第126話 現代人は空飛ぶ城に憧れる

浮遊城の建設開始からおよそ1年。無事に空飛ぶ城が完成したけど現場監督者兼現場作業員のキューが滅茶苦茶頑張っていた。あと大工だけだと足りない労働力はスライムやスネーク達が手伝っていたし、結構人と魔物の交流もあった模様。


……死にそうになった労災が3件、重大な怪我を負った労災が5件起きたけどまあ全員瞬時に天使の涙で全快したからヨシ。カラビナを作ってもそれをちゃんと着ける人が少なかったせいで無駄にトラブルは多かった気がする。


城の外観は、旧リトネコ王国の王都にある城の外観と似ているけどキューが参考にした城がアレだから仕方ない。地球の建造物で例えるなら……名前出て来ないけど何とか聖堂が近い気がする。城っぽい聖堂。


これが飛ぶんだからまあ色々と凄い。前に一回テストはしているけど、その時より全体の重量が重くなっているから下の地盤が崩れないかはちょっと不安。まあでも頑丈に作ったそうだし、下の地盤の層が極太だから大丈夫だろ。


さっそく魔物達を率いて城の中に入るけど中は至る所に吹き抜けがあって、少しでも重量を減らしながら見栄えを良くしようとしたのが伝わって来る。……うん、玉座の間が広すぎて何かスカスカに見えるなあ。


でもこの大きさなら巨体の魔物も城の中に入れるか。入り口も馬鹿でかいし色々と工夫した感じ。個室もあるけどそれほど多くはない、かな。そして城主のニゴナが号令をかけると、城が浮く。


「……中にいると振動もないけど、操作に慣れた?」

「あの後で何回か練習をしましたし、風魔法で風が当たらないようにしています。操作も慣れましたね」

「おー、この大きな城が浮いてる!」


ルーが上の方にある高い窓から外を見ているけど、空飛ぶ城の中で飛んでいるというのは不思議な感覚のようで結構はしゃいでいる。個人的にはこれで戦争とか高見の見物をしたかったのに、全てが終わった後だから見るとしたらマウリス教国との戦争ぐらいになりそうだ。


「飛べる身ではありますが、住居が飛ぶのはまた違った感覚を味わえますね」

「おかえり。これまではハルには負担をかけていたけどこれからは無くなりそうだよ。今まで色々とありがとうね」


しばらく空中でホバリングをしている内に、地面との接地面をハルが風属性魔法で払い落して帰って来た。別に風属性魔法を使えるスライム達でもその手の作業は出来るんだけど、まあハルの方が作業は早いわな。


城が移動を開始すると、結構な速度で飛んでいるけど大きな結界を張っているような感じで窓から顔を出しても風は来ない。アリエルの街の上は飛ぶなと言われたし、エワル国の村々で万が一は起こしたくないから、街並みを眼下に納めるためにマウリス教国まで飛んで行くか。


「……魔法の攻撃が飛んできていますね」

「……攻撃して来た人に関しては、スライム達に反撃の許可出すよ」


マウリス教国の北の都市へ行くと、例の爆乳聖女が軍を率いて攻撃してくるけど結界を貫通出来ない程度の攻撃しか飛んで来ない。一方でニゴナに反撃の許可を出すと、こちらの攻撃は相手に届くから、一方的な蹂躙が始まった。こういう時でも『人を殺すな』命令は生きているから相手はギリギリ死んでない。たまに腕が吹っ飛んだり、足がもげていたりするけど殺してはない。


あまりに一方的な蹂躙劇に、痛む心はそろそろ擦り切れてる。というかせっかく完成した空飛ぶ城をお披露目しに来たら、軍隊から攻撃されるとか扱いが酷くないか?一応教皇には事情を伝えて空飛ぶ城用の発着場というか土地を確保しているのに例の爆乳聖女が攻撃してくるのは最低限の連絡すら出来てねえ。いやまあアポなしで来た自分も悪いけど。


そうこうしている内に、粗方の敵兵が地に伏して軍からの攻撃は止まったので反撃は止めて北の都市を通過する。街並みは上から見ると色々と面白いけど……正直に言うと、飛行機に乗ってる時とそれほど光景は変わらないな。というか前回も荷台で飛んでたし見える光景自体はさほど変わらない。


「一旦マウリス教国で降りますか?」

「いや、このまま南下して魔王が封印されているとか言われてる洞窟までは行くよ。たぶんこの速度なら3日もあれば着くんじゃないかな。

……一応確認なんだけど、基本的にはずっと飛んでいられるんだよね?」

「スライム達が交互に魔力を供給しているので1ヵ月でも1年でも問題はないですね」


それなりの速度も出るし、国は放置で良いし、とりあえずシュヴァリエと花騎士のストーリー部分は終わらせるために魔王とやらを拝みに行く。あっちの態度次第というか、行動次第では倒すけど基本的には魔王も放置かな。この世界の人だけで倒せるでしょたぶん。


……いやまあ魔王がえげつないほど強かった場合はそこで全滅するんだけど今ここにいる面子で負けるならもうこの世界はどうしようもない。空飛ぶ城の中で寝泊まりをし、マウリス教国の聖都上空を通過。上から見るとその規模がよく分かるけど、発展して人が増えたアリエルの街の、更に数倍の面積はあるから国力の差がよく分かる。


ただ人口で言うならもう追い付いているレベルだろうし、アリエルの街もその内規模は大きくなるはず。ちょっとスターリンに寄ろうかなとも思ったけど、まずは魔王優先で良いや。

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