新たな使用人たち


「それで? もう一通はなんて内容だ?」



がくりと項垂れるライラに、ブラムが急かすように言った。

ライラは項垂れながら、ガラッドからの手紙に目を通す。


ガラッド村からの手紙は、近況報告であった。

主に村へ預けた子供たちのことが書かれている。

戦争において、魔族に大きな動きがあるときも報せを送ってくれる。



「ガキどもはずいぶんデカくなったんだろうな」


「すっかり村の一員みたい」


「そいつあ、なによりだ」


「ええ」



ライラは頷いて、同封されていたもう一枚を見た。

それはライラ宛ではなかった。

ライラの邸宅に住み込みで働いている夫婦に宛てられた手紙であった。

ライラは手紙の内容を見ることなく、奥の部屋に声をかけた。



「はーい。御用ですかい?」



男が小走りで部屋に入ってくる。

ライラは手紙を男に見せ、手渡した。



「ああ、村からですかい?」


「そうです。中は見てないから、あとでアテンと読んでください」


「ありがとございます、ライラ様」


「もし返事を書くなら、明日までにお願いしますね」


「ええ、もちろん。いつもすみません」



男が頭を下げて退室する。

男の名はグナイといい、主に厨房で仕事をしてくれていた。


グナイとその妻アテンは、ガラッド村出身の者たちであった。

ライラたちがアイゼに着いて一年もしないうちに、ガラッド村からやってきたのだ。

さすがに追い返すわけにもいかないと、ライラはふたりを邸宅で働かせることにした。


ふたりは想像以上に働き者であった。

特にアテンは、ライラの話し相手にぴったりであった。

アテンも魔族で、三百年近く生きていることから話が嚙み合うのである。



「アテンはまだ、買い物でしょうか」



ライラは窓の外を見て言った。

するとグナイが小さく笑う。



「あいつは今日、ライラ様と一緒に食べる菓子も買ってくるって言ってたんでね」


「そうなの?」


「そうですとも。街の中央に良い店ができたとかで。勇んで行きましたよ」


「じゃあきっと今頃、お腹がいっぱいね」


「そんなところで。帰ってくるまで我慢できず全部平らげて、もう一度買いに行ってるかもしれませんよ」



グナイがアテンの真似をして、食べる仕草をする。

ライラは「そうかもね」と小さく笑い、アテンが買ってくるはずの菓子を想像するのだった。

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