第105話 現代人は観戦したい

リャン帝国とシュヴァリエの間で緊張感が高まる中、聖都やスターリンに置いているキュー達からマウリス教国とスターリンの戦争について、スターリン側が優勢であることを伝えられる。


どうやら個人の武力で無双している第三聖女の存在は大きいらしいけど、それでも全体としてはスターリン側が優勢ってことだね。まあ大砲や銃を持ち出しているのに負ける方が難しいと思うけど。


そしてマウリス教国は、同じマウリス教である隣国に援軍を依頼したそうだ。……南はエルフ族で敵対国だし、援軍を依頼した先は恐らくマウリス教国の西にある国だな。


この乱世で援軍対応なんてするわけないだろと思っていたら、普通にマウリス教国の西にある国は援軍を了承したようなので銃の的になる肉壁が増える。正直戦線がどうなっているか非常に気になるのでキューに依頼して照魔境で観戦しようか。どこでも見れる鏡は非常に便利だ。度重なる進化で大陸中を大体カバーするようになったし。


「マウリス教国の西にあるフェルミン共和国は10万人の軍を援軍に出すようなのじゃ」

「……マウリス教国の各聖女の軍って2万人規模が4つで8万人だろ?スターリン視点だと敵対する軍量がいきなり倍になるとかクソゲー過ぎる」

「レーニンからはキュー殿も戦って欲しいとずっと口説かれてるのじゃ」

「それは全力で断ってくれ。どこの勢力にも肩入れする気はないぞ」


レーニンさんが分身体のキューに戦ってくれとお願いする辺りはだいぶ切羽詰まってそうだな。ついでにフェルミン共和国の様子も覗いてみると、どうやら正規の軍とは別に、同じマウリス教徒を守るためにと民衆が集まって軍を形成している。これもまた10万人規模とかフェルミン共和国も結構国力あるな。


あっ、でも一部の過激派集団は非マウリス教の人を殺しまわる暴徒になっている。宗教ってやっぱ怖いわ。その過激派集団は集結を待たずにマウリス教国へと乗り込み、聖都手前で止められる。


いきなり数千人規模の軍が聖都に入らせろと言っても、流石に対応できないし待ってくれは自然な対応。だけどそれが過激派集団の怒りを買ったのか、過激派集団が聖都に攻撃を開始。そしてマウリス教徒の聖都でフェルミン共和国の民衆軍(過激派8000人)と聖都に配置されている教皇軍(精鋭1万人)で衝突が発生し、過激派集団は2時間で全滅した。ええ……。


「……何をやっているんでしょうか?人間は愚かだとエルフの方々が言うのも納得ですよ」

「同じ人類から見てもこれは愚行でしかないわ。うわ、民衆軍の本隊も来てまた戦闘してる」


ハーフエルフの召使いが人類は愚かとか言って来たけどマジで愚か。この過激派集団は同胞を救いに来たわけだから、当然宿とかご飯とかはマウリス教国が用意してくれるものだと考えていたようで、でも聖都にその準備がまだ出来ていなかったから起きた衝突だ。


というかたぶんマウリス教国の教皇には10万人の正規軍、とだけしか伝えられてないのに20万人規模の援軍が現れたらちょっと待てになるわな。あ、教皇軍にボロボロにされた民衆達の軍が、先遣隊になってスターリンに突撃を開始し、スターリンの三段撃ちで撃退されてる。


……スターリンの三段撃ちってなんか凄い違和感を覚える文字面だな。そして民衆の方の軍はあっという間に壊滅したけどスターリン側も弾薬は尽きた。そんな中、準備を整えたフェルミン共和国の正規軍10万人が攻撃を開始し、防衛線を突破され、次々と砦を落とされていく。


うわ、大砲とか鹵獲されてるんじゃねーよ。いざとなったら破壊してから撤退しろよ。当然だけど小銃とかも回収されているのでこれはそのうちマウリス教国も銃や大砲を使い始めるだろう。……まあ、スターリンの軍は壊滅しそうだな。でも首都が前線から離れているし、即座にスターリンが滅亡するわけでもないか。補給が保たないだろうし。


今回に関しては民衆達の暴走もあり、それを上手くコントロールし肉壁にしたマウリス教国が凄いわ。10万発しか弾薬がない軍に20万人で襲えばそりゃ勝てるわな。弾薬が尽きた後だと聖女達を止めるのは難しそうだし、特にあの第三聖女は鉄球で砦自体を破壊してたから強いわ。


……初対面の時は棍棒を振りかざし、殴りかかって来た第三聖女だけど、なんか衣装がグレードアップしていて棍棒の先に鉄球がついているから何か凄みがある。よく見たらマウリス教国軍は聖女達のお蔭で負傷しても戦線復帰率が高いのか。回復魔法である程度傷は治るし、聖女達には天使の涙を所持させてそうだから厄介だな。


ここからスターリンが巻き返すには、フェルミン共和国とマウリス教国の仲を引き裂くしかないか。一応過激派集団はマウリス教国の軍が殲滅してるし、そこを上手くフェルミン共和国の民衆に流して暴動を起こさせれば両国の仲は微妙になるだろう。援軍も帰らざるを得ない状況になる。


あとは何らかの新兵器を導入するしかないけど……自動車もまだ完成してなさそうだったし大砲以上に殺傷能力の高い兵器はないんじゃないかな。

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