復興の一歩


村長と初めて話しをしてから、三日後。

ブラムと、村人の馬車隊が戻ってきた。


馬車に積んであったのは、大量の穀類であった。

復興用の資材を積んだ馬車もあるが、ブラムが食糧を優先させたのだという。



「まずは飯だろ。喰えるもんがあれば、なんとかなりそうな気がするもんだ」



ブラムが言った通り、村には徐々に活気が戻っていった。

やがて来る冬に恐れなくてもいいという想いが、村人の心を軽くさせた。

それは村長も同様であった。

ライラの言葉を信用するようになり、援助を受け入れると言ってくれた。



「感謝する、お嬢さん」


「お祭り以外にかかるお金は、いずれ返してもらいますけどね」


「いつまでに返せばいい?」


「いつでも。十年後でも二十年後でも。そのうちにまた、村へ訪ねに来ますよ」


「ずいぶんな太っ腹だ」


「でも、ほんの少しは利子をもらいますよ」


「分かっている。寛大すぎる心に感謝する」



村長がライラに礼をする。

ライラは村長の手を取り、「気にしないでください」と言い加えた。


その日から、村の復興が始まった。

同時に祭りの準備も再開することとなった。

しかしどちらの作業も、すぐに資材不足となった。



「この村へ来る道中、木こりのおじいさんに会いました。そちらで木材を買うのはどうでしょうか」


「そのじいさんのところなら、村の連中もよく手伝いに行っている。話は付けやすいだろうな」


「あとは……他の村から労働力をお借りできればいいのですが」


「あの嵐で、近隣の村や街もある程度被害を受けただろう。この村ほどではなかったようだがね。だから期待はしないほうが良い。食糧を買えただけで十分だ」


「それならいいですが」


「なあに、冬までは時間がある。十分間に合うさ」



村人が笑顔で言った。

ライラはほっとして笑顔を返す。

しかし和やかになりはじめた雰囲気は、長続きしなかった。


その日の夜。村に衝撃が走った。

祭りに使われる祭具が、嵐によって壊れていたというのだ。



「……本当、なのか」



報せを受けた村長が、声を震わせた。

顔面も蒼白。

今にも気を失いそうである。



「間違いなく……。最初に壊れた祭具を見つけた者が、隠していたようで」


「……そいつを咎めようとは思わん。気持ちは分かるからな」


「祭具は、どうしましょうか」


「……どうにもならんだろう」



村長が落胆した。

周囲の村人たちも、ざわつくことなく嘆いた。


村に代々伝わる祭具。

その祭具は、貴重な素材で作られ、魔法のような効果も付与されていたという。

とすれば大金を積めば素材を買えるのかと、ライラは思った。

しかしそんなに簡単な話ではないと、村長が断言した。

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