第13話「明応大学」🧑🎓
三人で過ごした穏やかな日曜日の翌日、僕等は早速、丸ノ内線・御茶の水駅から直ぐの東京六大学に属する名門、
朝方に雨雲に覆われていた空は、駅に到着した11時頃には晴れ間が広がっていた。僕等となったのは、美幸も同行していたからだ。
美幸は平日休みだった。俺は一人で大丈夫だから、たまの休みくらいは休むよう説得したのだが、美幸が行きたいと言って聞かなかったのだ。仕方なく連れて行く。しかし、結果的にそれは功を奏する。
入口には警備員が立っていて、一般人が入って良いのかは微妙である。
ただ僕等もそこは事前に考えていた。営業的サラリーマンに
しかしだ。いざ若い学生で溢れる雰囲気のビル内に侵入すると、僕らはやはり落ち着かない。アウェイ感が激しい。さらにエスカレータに乗って四階の事務室ドアの前まで来ると、俺はドアを開けるのを
「やっぱ…。何となく美幸が行く方が男性よりも警戒心持たれないし、上手く行きそうじゃないか?まず美幸一人で行ってみてくれる?」
「そう?じゃあ…私に任せて!行ってくるよ!」
美幸は、中々にして大胆不敵なのだ。美幸はバックからメモ用紙を取り出すと、ポールペンで何やら文字をさらさら書いていた。そして薄茶色のウールコート脱いで俺に手渡すと、ドアを開け室内に入って行く。
『ガチャリ』
「すみませ〜ん。いつもお世話になっております。私、朝比奈と申しまして、本日、宇野様と11時にお約束をさせて頂いております」
美幸は丁寧に一礼しつつ、堂々とデマカセを言った。
「宇野ですね。少々お待ちください」
窓口に居た美幸と同い年位の女性が静かに対応すると、奥に居る体格のいい男性に声をかけている。
「はいはい。お待たしました。宇野です。えっと…失礼ですが、どちらの〜?朝比奈様でしたかね?」
ニコニコしながら出てきた宇野は、ふくよかな体型だが、目がパッチリとしていてどこか愛嬌ある雰囲気の男性だ。パーマ掛かった髪は、整髪料によるツヤがあるものの、何故かまとまらずボサボサしていて、オシャレなのかズボラなのかどっちつかずのヘアスタイルに見えた。
想像していたDJとはちょっと違っていて、美幸は心の中でやや首をかしげつつ、あらかじめ書いておいたメモ見せる。
《私は探偵です。お友達のスズキヒロオさんのお話を伺えませんか?》
そして小声でこう付け加えたのだ。
「ランチでも、食べながら、どう、です、か?」
そしてにっこりとする。美幸の魔性の微笑みで、とどめを刺したのである。
「はあ。なんだアポ無しじゃないですか?強引だなあ。ま、まあいいですけど…。ただ、大した事、僕は知りませんよ」
「何時が、ご都合宜しいですか?」
「じゃ、ちょっと遅くなりますが、、、13時半にこのビルの入口前にいて下さい」
「適当なお店見ときますね。では後ほど〜」
美幸は終始コソコソした口調で話し切ると、俺が待っていた事務室のドア前に、足取り軽く舞い戻る。
「でで、どうだった?」
「オッケーだよ!」
美幸は、満面の笑みで、親指と人差し指でオッケーサインをつくって見せたのである。
優しい探偵RE
2023.12.30
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