第130話 現代人は大陸を統一する

エワル国がフェルミン共和国も解体し、大陸を席巻してしばらくした頃。無事にアマゾネス族やエルフ族との講和も行われた。具体的にはマウリス教国の聖騎士軍と傭兵団シュヴァリエと株式会社スターリンが大軍を率いて各蛮族の村々を襲い、徹底的に破壊、強奪をしつくして終戦した。


まあ向こうもすぐに土地の50%を魔物達の住む場所にするというのは受け入れ辛かったみたいだし衝突は仕方ないけどスターリンが大砲並べてアマゾネス族に砲弾の山をぶち込んでいたのは積年の恨みを感じる。今までスターリンはマウリス教国との戦争で必死だったからアマゾネス族相手には無抵抗だったしね……。


エルフ族とは比較的早期に講和が出来てエワル国の仲間入りを果たしたのは、例の第三公女がエワル国を宣伝して回ったからだろうな。抵抗したらアマゾネス族と同じく滅亡直前まで行くと実感していただろうし説得は早かった。


異世界ギルドストーリーの種族であるダークエルフはアマゾネス族の更に南、寒さで森林限界を迎えているような地域に住んでおり、通りで見つからなかったはずである。なお無事武力で併合した。


無政府状態について、問題は多々あるものの上手く回っている感じはしている。ただ、軍事技術については軍隊を使わないと利益をあげられないということで、株式会社スターリンは西にある大陸や東にある大陸に遠征をしては、国家からの解放作業をしている模様。技術的優位性はこちら側にあったようで、別大陸はまだ銃が無かった。


ヒトラーさんも頭無政府主義に染まったお蔭で国の運営、というよりかは会社の運営に注力している。まあ簡易的な共通のルールがあって、それが守られる環境であれば最低限国としては何とかなるだろう。


人口の集中も問題になるかと思ったが、まだ未開拓な土地は多いし新大陸という市場がある以上、この国が破綻を迎えるのは当分先だろう。……宇宙にいる別種族の存在が移転者達の中で共通の認識になってしまったせいで、宇宙開拓も早々に行われるかもしれない。


魔物達側は魔物達側でコミュニティを形成し、人間社会との取引も始まった。……どこの魔物も自分の配下の配下の配下の配下ぐらいには収まっているので自分が魔物社会ではトップです。なお実力はビッグスネーク辺りにも負ける模様。本当、よく裏切られないなこれ。


超が付く資本主義社会にもなったのは、相続税やその他の税もないからか。でもそういうのがあっても金持ちの子は金持ちだし、どうしようもない格差を是正しようと思ったら全員が不幸にならないと平等にならないから仕方ない。


数年が過ぎ、ダンジョンの5000階を突破した頃。魔王が復活したけどちょうどその頃に旧スターリンの首都にあったダンジョンを攻略したササラさんが魔王とその部下達を倒した。魔王軍と戦う前線で、なんかその場で魔王から支配権を奪っては同士討ちさせていたから、ササラさんは周囲から無事に魔王と呼ばれるようになったとさ。


……世界に仇なすとか言われてた気がするけど一応味方(敵から寝返らせた)魔物を延々と無謀な突撃させていた上に時々暴走させていたからこちら側の被害は大きかったみたい。それでも魔王倒したのはすげえよ。


ちなみにこの世界の魔王は結局、大量に魔物を召喚していたから本来の世界線なら滅茶苦茶強敵なんだろうけど自分の魔物達の方が強いから人間の住むエリア以外だと自分の魔物達のおやつにしかならなかった。


最終的に、ダンジョンの1万階に辿り着くまでは10年かかった。正直後半は作業感が強かったけど、どこまでも強くなれるのはステータスが見れなくても楽しかった。なお1万階には100階の時と同じように光の球があり、案の定女神が居たけど願いは叶えて貰えなかった。


「……ここまで来るとは暇人ですか?」

「まあネットもあと十数年は出来ないだろうしそれまでは暇人だな」

「一応国家の代表ですよね?……それだけの綺麗所を揃えて、色に溺れないとは禁欲ご苦労様です」


女神は相変わらず魔物達には見えないようで、会話は独り言になる模様。その後、念話でこっそりと「彼女達の番いになれるのは貴方しかいませんよ?」的なことを教えられたけど知ってる。だけど『ダンジョンをクリアするまでは我慢する』のを口実にダンジョン攻略をしている最中、本当に自分が幸せになっても大丈夫なのか考察していた。


で、考え抜いた結果としては「魔物娘達は人間の男以外と繁殖出来ない以上、神に等しい存在になっている自分の魔物達と吊り合いが取れるのは不老の自分しかいない」というもの。


……その後は無事に結婚式を挙げたが、既に魔物娘と人間の結婚は一般的になっており、人間と魔物の交流が深くなっていることを実感する。生まれる子供は男なら人間、女の子なら魔物です。


ただ逆に雄の魔物と人間の女が結婚する場合はハーフみたいなのが出来るんだよな。要するにドラゴニュートはドラゴンと人間の女の子が結婚して出来た子供というわけで……。魔王ササラがドラゴンに乗っているそうだからその内ドラゴニュートを産むかもしれない。


思えば、10年以上もよく我慢出来たものだ。ほとんど後ろで眺めていただけだけど、ダンジョンに潜り続け、攻略だけを考えて来た自分は、たぶん自分が幸せになるのを許すきっかけが欲しかったんだと思う。何の贖罪のために自分を許せなかったのかは、もう忘れた。人道からは完全に外れていたし、そのどれかだとは思うけど。ただまあ、もう良いだろう。


国は政府が無くても勝手に発展を続け、人手が欲しい大企業は自然と社会福祉にも力を入れる。全て放置していても、惚けていても、無限に生きていけるだけの富を蓄えた。臆病でも流石に10年もあれば、一線を超える覚悟ぐらい出来る。


初夜は3日間続いた。

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