第94話 現代人は労働条件に五月蠅い
お金を持ち、初めて経営者っぽい感じで人を雇うことになった自分だが、人を雇う立場になって思い浮かべるのはサウイマ商会のケイトが言っていたあの言葉。
「生きるための最低額で雇う」
それがまあ、商売の世界では正解なのだろう。特定の技能を持つ人を、高値で雇うことは独立されるリスクを孕む。でもまあ1回ぽっきりのお仕事なら最低賃金どころか倍額や3倍の額を出しても良いでしょ。
もしこの世界のお金が紙幣ならお金で焚火をしていたぐらいにはお金あるし、良い人材が欲しいならお金を惜しむ必要はない。というわけで1日8時間労働(休憩1時間)で日給5万円設定の依頼を出したらアホほど募集が来た。
この世界の日雇い労働者というか冒険者って金目当ての人が思っていた以上に多い。……いやお金を稼ぐために冒険者やってるんだし人が集まるのは当然か。
「……100人も雇ってどうするつもりだ?」
「いやまあ人手はあればあるだけ良さそうだし。一応全員大工経験者らしいけどそんなに大工出来る人の人手余ってました?」
「余っていたというか今抱えている建築関係の仕事を全部放り投げてそっち行ったんだわ」
「……違約金払ってでも日給5万の方が良いのかあ」
とりあえず100人ほど雇ったけど、1日当たり500万の出費で納まるなら例え城の建築に1年かかっても人件費は183億円しかかからないな。純粋な運搬作業は流石にスライム達も手伝えるし、工期は1年ぐらいで見とくか。
「1年で建てるつもりか……」
「いや1年もあったら建つものじゃないの!?
あ、いやそっか。流石にそれは現代基準か」
「まあ人手があれば出来ないこともないだろう。アリエルの街の大工集団は誰かさんのせいで手早く家を建てたり城壁を修復したり、ということに長けているからな」
「ああ……仕事が豊富なら経験豊富な大工も増えるわけだ。
いや城壁壊したのは流石に1回だけだけど」
元々アリエルの街は戦火に見舞われることも多く、腕の良い大工集団を多数抱えていたようなので城建築は任せても大丈夫だろう。それを浮かすための飛行石も十分な数を確保しているし、何も問題はないな。
……あ、この飛行石の配置的に一度に全部の飛行石へ魔力を込めるのは難しいな。色んな場所に配置する飛行石に、同時に指示を出して魔力を込める動作が必要になるけど、キューやムーから飛行石の場所にいる魔物へ指示を出すよりかはニゴナに浮遊城管理させた方が良いか。
同じインテリジェントスライムガールに進化していてたシクハにニゴナの管理していた湖については引き継がせ、ニゴナには浮遊城の城主になって貰おう。ニゴナの支配下になったスライム達と同期して、そのスライムから飛行石に魔力を込めるという芸当が出来る以上、ニゴナに城を浮遊をさせるのが一番効率が良い。
とりあえず1日目の建築準備の状況を見たキューの計算によると、休みなしなら250日、5勤2休なら340日ぐらいで建てられるとのことだからまあ1年か。……パッとスケジュール管理が出来る辺り、現代社会でも通用しそうな狐である。どんぶり勘定してそうだけど。
……ということはここにいる大工集団はたぶん全員年収1800万円になるって考えで良いかな?いや違う。働く日数自体は250日ぐらいだから1250万円か。なんというか、雇われ身分の限界を見た気がする。というか本来だと日給1万円でも高額らしいから実質250万円程度がこの世界の大工の年収か。
「1人当たりに支払う賃金は1200万円程度じゃから言うほど高くはないように感じるのう」
「んー、農民たちが年に100万円程度しか稼げてないところを見ると明らかに高いし冒険者よりも……いや、3年生き残った冒険者の平均年収ならこの1200万円ラインよりかは上になるか」
冒険者の年収というのは、死ななければという枕詞が付けば結構高い方だとは思うけど、低ランクの冒険者やるよりかはこの城建築に関わった方がお金貯めれそうだね。そりゃ人は集まるわ。違約金もそれほど高くないみたいだし。冒険者ギルドのマスターは頭抱えてたけど。
……国が認めた超大規模人材派遣会社の社長というか、支店長だから冒険者ギルドのマスターは大変だ。あと流石に現場監督者としてキューは配置しないといけないと感じたので、ダンジョン内でキューはもう分身出来ない。魔力も少ない状態になり、自分と同じく戦力外になったので膝の上で狐になって貰おう。
「魔力がすっからかんなのじゃ……」
「分身出しても魔力減らないなら魔力の無限練成が可能だし分身したら魔力減るのは仕方ない。
一応偵察だけなら何とかなる?」
「偵察だけなら何とかなるのじゃが、バフデバフには一切期待しないでほしいのじゃ」
城建設の様子はキューが見てるし、領内は放置で良いし、しばらくはダンジョンに潜り続けて攻略を進めようか。深層装備も150階を超えて強い二つ名が二つ付いてるぶっ壊れ装備が出て来たので、敵も強くなるけどこちらも強くしていけるのが非常に楽しい。これはその内、3つや4つの二つ名付き装備も出て来るな。
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