第15話「四角関係」💔
「いやあ、
「
俺は雑談しながら仲良くなり、既に彼を友達のように名前で呼んでいた。
聞くと来河の家は父がオーケストラ奏者、母がピアノの先生という音楽一家だとか。来河自身も音楽が好きでプライベートではいつも、ヘッドホンつけているらしい。
DJ風貌の謎については解けたのである。
「ええ、もう少し時間あります。何でも聞いて下さいよ」
「そうだ。浩生のプライベートな話って知らないか?家族とか生い立ちとか」
「……古い学生時代に聞いた話ですけど…家庭環境がかなり複雑みたいでしたね。早くから両親が居なくて、おじいさんに育てられたらしいです」
「両親いないのか…」
両親が居ないというのは辛い。彼はどんな人生を歩んできたのだろう。俺はまだ会ったことの無い鈴木という男に想いを巡らせていた。もちろん人それぞれ違う。ただ、、、生育環境が難しいと、事実、成長過程で乗り越えるための課題が大きくなる、そんな推測はできる。教員時代も複雑な家庭環境の子供たちと関わってきた、その経験から感じることだ。
「思い出したけど…
「…いい奴じゃないか。引き取られた先ではどんな生活をしてたのかな」
「多分ですけど、まあまあ裕福だったんじゃないですかね。奨学金とかお金に困ってるってはなし聞いたことなかったし。野球道具も良いもの揃えてましたし」
「そっか、、、ところで浩生の勤め先までは、知らないよな?」
「場所はわかんないですけど、仕事は、不動産関係って言ってました。キャバクラでも羽振りが良さそうでね。大手なんですかねえ…」
「羽振りが良い。。とりあえずは居場所さえわかればいいからさっきのマンションの場所を教えてくれないか?やはり彼に合わないといけない」
その後、俺たちは、宇野来河と連絡先を交換し、先程、彼が連れて行かれたという浩生の住むマンションの場所も来河に教えてもらう。またさらには、たまたま来河も知り得た長谷川杏の職場までも聞き出すことが出来たのである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
来河と別れると、美幸が甘い物が食べたいと言うので、僕らは同じモール内のエクセシオールカフェに入り、壁に面したカウンターに並んで座った。
美幸がニューヨークチーズケーキを美味しそうに食べている横で、俺はポールペンを手に、いま知り得る舞花周辺の人間関係図を紙に書いて整理してみる。
今回浩生に長谷川杏という彼女が居ることがわかる。そして舞花にも神谷文哉という同棲相手がいる。
つまり複雑な四角関係になるのだ。
舞花を、殺す動機があるのは誰なのか?問題は「有力な動機」なのだ。俺は、仮説を思い巡らせてみる。
「美幸さ、ややこしいから図に書いてみたんだよ。パク付きながらで良いから、この四角関係について、ちょっと一緒に考えてみてくれないか?
まず一つ目ね。仮に、舞花が、浩生が好きになったとして、長く付き合っている彼女が居る、って知った時どういった反応になるとおもう?」
「(パクパク)自分も彼氏がいるから、お互い様には違いないよね。お互いがホントに好きなら、それぞれが元の相手と別れて、気持ちよく付き合いたいって言うかなあ。もしくは、単にお互い浮気を楽しむとか。それはやだね〜」
「そしたら話が終わるだろ?もつれそうになるくだりを考えて欲しいのさ」
「そしたら…やっぱり、私も別れるから、杏さんと別れて欲しいって言った、、とか?あと恋愛にのめり込むような女性なら、杏さんのところに彼と別れてください、とかって押しかけたりするかも。きゃ〜、なんかドロドロだね〜」
「そうだよ。男女トラブルってドロドロ怖いんだ。でもさ、浩生の本命が杏だったなら、舞花が邪魔になるだろ?俺は浮気だったのに困るみたいな。舞花が杏のとこに押しかける前に口論になり揉める。結果、勢い余って殺してしまった……とか」
「有り得るね。…でも殺さなくても良くない?殺すまでする動機としては弱いような」
「だよなあ。俺もそんな気がする。じゃ、逆に長谷川杏が、浩生に新しい彼女が出来たと知った場合はどうだろ?」
「杏さんって人を知らないんだけど、奪われた恨みから、舞花ちゃんを殺す可能性はあるかな。そっちの方がわかり易いね」
「だよな。そうなると杏にも動機がある。そして神谷文哉だって舞花が浮気したと知れば黙ってないよ。動機になる」
俺は、ボールペンを置くと、フーッと溜め息をつく。一口飲んでから手を付けておらず覚めたカフェ・オレをごくりと口にした。
今回、「長谷川杏」という調査対象がまた広がってしまう。
今後、舞花の交際相手「神谷文哉」、舞花の両親、そして「鈴木浩生」と俺は、さらに調査しなければならない。これらの人々に頭を巡らせていた。
中々進捗しない調査への焦りを感じぐったりとする。思っていた通り、先は長く地道なのだ。
「でもさあ〜二股とかってホント嫌だよね〜」
「人間って云うのは理屈通りにいかないし、わがままなものさ。でも、わかってるとは、思うけど、俺は美幸だけしか見てないよ」
俺は、ボソリと呟く。
「…って当然でしょ!パシーン」
「痛っ」
美幸が至近距離から、俺の右肩から腕の辺りを思いっきりピンタした。
「そ、そう、当然だよ…。乱暴だなあ」
それでも、俺は腕を横に伸ばし美幸の左手をたぐり寄せると、ぎゅっと手のひらを握り彼女を見つめて言う。
「でもね、、今日は、美幸のお陰で、宇野来河から話が聞けたんだ。助かったよ。ありがとう」
「でしょう〜?どういたしまして〜」
美幸は少し照れながら目を
優しい探偵RE
2024.1.2掲載
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