第129話 現代人は魔王を仕舞う

魔王を捕らえたけど面倒なので元の状態に戻すことを決定し、とりあえず今だに暴れる魔王の魂を沈めるため、アメシストにスライムボールの中をきゅっと締め付けて貰う。それだけで魔王の魂というか、黒い靄が静まったのでたぶん気絶した。


「これどのぐらいのレベルなら乗っ取られるか分かる?」

「そうですね……強い意思のある人間なら乗っ取られないかと。あとアリエルの街のダンジョンの100階を単騎で突破出来る魔物であれば、まず乗っ取られることはないでしょう」


マトンが魔王の乗っ取り能力を確認するけど結構乗っ取れる範囲は大きいな。ただこの状態だともう何も怖くない。……結構がっくり来たけど、自分は思っていた以上にこの魔王に対して期待をしていたみたいだ。もうちょっと歯応えのある敵だったらちゃんと戦闘出来た可能性はある。


一旦は真っ二つにした黒い球の中に入れて、ある程度蓋をしたところで魔王の魂を解放。直後にアメシストのスライム部分が黒い球から出て、黒い球自体は封をされる。悪い魔王はいつでも倒せるような存在っぽいし、このまま再封印して仕舞っておこう。


「よし、帰ってダンジョンの攻略の続きをしていくか。そろそろ1000階だしな」

「1000階にまた女神様とか居たら次は何願うの?」

「いや、また願い叶うとは限らないし、叶わない可能性の方が大きいだろ……。むしろ女神との戦闘とかの方が発生しそうだ」


……予言のことを考えるとササラさんが魔王と呼ばれるような悪行をする可能性もあるんだけど、どう考えても戦力足りてないし自分の方が悪行重ねている自信あるわ。


帰りはスターリンの方に寄るけど、無事にエワル国の傘下に入っていた。税が無税のになるのを受け入れる代わりに、スターリンは巨大な農場や武器工場を持つ企業に変化して活動を続けている。……国の代表よりも、武力と人口を抱えた巨大企業の社長の方が色々と動きやすそうだな。弱者切り捨てやすいし。


エワル国の飛び地ということになるんだけど、そう言えば国の傘下に入るからって何か献上したりあれこれする必要はないのか。あ、いや森林や山の地域を魔物達に与える必要はあるか。でもスターリンって国の中はスカスカだったし、それなら形式だけでも入る方がお得感はある。


「法がないと言われたが、魔物への献上品になるルールはあるんだな……」

「最低限の規律がなかったちょっと前のエワル国の惨状を聞きたい?」

「いや、大体想像出来るから良い。……大方、泥棒が大量発生したんだろ?」

「残念。暗殺や強盗殺人、飢餓による食人や四肢切断からのダルマ化奴隷がまかり通る無法地帯が正解です」


スターリンにいるレーニンさんがキュー通話をかけて来たけどルール無用の、本当の無法地帯だったころの話をしたらドン引きしていた。いやまあ話している自分ですら『地獄だなあ』と思いながら眺めていたし、普通の人は聞くだけでショックを受けるエピソードが結構ある。


特に最初期の頃、外部の人を奴隷化出来ていた頃は腕や足を斬り落として生きたオ〇ホにしているのも見かけたし人の業は深い。というかまともに性器を使うのはまだマシなレベルだったので、規律が0どころかマイナス振り切れた地域は地獄だった。


『大変なのじゃ!マウリス教国が国家の解体を宣言してエワル国の傘下に入ると言って来たのじゃ!』

「……どこのキュー?」

『マウリス教国の聖都にいるキューなのじゃ』

「ちょっと聖都まで向かうわ」


ラスボス感漂わせていたマウリス教国も、国家の解体を宣言。この流れだと、恐らくこの後でフェルミン共和国も国家の解体を宣言するだろう。……無政府主義が大陸全土を席巻したってマジ?福祉も何もない世界がここに誕生したぞ。


マウリス教国の国家解体について詳しく話をキューに聞くと、どうやらディードリッヒさんがシュヴァリエを降した辺りでマウリス教国に国家の解体をしろと書簡で伝えたらしい。エワル国は勢力が拡大して、マウリス教国が間違いなく衝突する相手だから、喧嘩を売りに行った感じかな。


それに激怒した教皇は、エワル国へ宣戦布告を行い、一番士気の高かった第二聖女の軍を再編成して北部前線に並べたが、そこにやって来たのが空飛ぶ城だったわけだ。たぶん、敵軍視点では絶望がやって来たって感じだったと思う。


第二聖女の軍は必死に戦うも攻撃は全く通じず、空飛ぶ城からの攻撃によって誰一人殺されることなく地に伏し、空飛ぶ城を眺めるしか出来なかったマウリス教国は力の差を痛感し降伏。国家の解体を受け入れるという流れに。結果的に全部自分のせいかよ。


……勝手に宣戦布告して、勝手に降伏したんだからエワル国側も結構混乱していたけどたぶん普通に受け入れるな。もうこの大陸で残っている勢力はフェルミン共和国と南の蛮族達だけだし、大陸統一の日は近そうだ。


※あとがき

次話の最終話と次々話のエピローグでこの小説は完結します。

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