第93話 現代人は城を作る

150階に出て来るヒヒイロカネゴーレムを倒すことで、ヒヒイロカネが大量に手に入るようになったけどたぶんどこかのダンジョンでは100階よりも上の階層で倒せるだろうから苦労してフルボッコしなくても大量に手に入るとは思う。


まあ未踏破のダンジョンを順番に攻略していくぐらいならアリエルの街の150階にいるヒヒイロカネゴーレムを周回する方が手間じゃないけど。どうせ1日1回だし、その内苦じゃなくなるだろうし。流石に150階になると瞬殺とは行かず、マトンの加速魔法やキューとアメシストのバフデバフがないと攻撃が通り辛い。


その上、向こうは自分を狙って来るから相手の攻撃を避けるということが難しく、ルーやナージャが必死に壁役をやらないといけない状態。1回の戦闘で2分ぐらいかかるので耐久力もかなり高いと思う。


まあでも10対1でフルボッコしている状態だからそこまで被害を出さずに勝てる。そしてこのヒヒイロカネは、普通のヒヒイロカネよりも質が良いようでアホみたいな高値で売れた。具体的にはマウリス教国が1㎏当たり2億円で買い取るとか言い出したので当然今回確保した分は売る。今までに3回倒しているので、大体600㎏はあるんだけどこれだけで1200億円かあ。


元々お金には困ってなかったけど、本当に天井知らずでお金を使えるようになったと思っても良い。とりあえずこのお金でやることは、城を建てること。その城を浮かせることの2つ。


飛行石に関してはあの冒険者ギルドのマスターが必死に買い付けてくれたので、天使の涙で買い取った話がそうとう効いたんだと思う。マウリス教国から更に30個の飛行石と、リャン帝国がかき集めていた100個の飛行石を全部札束ビンタで買ったようで、非常にお疲れのご様子だった。


だけどこれから城の建設作業に入るからアリエルの街から労働力吸い上げることになるし、冒険者ギルドのマスターは更に忙しくなりそう。……領内の住民には不干渉を貫くので、領地とは別に城用の土地を買って、そこにアリエルの街から集めた労働者で城を建てていく感じだね。


「領内の魔物達の方が単純作業に使えないか?城を建てるのも、魔物達の領域に建てればタダだろう?」

「城を建てる知識は魔物達持ってないので。キューが設計図を描けても、現場作業で実際に行動をしていくには経験者が必要でしょ」

「ああ、まあそれはそうか。

それもその狐の分身で何とかなりそうな気がするが……どこに何体置いて来たんだ」

「スターリンの首都とマウリス教国の聖都には置いているし……少なくとも今から更に建築用の分身を出すのは無理です」


最初は魔物達を労働者にして城の建設をしていこうと考えたけど、流石に何らかの建築経験を積んだ人間がいないと城を建てるのは無理だわ。最終的には浮かせることを考えると相当軽い城じゃないといけないんだけど、建築資材はナージャの石板が基本になるかな。


一応領内にも建築の手伝いしたら給金出るぞとアナウンスは行うけど、今それどころじゃないぐらいに領内で戦闘起きてる。具体的には元々の村民vs移住者で夜な夜な互いに襲い合うという不毛なことをしている。


この領地、貰った当初と比較すると人が入って来ている状態なのに村人の人数自体は減っているらしいし、そろそろ底が見えてきそうだな。


「リトネコ王国に向かわせておった儂からの伝言じゃが、リトネコ王国は深層装備10個の代わりに飛行石10個を出すそうじゃ」

「んー、飛行石の1個当たりの値段自体は格安の深層装備と同じぐらいだし、別にそれで良いか。将軍達は解放しといて」


前にリトネコ王国軍が侵攻した件について、飛行石10個で手を打つ。まああの侵攻でこちら側の弱い魔物達が一気に底上げされたし、損してないんだけどね。むしろ向こうが軍隊を溶かしているからすぐに滅亡しないか不安。


そしてその不安は的中し、シュヴァリエ軍が電光石火の早業でリトネコ王国の王都を陥落させた。お蔭でこちら側に飛行石が入って来ない。思わずシュヴァリエに文句を言ったら、普通にリトネコ王国が自分に渡す分の飛行石をあの紫皇女が持ってきたから許したけど。


……目隠れ王子の側近というかメインヒロイン的なポジションにリトネコ王国の第三王女がいるんだけど、思いっきり祖国を滅ぼしたな。あの第三王女がいるからシュヴァリエがリトネコ王国を統治する正当性もほんの少し存在しているし、たぶんリトネコ王国側の降伏はスムーズに行われた。


いや違う。自分の領地の周辺にあるキャンプ地を掃討しに来ていたあの軍は、リトネコ王国にとって厄介な奴らだったんじゃないか?元々シュヴァリエと統合しようとしていたっぽいし、その過程で反対派を自分の領地に侵攻させることで処分したのか。


まあまず間違いなく今の時点で元のストーリーというのは破綻しているし、シュヴァリエが北方地域を纏め上げていない時点で手遅れっぽいけど、それでも主人公補正があるというか、やり手な感じはする。


リトネコ王国を丸々乗っ取ったことでシュヴァリエはリャン帝国とも対等に戦えるようになるだろう。……そう考えると、シュヴァリエとリャン帝国の丁度中間に位置するアリエルの街から北に伸びる自分の領地って凄く邪魔だな。しかも難民キャンプが周囲に3ヵ所出来ているおまけ付き。もし自分が為政者で、国境付近にこんな奴が居たら間違いなく頭抱えて嘆くよ。

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