第104話 現代人は誘惑される

ダンジョンの215階にて、ちょっと恐れていた事が起きた。出て来る魔物が全員クイーンサキュバスという頭おかしい階層で、誘惑魔法と洗脳魔法が飛び交う地獄絵図となる。


この階層に関しては空気自体に発情効果があるし、どこぞのR18ゲーかよと思う程度には色々とエロい。まあ空気に関しては全部アメシストが魔法で遮断するんだけど。


あと魔法での洗脳合戦はムーに軍配が上がるので負けることはないかな。ただ一瞬の油断で自分が死亡するというかパーティー崩壊の危機に陥るのでさっさと通過する。


「これに似た階層自体はこのダンジョンの61階にもあるのが酷いわ」

「色仕掛けに強い男は数が少ないため、他のダンジョンでも死亡率の高いモンスターとしてエンプーサやサキュバスの名前は上がります。

……マスターは色仕掛けにお強いですよね?」

「強くなかったらたぶんもう死んでるからな」


マトンが色仕掛けをしてくる魔物の例としてエンプーサやサキュバスの名前を上げるけど、実際このダンジョンでもエンプーサは鬼門である。見かけは可愛らしい美少女が「殺さないで。殺さなかったら良いことしてあげる」と言うんだから厄介極まりない。なおほいほい誘いに乗ったら性的に食べられた後に物理的に食べられる模様。頭から食べられるとか純粋に怖いわ。


まあうちのパーティー相手に誘惑台詞を言ったら即解体されるんだけど。見かけは可愛らしい美少女がザクザクぶつ切りにされていく光景はSAN値削るのに丁度良い光景である。もう慣れた。


そして215階のクイーンサキュバス達は超が付く美人揃いなため、血塗れの死体でもおっきするレベルで美女。何なら部位毎に切り分けられていても色気が凄いわ。下手に触って一瞬で干からびたくないからこの辺の処理はムー任せだな。後は状態異常耐性が異様に高くなった前衛2人も切り分けることは出来るか。


「クイーンサキュバスの柔肌美味しい!」

「これは生でも行けますね。お兄さんもどうです?」

「絶対嫌です」


思わず手を伸ばしたくなる胸や尻の部位を、パクパク食べる2人だけど絵面が酷い。……ローが炎の剣で断面を一気に焼いて、丸呑みにしているから前までみたいに血塗れになりながら食べるようなことは減ったけどそれでも口の端から血が垂れてるんだよなあ。


「すまないのじゃが、儂では遮断の出来ない性欲の高ぶりを食欲に変換したから皆もどんどん食べると思うのじゃ……」

「いやそれはナイス判断だわ。ってマトンですら食べるのか」


ダンジョン内の魔物を食糧として回収する以上、道中で魔物の肉を使って食事をすることは決して珍しくないというか何日も籠るなら必須になる。今までもサキュバスの肉やらアークエンジェルの肉やらを食べてきたので、そのうち絶世の美女であるクイーンサキュバスの肉を食べるのも抵抗はなくなるだろう。


というかキューが性欲を食欲に変換する神のような魔法を使えるようになったので自分も美女を見て美味しそうとか思うようになるのは色々と凄い。こういう小細工の腕がパーティーメンバーの中ではトップのキューは、分身を出し過ぎて最大魔力値が残り僅かでも重要な存在である。


「……これがクイーンサキュバスの魔臓かあ」

「内臓は触って大丈夫なのかの?」

「流石に大丈夫だな。胸の方は斬り落とされても精気を吸うのビビったけど」


その後、ちょっと検証をしていたらクイーンサキュバスは死体でも精気を吸い上げるので安易に手を出すのは本当に止めた方が良いのは分かった。自分も結構防御面を高める装備を何重にも装備しているんだけど、それでもクイーンサキュバスの斬り落とされた胸を触ってみて一気に精気を吸い取られたので相当ヤバイ。


3秒で手と腕が少し痩せたのでダイエット効果は凄そう。ちなみに超柔らかかったので精神力上げてなかったら手を離せなかったと思う。まあ天使の涙で元通りになるから手が離せないまま腕が枯れても大丈夫だったが。


「お腹に当てたらダイエット効果凄そうだなと思ったけど胸から少しずつ再生していく身体を見てクイーンサキュバスはヤバイと思ったわ。というか同じような状況にムーもなってる……?」

「なってるわよ。というか私の場合は身体全部が灰にならない限りは、敵が男だと再生出来る可能性は十分にあるわね」

「私も一滴の水になっても復活の可能性はあるかなー?」

「スー様同様、私も一滴の水状態になっても再生出来る状態です」


そしてムーやスー、アメシストも同様に欠片の状態から復活出来ると聞いて、生物としての格が高い魔物だと、生存性も高まるんだなあと思考停止する。ルーやローに至っては寿命以外で死んでも別個体のフェアリーを乗っ取って復活するって何だそれ。


今まで能力に関しては詳細に把握してきたつもりだけど、生存性は深掘りしてなかったし、ここまで生存能力が高いとは思わなかった。いやダンジョンの魔物にもSランクやSSランクの敵が、更に強化されたものが出て来て中々殺し切れなくなっていたから嫌な予感はしていたけど。


……キューは本体が死んでも分身が生き残っていたら復活出来るそうだし、アルも今までに何個か自身の種を地中に埋めているそうなのでその種から復活出来るとか。というか全員何らかの復活手段を持っているようなので神やそれに準ずる存在はヤバイなと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る