第127話 現代人はえげつない事を思いつく

南へと飛び続けるうちに、次第に寒くなって来たんだけど結界の層が増えたと思ったら寒気も無くなった。うちのパーティーの誰かがやったんだろうけど心当たりが多すぎて誰がやったのかも分からない。


「今室温操作してる人誰?」

「儂が冷気の遮断はしたが温めてはおらぬのじゃ」

「部屋を温めてるのは私ですね。お兄さんが寒そうにしてるので気温を上げました」

「ローの火属性魔法ってそんな器用なこと出来たっけ……?まあありがとう。ちょっと寒かったのは確かだし」


と思っていたらローとキューの合わせ技だった。室温や湿度の調整まで出来るのはもう魔法が便利過ぎるし部屋の温度調整程度だと人間でも出来る人は出来るそうなのでそれほど負担ではないらしい。あとこの子達に寒い暑いはないとか。それでよくちゃんと室温を調整出来るな。


エルフ族の村々を飛び越し、更に南へと行くとやがて雪が降るようになり、辺り一面は真っ白になるけど魔王の城っぽいのは見当たらない。シュヴァリエと花騎士では魔王の城がマップに表示されているらしいんだけど、異世界ギルドストーリーの文章では洞窟に封印って書いてあったそうだから……この中から洞窟を探さないといけないってマジ?


雪に覆われると大地は、上空から見るとただの白い平面なんだよな。惑星的には南極点に近づいて行ってるっぽい。ということはこのまま南へ直進していると雪の大陸から氷の大陸になるんじゃないかこれ。


……別にシュヴァリエと花騎士だけじゃないけど、雪と氷に覆われた大地にポツンと建っている魔王城とか辿り着くだけで命懸けだよね。城の中でぬくぬくしながら近づいているけど、本来滅茶苦茶苦労してここまで辿り着くんじゃないかな。


そしてこの近辺、魔物が結構強い。具体的に言うとワイバーンクラスがゴロゴロ出て来る。自分達にとってはもう雑魚扱い出来るクラスだけど人類国家だと脅威。あ、なんか氷で出来ているドラゴンっぽいのが飛んでくる。かなり格好良い。


「新しいお肉ー!」

「……ルーが飛び出して行ったんだけどさ、よく考えたら照魔境で心臓引っこ抜けない?」

「それはえげつなさ過ぎて思いつかなかったのお。

……出来てしまったのじゃ。ドラゴンの心臓は相変わらず大きいのじゃ」

「まだ鼓動してるけど窓の外のドラゴンは滅茶苦茶苦しみだしたな……」


氷の鱗に覆われているアイスドラゴンは、この城目掛けて飛んで来ていたけど心臓をキューに引っこ抜かれた瞬間に墜落してあっという間にルーに解体されていた。そしてその心臓をローに炙って貰って一切れ食べるけど普通のドラゴンと大差はない。


「ドラゴン持って来たよー」

「よしじゃあ非番状態のスライム達も呼んで食うか。……氷の鱗じゃなくて、氷のように見える鱗だなこりゃ。冷たいけど」

「外はちょっと寒かったからそれでじゃない?」

「……まあ外は氷点下だろうし、むしろルーがちょっと寒いで収まっているのが怖いわ」


ルーがドラゴンの本体を持って来たけど血抜きまで終えている辺りは流石である。ちなみに水属性魔法を極めると血流を操れるそうなので血抜きはすぐに終わるそうだ。生きた人間相手でもそれをやれそうなので凄く怖い魔法技術である。料理の際は超便利だけど。


かなりの巨体なので城の中にいるスライム達を呼んで食べようと言った瞬間、城のあちこちから現れるスライム達。中には各属性のスライムガールもいるし、アメーバスライムからの進化系であるスワロースライムとかもいるね。過剰戦力。


そして全員肉好きなのであの巨体なドラゴンがほぼ一食で消費されてしまった。……まあスライムって身体の中に食糧を蓄えられるから、一回の食事で数日間は保つとはいえ、やっぱりみんな食べるなあ。


「……ちょっとキューはあそこを飛んでいるワイバーン、片方は心臓引っこ抜いて、もう片方は本体引っ張って来れない?」

「分かったのじゃ」


……出来ると分かってしまったので、キューに食料調達を任せるとものの数秒でのたうち回る巨体なドラゴンやワイバーンの肉が採れるようになってしまった。平和に暮らしてたらある日唐突に心臓を引っこ抜かれて身体の肉はスライム達に食べられるとか想像もしたくないんだけど。


まあ格上相手でも通じそうな感じがするから、即死攻撃(物理)って感じで戦闘時の最終手段としてはかなり優秀だとは思う。……効果範囲は照魔境の効果範囲、ということは大陸全土に及ぶので色々とえげつない。


そんなこんなで旅の途中はドラゴンやらワイバーンやらを食しながら、空飛ぶ城で飛び続けると、少しづつ雪景色が少なくなってきたんだけどたぶん南極点通り過ぎて反対側へ行ってるな。というかここで陸から海になるか。やっぱり地球とは全く違う惑星だな。


……見える範囲は洞窟がないか粗方確認したけど、当然見える範囲には限界があるし、全部を確認出来たわけじゃない。一度ここでリターンして、今度はキューの照魔境や、飛べるプチフェニックス達を使った本格的な捜索をするかあ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る