第7話 種族を選んだら次はクラス選択
「……羽を消せばよかったのでは?」
「それだと種族ごとの特徴が消えるじゃん。見た目の個性も重要なんだよ?」
当然だろうと言わんばかりの態度でルーミュは言った。彼は本に目を落とした。
「あー……とにかく、この六種族から選べばいいと」
「そう。一応種族ごとに能力値が違うから、クラスの向き不向きもあったりするんだけれど――」
ルーミュはいったん言葉を切った。
「正直、自分の好きなように選んじゃって平気かなー。どうせクラス特典で能力値に補正が入るし、能力値上昇も初期で四点あるからね。今後の成長も考えれば誤差といっても差し支えないよ」
「そう言われると逆に選びづらいんですが……」
彼のぼやきに、ルーミュは笑みを浮かべた。
「好みで選べばいいんだよ。ほら、獣耳が好きだからフュルギエにするとか、ショタになりたいからディシールとかリーフリーフとかイズーナーシルとかさ――まぁイズーナーシルは小さすぎるかもだけど」
あ、言い忘れてたけど、と彼女は付け足した。
「基本的にどの種族も不老だから。ずっと若い見た目のままでいられるよ。逆に言うとナイスミドルとかにはなれないってことだけどね」
「不老不死なんですか?」
ルーミュは苦笑いで首を横に振った。
「外見が老いないだけ。ルシラドグー大陸の人間――にかぎらず、ルシラドグー大陸の生物は老いがないんだ。成長し終えたらずっと同じ見た目のままで、老人の姿をした人がいないのさ。ただし、寿命はちゃんとあって、人間は三〇〇年くらいだね」
「確か異世界――ルシラドグー大陸でしたか――の一年は、四〇〇日なんですよね?」
「ついでに言うと、一日の長さもちょっとだけ地球より長かったりする」
「二十五時間以上?」
「そこまでは行かないよ。カップラーメン作れる程度には長いってだけ」
「どっちにせよ、地球の三〇〇歳よりもずっと長生きってわけですか」
彼は呆れ混じりに言った。
「すさまじいですね。こっちは一〇〇年生きられる人間すら滅多にいないのに」
「平均寿命を十二万日と考えるなら、地球換算で三二八年以上は生きてる計算だからね」
「種族はアスケンブラにしておきますよ」
「迷いなく決めたね?」
ルーミュは意外そうに目をしばたたかせた。
「背中や頭に羽があったり、猫耳や犬耳が生えていたり、子供の姿だったり……そういうのは戸惑いそうですから」
「オーケー、種族が決まったら次はクラスだ!」
楽しそうにルーミュはぴょんぴょん跳びはねた。
「クラスは全部で十六種類。ただし最初は下級職しか選べない。武芸者、連撃使い、魔術師、癒し手の四つ」
「魔術師は魔法攻撃、癒し手は回復職、武芸者と連撃使いは……」
「武芸者が物理攻撃、連撃使いはどっちもできるけど、最大の特徴は二回攻撃だね」
ルーミュは手を上げた。
「速攻撃ってスキルを使えば、連撃使いは一ターンに二回攻撃できる! これはほかのクラスにはない特色だよ。その分、燃費は悪いし、クリティカルしないとかアシストスキルの効果を受けられないとか、色々デメリットはあるけどね」
「燃費が悪くても二回攻撃は……一ターン?」
「戦闘はターン制。これについては実戦でまた解説入れるから、今は気にしないでいいよ」
「……なんとなく思ってましたが、えらくゲームチックな世界ですね。趣味ですか?」
「わかりやすくていいだろう?」
ルーミュはにやりと笑い、それから肩をすくめた。
「まぁ厳密には制限をかける際、ゲームふうにしたほうが色々とわかりやすかったからなんだけど……ともかく、なかなかいいものになったと自負してるよ。実際、すべてが数字ではっきり見えるってのは意外と利点だよ」
彼女は得意げに、ふふん、と笑った。
「テストの点数とか、スポーツにおけるスコアとか、わかりやすいだろう? 逆にそれらがわからないと、自分がすごいのかすごくないのか、今ひとつわからなくなる」
「確かに自分の向き不向きがすぐにわかるというのは素晴らしいことなのでしょうが」
「だろう? ふふ、もっと褒めてくれてもいいんだよ? さぁ、そんな世界を作った私を思う存分、賛美したまえ!」
のけぞるほどにルーミュは胸を張って、得意げな様子だった。
するとトマーティアが横合いから口をはさんだ。てっきり無言のままでいるものと思っていたから、彼は非常に驚いた。
「ルーミュ、話がそれてる」
「あっと、いけないいけない」
バツが悪そうにルーミュは頭をかいた。
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