第103話 現代人は税金が嫌い
領内がディートリッヒさんによって纏め上げられてからしばらくの時が経過し、成長が早い野菜とかの収穫の時期を迎えるけど、収穫物等を全て自分のものにしても良いということに村人達は困惑した。税金を今まで払い続けていたから、それが急に0になると落ち着かないのかな?
まあ自分は税金受け取らないスタイルを貫くし、ディードリッヒさんも自分の意思というか理念を尊重しているのか税という強制的に支払わないといけないお金は0というルールにしている。よって基本的には貯蓄に回るのだが、一部の村民からは共同募金のシステムが作られた。
目的毎にお金を出すシステムで、例えば橋が欲しいと思う人が多い場合はその橋を建てるためのお金を募金で集めて作るというもの。これあれだ。クラウドファンディングだ。恐怖のせいで規律しかない人間達に余裕が出てくるとクラウドファンディングをやり始めるのか。自分の予想は半分当たって半分外れたな。これほど民衆に自主性があるとは思わなかったわ。
このクラウドファンディングについてはディードリッヒさんが制度化し、募金を集める人は事業完了後に達成報酬として集金額の1割までを貰えるように改良。例えば橋が欲しい場合は冒険者ギルドとか商会で見積もりを取って、それに自分の報酬金額を上乗せした額で募金を開始。
その後、お金が目標額まで集まったら着工って感じだね。まあ領内のインフラ整備とかは全部これになりそうだから良いんじゃないかな。本当に必要なものしか出来上がらなさそうだし。見積書とか全部公開しないと集金開始出来ない仕組みだし。
あとは同じ目的でも別々に募金を始めることが可能で、その場合は達成報酬の割合の差で金額が変わってきたりする。1割満額貰う人と、5%に抑える人。期間内に集まらなかった場合は全額返金ということになったし、完成しなかった場合も全額返金システム。何というか、非常に良いシステムのように思える。
この制度を周知した上で、村で一番目立つ場所に掲示板が設置され、クラウドファンディングが開始されると最初に出た案件は川を渡る橋や、特定の地区の開拓なんかもある。……商会の誘致なんかもあるな。まあ大きな商会の支店みたいなのが幾つも出来たら生活は便利になるか。
一応サウイマ商会が来る予定とは聞いているんだけど商店が一店舗だけだと殿様商売になりそうだし複数欲しいのは分かる。後は先の戦争というか内紛で死んだ人のお墓を建てるプロジェクトや……自分の銅像を建てるプロジェクトがお金集まってるね。何で?
少なくとも領民達が文字通り半減するまで殺し合いさせたというか、殺し合いを放置していた領主の銅像を建てる必要あるか?建てるならディードリッヒさんの方じゃないか?まあ何があっても領内不干渉を貫くから放置するけど。
「……像を作るなら、アメシストが変身して型取りに協力すれば相当楽に作れそうだな?」
「それなら簡単に出来そうですし手伝いましょうか?」
「いや、銅像が正確に出来てしまいそうだから手伝わなくて良い。そもそも領内の業務を全部放棄してるんだし、基本領内のことで手伝うということはないよ」
内政は全放棄。それで上手く回りそうな仕組みを領民が勝手に作って勝手に実行しているんだから、それで良いんじゃないかな。銅像を作る辺りは、感謝の気持ちとかもあるのか……?冷静に考えれば考えるほど内政全放棄って糞領主な気がするんだけど。
……まあ一応、戦争はないし魔物達の方が規律あるから外の魔物に領内を荒らされることもない。土地的には近くに川と湖があるからか、肥沃な土地っぽいし作物は良く育つ。加えて税がないとなると、村人視点では内紛が収まった後なら比較的良い環境なのかな。
一方でシュヴァリエの方は、リトネコ王国を併合した時点で検地を実施。より正確に税を取ろうとする目論見でやっているけどこれが農民たちから大反発を食らっているので内政って大変そうだな。軍隊揃えるためにも税金は沢山取りたいんだろうけど、取り過ぎると反乱に繋がるから安易に税率を変えることも出来ない。
だからせめて取り逃している税金の回収をしようとして、検地を実施する流れ。都市部の人間からは概ね良好な評価だけど農村部の人間からはそりゃ嫌な思いしかしないだろう。まあ全部聖帝の子孫ってネームバリューだけでやること為すこと全て正しいから従え、と押し通す気かな。
国側の人、公務員も大量に動員しないと検地なんて進まないだろうし色々と大変そう。どう足掻いても不正する人は出て来るだろうし、厳罰化で対処するんだろうけどそれも上に力がないと反発を食らいそう。
この後のシュヴァリエはリャン帝国との戦争が既定路線だろうし、その戦争に向けて軍備増強も推し進めている。リャン帝国側も軍備は整えているけど、前の侵攻で主力部隊が壊滅的被害を受けているのが痛すぎる。侵攻ルートを制限された上に完全に待ち伏せが嵌った形だったからなあ。
……そしてこの戦争の気配を察知した両方の国から、避難民がうちに流れ込んでいるのでまた人が増え続けている。そろそろ最初の村長達が危惧していた「土地がない」状態になるんじゃないかな。まあその辺の対応もディードリッヒさんが上手くやりそうだし、自分は面倒なことを考える必要もないか。
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