第99話 現代人は散財が好き
マトンに耳かきをして貰い、ついでとばかりに口内検査や、先ほどアメシストの身体に溺れた件で身体に異常がないかを調べられたが特に問題はなかったようなのですぐに解放された。……いや本当、リラックスしている最中に水中に落とされる感覚だから結構危なかったとは思う。
アメシストの方はスーに身体を固定する魔法というのを教えてもらってるそうだけど、そういうものがあるならさっさと教えておけば自分が2度もアメシストの身体で溺れることはなかったんだよな。というかアメシストの変形とスーの変形って系統違ってたのか。
あの2人、相性悪い感じだったけどちゃんと魔法を教えたり教わったりが出来るのなら心配は要らないかな。……レベルアップで魔法を習得することはもちろん多いんだけど、最近はそういうのがないから他の魔物から教えてもらって使えるようになるパターンが多い。教えるとはいっても、流石に属性が一致していないと取得は無理っぽいけど。
「アリエルに行って色々と買って来る予定だけど何かいる?」
「お兄さん1人だと流石に危険なので私もついていきますね」
「私もついてくー!」
「ルーとローがいるなら大丈夫じゃな。
儂は特に何も要らんが……いや、紙を買って来て欲しいのじゃ」
今日は休日で、特にやることもないのでアリエルの街でお金を使うことにする。……休日だとは伝えたけど、流石に1人で街へ行くのもなあと思ってたらルーとローがついて来ることになった。ここで断る理由もないし、外見美少女2人を連れてアリエルの街まで買い出し。
運動のためにも徒歩での移動は意識する。ずっと飛んで移動していたらどんどん体力が落ちる可能性もあるからね。不老でそういうのが無くなるなら良いけど……体力落とす検証はしたくないな。
買い出しは、具体的には服とか石鹸とか。あとはキューに紙を頼まれたのでノートというか、白紙の本みたいなのを買っておこう。……あ、そうだ。新しい包丁も買っておくか。ダンジョンで包丁みたいな短剣はドロップするんだけど、切れ味が良すぎて使う時は常に恐怖との戦いである。指を切り落としたとして、天使の涙でくっつくと分かってても使うのが怖い。
最近は細かい料理をマトンが担当するようになったのでそろそろ完全にダメニートと化している気がする。……それにしても、行く先々で人込みが瞬時に両脇に退くの、何とかならないかな。
「目を合わせるな……!死ぬぞ……!」
「え、あの2人ってフェアリー……なのか?」
「アリエルのダンジョン狂いが商店街入りそうだと伝えてこい!」
道の脇でこそこそ話している声は、大体聞こえるし聞こえなかったら後でスライム達に確認を取るけど扱いが完全に悪の魔王。人がどんどんこの街に集まってるから初見の人もいるけど、目を合わされることはない。目を合わせたら死ぬって何だよ。いや男がムーと直接目を合わせたら死ぬ可能性はあるけど自分は大丈夫だよ。
商店街に入り、武器屋や防具屋を覗くと深層装備が並んでいるけど大半は自分が売った奴。ルーやローにアクセサリーでもプレゼントしようかと思ったけど性能が低すぎて渡す気はなくなった。まあ日々ダンジョンで腕輪や指輪やネックレスを渡しているから、こういう場では要らないでしょ。
「あれ食べたい!」
「ん?
……ワイバーン商会の人達が何やってるんですか?」
「ああ、トーヤか。
いや、老齢のワイバーンが昨日息を引き取ってな。
肉を皆で食べるのだが、そのお裾分けだな」
なんかルーが肉の匂いに釣られて移動を開始したが、その先にはワイバーン商会の纏め役であるオノックさんが肉を焼いていた。一串1000円。肉が大きいから食べ応えはありそうだけど市場価格と比べれば高い方だ。
そういえば、老齢で引退済みのワイバーンが子守りとかをやっているんだっけ。魔物にも当然だけど寿命があるようで、ワイバーンは比較的短命らしい。そこで気付いたわけだけど、ルーとかローって寿命は……?
「既に数千年は生きますし恐らく今後の進化で青天井になっていくので少なくとも今お兄さんが心配するようなことじゃないですよ」
「フェアリークイーンの時点で1000年は生きれるもんね」
「ええ……ということは進化したら寿命伸びるのか。
そりゃ強くなることに貪欲になるわな」
「……何か怖いこと話してるな?
ほれ、焼けたからいつものお礼だ。コイツもフェンリルの肉は喜んで食べてたぞ」
しれっと生前の様子まで語るオノックさんだけど、運送業のパートナーで老後を看取った後に焼いて売りに出すのは倫理的にどうなんだろう。経済動物にそこまで情は湧かないタイプだけどちょっとこのワイバーンが可哀想になった。
まあでも日本人も食べられるものは何でも食べるし、食べて供養みたいな考え方にも理解はあるから食べて供養するか。……ルーが感傷的にならずにパクパク食べているからちゃんとお金は払っておこう。ローも結構食べるし。
ワイバーン商会の人もみんな食べた上で、それでもまだ肉が余ってたから売りに出したとのこと。味はまあ、結構美味しいけど肉質が硬いから食べるのに苦労はする。でも食べられないことはないしただ燃やして供養するのは確かに勿体無い。
……ワイバーン商会のワイバーン達は流石に食べなかったようなので、ワイバーンは同族を食べないのだと理解する。ということは、ワイバーンはアマゾネス族よりか倫理観あるな。
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