第102話 現代人は情報収集が好き
「日本人、ですよね?」
「そうだけど?」
「……強い魔物とか育てやすい魔物を教えていただけますでしょうか」
アメーバスライム増産計画が無事に稼働したところで、冒険者ギルドに呼び出されたので向かうと仏頂面の冒険者ギルドのマスターと最近冒険者となった女の子がいた。ササラさんだっけ。今日の護衛役の子狐(キュー)と真ん丸紫スライム(アメシスト)&真ん丸青スライム(スー)を見て可愛いという感想が出て来るぐらいには一般女子高校生である。
どうやら冒険者ギルドのマスターが例の民主主義国家スターリン・国家元首ヒトラーさんの転移者チェックをした後らしく、自分と同郷だからと話せる場を用意したとのこと。
おそらくササラさんには自分がめっちゃ怖い人物と刷り込まれたようで、結構怖がっているのは残念だけどそれでも自分の知りたい情報について調べようとするのは貪欲な子だね。
「その前に聞いておきたいんだけど、『異世界ギルドストーリー』と『シュヴァリエと花騎士』というゲームについて聞き覚えない?」
「……シュヴァリエってここの国ですよね?」
「あっ、その反応は知らない感じだし無理に答えなくていいわ。
一応教えておくと、この世界の元になったゲームらしいんだけど自分も原作知識はないから詳しいことはヒトラーさんに聞いて」
こちらからは、とりあえず原作知識を持っているかチェックしたけど外れだった。まあ古いゲームだし仕方ないけど……同じ作者が作ったかもしれない、最近のゲームの方なら知っている可能性もあるから探りは継続して入れて行こうか。
読心能力のあるアメシストにキューの念話経由で確認を行うけど嘘ついていないみたいだし。年齢は17歳らしいから、二学年年下かな?
「育てやすい魔物ならフェアリーを推しておくよ。自分が最初に買ったのもフェアリーだったし」
「……どうやって3万円も稼ぎました?」
「あー、何か売れそうな発想やアイデアがあればサウイマ商会に持ち込めば融資受けられるよ。嘘発見器があるから地球産の特許は言ったもの勝ちになってる。
というかまあ、自分もその手の融資を受けたし15万円ぐらいは渡しておくわ」
「え、そんなに受け取っても返せませんよ!?」
どう足掻いても初期資金は足りないし、自分も初期は結構大変だったような気がするのでポンと15万円ほど渡しておく。これで2体か3体の魔物+初期の冒険者に必要な便利グッズが纏めて買えるぐらいだから大きいんじゃないかな。
あとは自分と違って最初に辿り着いた街にダンジョンがあるからすぐにダンジョンにチャレンジできるし、ゴブリンとかを倒すための移動時間がないのは楽だね。これまでの5日間はどうしていたのか聞くと、足し算引き算の暗算が出来るから店番のバイトみたいなことをしてお金を貯めていたらしい。まあ現代日本人なら足し算引き算の暗算が出来る人は多いだろうな。
普段はアリエル街の北にあるエワル湖周辺にいるとだけ伝えて、客人ワッペンも渡しておく。……商人や自分が認めた人に渡しているワッペンで、領内へのパスポートみたいな存在。これがなかったらスライム達に食べられます。
その後はササラさんにフェアリーを買わせて、ダンジョンまで案内して解散。あの子が生きて明日を迎えていることを祈ろう。
「こちらが天使の涙の検証結果になります」
「あれもう全部終わってたの?
……そうか。そうなるのか」
領地に戻るとニゴナから天使の涙を使った検証について、色々と記載された資料を渡されたので読み込む。足を斬り落とし続けるだけの検証ではなく、天使の涙を損傷の激しい人体に使用した場合にどうなるかの検証結果だ。
たとえば身体と頭を首付近で切り離したとして、基本は頭側から再生が行われるらしい。らしい、というのは身体側に大量の天使の涙を使用し、切り離した頭をすり潰した場合のみ身体側から再生を始めるからだ。
また身体から切り離した首から上の頭について、その頭をてっぺんから真っ二つに割った後で天使の涙を使用した場合、先に天使の涙が使用された方から再生が起きたという結果に。右側と左側、両方に対して全く同時に使用した場合はランダムかニゴナの感知できないコンマ数ミリ秒……いやニゴナの能力から考えると数ピコ秒早い方から再生したとのこと。
他にも色々と検証しており、細切れにしていく最中や、回復中に攻撃し続けて2度死んでいるようなのでクイーンフェニックスの蘇生薬も使用している。結果として問題なく蘇生を確認したため、自分に万が一が起きた時の保険は出来た。
やっぱりこういうことするのが一番よく分かるというか、色々と見えて来るよね。倫理的に許されざる行為であることは理解しているけど、悪人1人の犠牲で色々と判明するなら自分は喜んでその悪人1人を犠牲にするわ。しかしまあ、改めて見ると5日で頭髪が全部白髪になるのが理解出来る実験群である。
「これ……実践したんですか……?」
「ニゴナがやったね。この実験内容自体を組んだのは自分だけど」
「……トーヤさんって『世界のために』で少人数を躊躇なく犠牲にする人ですよね」
「……まあトロッコ問題とかは迷いなく人の少ない方を殺し続けるからな」
ハーフエルフの女の子は、たぶんこの中で一番まともな感性をしているんだと思うけど、実験を想像しただけで吐きそうになっていたので精神が少し軟弱。……まだ脳みそだけにして永遠に苦しめたり、生存に必要な器官だけを残して箱詰めにしたりをしてないからマシな方だと思いたいんだけど。
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