第8話 能力値の割り振り

「えーと、とにかく連撃使いの特徴は二回攻撃ね。武芸者は物理専門、壁役とかもいけるよ。魔術師は魔法攻撃職だけど、味方への補助とかもできる。癒し手も回復と補助、あと自分で殴りに行ったりもできるね。細かなスキルについては自分で確認してみてくれる? さすがに全部解説はしんどい」


 彼は本をめくって、武芸者、連撃使い、魔術師、癒し手の項目を確認していった。同時にほかのクラスについても、ひと通り読んでおいた。


「クラスチェンジもできるんですね。レベル20が条件ですか」


「正確にはCL――クラスレベル20の状態で、さらにレベルアップすると――かな。読んだんならわかってると思うけど、上級職はどっちかひとつしか取れないよ。武芸者から攻撃特化の破壊者にクラスチェンジしたら、防御特化の守護者にはなれない」


「逆に守護者になったら、破壊者にはなれないと」


 そのとおり、とルーミュはうなずいた。


「連撃使いにしましょう」


「お、上級も見据えたうえでの選択?」


「魔法を使ってみたいと思っただけですよ」


「そういう理由か――って、ごめん。説明し忘れてたけど、実は武芸者――にかぎらず、全部のクラスで魔法攻撃はできるんだ」


「そうなんですか?」


「あー、うん……実はね」


 ルーミュは気まずそうに頬をかいた。


「もちろん武芸者には魔法攻撃を強化するスキルがないから弱くなるんだけど、できることはできるんだ」


 どうする? とルーミュがつぶらな瞳を向けてきた。


「別に連撃使いでいいでしょう」


「いいのかい?」


「迷っていても決まらないですし、二回攻撃は十分魅力的ですよ」


「オーケイ! それじゃ種族値にクラス特典を足して、能力値上昇させてステータスを決定しちゃおうか。はい、まずはアスケンブラの種族値ね」


 ルーミュの目の前に半透明の文字盤のようなものが現れて、そこに文字と数字が書き込まれていく。こう書かれていた。


筋力:4

魔力:3

器用:4

敏捷:3

耐久:3

精神:3


「これがアスケンブラの種族値。それと今さらだけど、これ、あくまでもRLが1のときの能力値ね」


「RLってなんのことです?」


「リリースレベルの略称さ。解放レベルというか……まぁ適当な用語だから気にしなくていいよ。クラスレベルとかスキルレベルとかに合わせて『なんたらレベル』って名称にしたかっただけだから」


 ぺろり、といたずらっ子のようにかわいらしく舌を出してみせる。


「とりあえず人間の場合、CLの合計がRLになると覚えておけばいい。人間以外の種族はクラスを持たないから、RLはそのまんまレベルを意味する。高いほど強いっていう意味での」


「つまり人間の場合、CLのないものはRLも持たない?」


「正確にはRL0だね。RL自体を持たないのは小動物っていうカテゴリになるんだけど――今は関係ないので省略!」


 ルーミュは両手を高々と上げてみせた。


「で、RL0のやつは、種族を問わず能力値がオール1なんだ。そして、この種族値はRLが1のときのものだ。実際は、ここにクラス特典という補正が入る」


 ルーミュは手を下ろすと、まじめな顔で解説した。


「クラス特典というのはCLが0から1になったとき――つまり、そのクラスをはじめて獲得した際に上昇する能力値のことだね。クラスごとに指定の能力値が上がる。連撃使いの場合は筋力、魔力、器用に+1される。だから」


 とルーミュは文字盤の数字を書き換えた。


筋力:5

魔力:4

器用:5

敏捷:3

耐久:3

精神:3


「こうなるわけだ。さらにレベルアップすると能力値の上昇が行える。RL1から20だと四点分――つまり、君も今RL0から1に上がったから、四点持っているわけだ」


 ルーミュは指を四本立てた。


「この四点を使って、任意の能力値を上昇させられる。ただし、一つの能力値に割り振れるのは二点までで、三点以上はダメ」


 彼女は指の数を変えながら説明する。


「つまり、四点なら二つの能力値に二点ずつ割り振るか、三つの能力値に二、一、一と割り振るか、四つの能力値に一点ずつ割り振る――の三択になるね」


「制限内で好きに成長できると」


「そのとおり。ただし、いったん割り振った数字を変更するには経験値を消費しないといけないから要注意だね。アドバイスしておくと、筋力は物理攻撃に、魔力は魔法攻撃に関係するよ。器用は会心力……その名のとおりクリティカルに関係する」


 ちなみに、と彼女は重要情報のようにつけ加えた。


「命中とは無関係。基本的に攻撃は必中だからね。敏捷は行動力、これは戦闘時の行動の順番に影響する。耐久はHPと物理防御力に、精神はMPと魔法防御力に関係する。本当は戦闘以外の技能にも色々と関わってくるんだけど、今はその辺は気にしなくてもいいよ」


「では魔力に二点、器用に二点」


「魔法重視だね。器用のほうは攻撃と防御の両方に関係してくるけど」


 と言いながらルーミュは数字を変化させていく。


筋力:5

魔力:6

器用:7

敏捷:3

耐久:3

精神:3

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