第36話 現代人は裏切られるのが大嫌い

アルラウネが支配下に置かれていることを確認するため、ちょっと会話をしてみる。今までの自分の魔物は全部魔物商店から購入したものだし、その魔物商店もダンジョン外で捕まえたりブリーダーが育てた魔物が主な仕入れ先だったから、ダンジョンでテイムした魔物としてはこのアルラウネが初となる。結構他のテイマーだとダンジョン産の魔物で戦っている人が多いんだけど、常識がより欠けているとか何とか。


何というか、アルラウネのテイムをするためだけに壮絶な戦いになった気がする。Cランクのアルラウネ1匹をテイムするのにこれだけ苦労するって、Bランクの魔物やAランクの魔物を仕入れているテイマーってどういう存在だよ。


いやゲーム的にはBランクの魔物やAランクの魔物を買えるの全然不自然じゃないけど、現実的に考えると凄く不自然。Aランクの魔物をテイムして自分で使えるならダンジョンの深層も余裕でクリア出来そう。


まあ、本来はテイマー自身も戦って強くなるからもうちょっと支配下に置ける確率って高まるのかな。自分が今までレベリングをサボり過ぎていたのか。魔物達が10レべ毎に進化してレベルリセットされているから違和感を覚えなかったけど、リセットされてなかったらBランクって50レべを余裕で超えてるからね。


そしてアルラウネを回復させ、それでも暴れてないので大丈夫そうかなーと思って近づき、話しかけた途端。アルラウネの植物の蔓部分でぶたれる。その後蔓でダンジョンの壁に押し込まれ、一瞬で意識を失った。ちくしょう。




トーヤがアルラウネの蔓により、壁に打ち付けるような攻撃によって意識を刈り取られた瞬間、ルーがアルラウネの首を切り取り、ローは心臓を突き刺す。


「ますたー!?大丈夫だよね⁉」

「頭から血を流しているから先そっち治すのじゃ!まだ心臓は止まっておらん!」


アルラウネを速攻で殺す2人とは対照的に、スーとキューはトーヤの回復を優先させる。この作業分担自体、トーヤが事前に決めていたものだった。


「万が一自分の意識が無くなった場合は、スーとキューは自分の回復を最優先に。ルーとローは危険の排除を最優先で行ってくれ。ムーは更なる外的を防ぐために即座に結界を張って、スネーク君とハルはスーとキューの回復を阻害する存在の排除と周囲の警戒。もしルーとローが苦戦しているならそちらの手助けでも良い。自分と同時にスーが倒れた場合は…………」


その指示があってもなくてもスーやキューはトーヤの回復を優先しただろうが、非常事態時にマニュアルがあるというのは魔物達を慌てさせなかった。


「……げっ、気を失ってたのか」

「よかったああああああ」


なお額と頬から血を流していたものの、比較的軽傷なトーヤはすぐに目を覚ました。ダンジョンに潜る際、キューやムーから防御系統のバフを貰っていたのは大きい。目を覚ましたと同時に、トーヤは即座に自身の身体チェックに入る。


「何か植物の種とか植え付けられてない?毒とかの痕跡もなかった?」

「その手のものは傷口から入っていなかったのじゃ。毒の心配もないのじゃ」

「そうか……今このタイミングでの裏切りなら不幸中の幸いだったな。というかステータスにはちゃんと使役枠が8/8になったのに、即座に裏切られるのは油断だった。で、ルーとローはそのアルラウネを殺したと」

「うん!敵だもん!」

「私が心臓を貫きました」


しかしすぐに自覚出来る症状はなかったため、トーヤはキューに状態異常の確認をし、毒の可能性も無いことを把握。一旦冷静になり、油断があったことを認めた。


トーヤがアルラウネに近づいた最大の理由は使役枠が8/8になり、アルラウネが支配下に収まっていたからだ。もしもアルラウネの裏切るタイミングがもっと後であれば、トーヤは植物の蔓で胴体を貫かれ、帰らぬ人となっていただろう。


久々に命の危機を感じたトーヤは、大人しくなり50階までの探索はせずにダンジョンから引き上げる。その後、魔物商店からリーフと呼ばれる葉っぱの魔物を購入した。


【ステータス】

名前:アル

種族:リーフ(G)

レベル:1

魔力:4/4


通常の個体がレベル1の状態だと魔力は1/1なのに対し、4/4のため魔力量は4倍の個体である。唐突な裏切り攻撃により命の危機に瀕したため、心底恐怖したトーヤは、結局今まで通りに弱い魔物から育てることを優先した。


将来的には、アルラウネになると把握しての購入である。アルラウネとその進化前であるレッサーアルラウネは移動が困難であり、移動速度が遅いために人気はないが、その前段階の魔物群は売っておりテイマーにとっては非常食にもなるため比較的人気の魔物だった。


デフォルメされた葉っぱがそのまま歩いているという光景に、凄く違和感を覚えたトーヤだったが、購入したリーフは将来的にアルラウネになることを考慮しアルと名付ける。


結局逃げ帰るように元の街に戻ったトーヤは、自宅がセリテーヌ=リトネコにより荒らされているのを見て呆然と立ち尽くした。

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