっ?本当に……いや

 そんな言葉に騙されません!!」


紫織は、茹蛸の様に顔を真っ赤にしながら

ぶつぶつと何か呟いた後

自分のお皿に乗せてあったおかずを

箸で掴み一つ一つ星夜のお皿に移し始めた。


「えっ紫織さん!?」


「まったく星夜くんて、

 そう言う事を言う男の子だったんですね

 ダメですよ私だから良かったですけど

 他の人は、勘違いしちゃうから」

 

「いやそれは、ないと思いますけど

 それより何やってるんですか?」


「ん?」


紫織が自分のお皿を見る。

お皿には、見事に何も残ってなかった。


「…あの「大丈夫です」」


「私……ダイエット中ですから」


「いや嘘でしょ」


「…本当」


「嘘」


「本当…って!!

 おかずをうつさないでください」


「いやです」


「私の気持ちがいらないとでも?」


「いえ気持ちは、受け取りました

 だから俺からの気持ちも受け取って下さい」


「嫌です」


そこからおかずの壮絶な押し付け合いが始まった。





「はぁはぁ星夜くん…頑固ですね」


「それは、こちらのセリフですよ」


そんな下らない戦いをした二人は、

食事を終える頃には、疲れ果てていた。


「まったく紫織さんがここまで子供っぽいとは思いませんでしたよ」


「それは、こっちのセリフです

 …いや星夜くんは、

 会った時からこんな感じだったですね」


「ちょっとまて、それは話が違う」


そんな軽口を叩きながら

そんなに子供っぽかったかなと

星夜は、紫織と会った昨日の事を思い出していた。











読んで頂きありがとうございます。

よろしければフォローやハートよろしくお願いします。

注(食べ物で遊んではいけません)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る