第37話 現代人は静かに怒る
ちょっと遠出して帰って来て家探しをされていたらまず最初に来る感情は恐怖だろう。泥棒怖い。強盗怖い。もし鉢合わせしていたらどうなっていたことか。地球に居た頃なら殺される可能性だって高いだろうし、この世界であれば……たぶん強盗は速攻で殺されるな。
例の王女は、どうやら自分の助力が欲しかったみたいで自分が遠出している隙に何らかの弱みを握るため、自分の家に侵入したらしい。弱みを握ったところで自分をコントロール出来るとでも思っていたのだろうか。こんなことになるなら、家に1人ぐらい強い魔物を置いておけば良かった。
しかしまあ、スライチとスラニが例の王女を追い返してくれた上、地下に続く巨大な穴はスラジュウイチが土属性魔法を使って塞いでくれていたから大きな問題はなかった。ほとんど漁られてないというか、初っ端でスライチスラニと対面しているから、玄関から入って玄関で戦闘しただけだな。スライチはフレイムスライムメイジに進化して、現在6レべ。
まだ10階層も満足に突破出来ていない例の王子様パーティーの回復係だったから、まあEランクの魔物の中でも強い方のスライチには勝てないのか。ただ王女側も粘ったせいで玄関付近はボロボロの模様。一瞬殺意が湧いた。
ちなみにウォータースライムメイジのスラニもレベル5だし、このスライチとスラニのコンビはルーとローのように息ピッタリである。まあ姉妹でもないのに息ピッタリなルーとローが凄いんだけど。とにかくこの二匹がいなかったら家中漁られていただろうし、侵入を防いだのは大きい。
一先ず冒険者ギルドに苦情を入れ、王女だし金持ってそうなので詫びとして深層装備幾つかくれとギルマスに言っておく。個人的な報復をすると結果的に得られるものが少なくなる可能性もあるし、こういうのはある程度公的機関の判断に任せるのが良いだろう。あと極力大事にはしたくない。でもちゃんと怒っていることは伝える。
「セリテーヌ王女からは窓から魔物が見えたから家に突入したとの報告を受けているが……家にフレイムスライムメイジがいるとは聞いてなかったぞ。
テイマーの使役下の魔物は冒険者ギルドに登録する義務がある。それを怠ったお前の罪も考慮されるぞ」
「いや、自分が使役しているわけじゃないなら報告要らないんでしょ?冒険者ギルドの規約には冒険者の使役している魔物達について、登録が必要ですとしか書いていませんし。あのスライム達は自分が使役しているわけじゃないです」
「……使役しているわけじゃない?じゃあ家に魔物が入っているから退治しに入ったというセリテーヌ王女の言い分がある程度は通るぞ?」
「あいつらはスーの子供なのでスーが使役していますね。スーの冒険者登録や支配下にある魔物の登録って必要ですか?」
「…………ちょっと待て。色々とヤバい事実を平然と告げるんじゃねえ。
あとセリテーヌ王女が家探しに入ったことを怒っているのは分かるが、あいつこの国でトップクラスの権力者なんだよ」
まあその公的機関がきっちりした賠償をさせなかったら個人的報復に移るけど。というかあの王女、魔物を退治するために家に入ったことを主張するなら裁くのは難しそうだし自分の悪い点というのもあるから軽い個人的報復で済ませるか、今回だけは見逃すかのどちらかかな。一応あの王女、新興国の指導者の1人だしリトネコ王国の王女だし権力はあるだろうなあ。
「じゃあまああの王女に対して、何らかの詫びがないならリャン帝国軍に入るって伝えておいて下さい。活動拠点もリャン帝国の帝都に移します」
「……分かった。今すぐ確実に伝えておこう」
というわけで、あの王女から何らかの詫びが貰えなかったらリャン帝国軍に入って目隠れ王子の軍にスーの光線をぶっぱしよう。既に1回やらかしてるし、戦争とかで殺しが正当化される状況ならもうあと1回も2回も変わらないよ。あと自分よりスーの方が怒ってて抑えるのが難しい。王女との戦闘のせいでスライチ怪我して弱ってたしね。やっぱり第一子はそれなりに思い入れがあるらしい。
諸々を考え、一先ず今日の家のお留守番はローに決定。一番冷静かつ人間に近い上、ちゃんとお話が出来る人を家に置いておくのは重要だと判断した。空いた前衛には久しぶりにスネーク君を置く。新人のアル以外だと一番レベルが低いしまた経験値を貯めて貰おう。
いつも通りダンジョンに行って、アルのレベリングを行い、GランクのリーフからFランクのトゥイッグ、Eランクのレッサートレント、Dランクのレッサーアルラウネ、Cランクのアルラウネまでは一気に成長させる。
レッサーアルラウネに進化させる際、久々に素材を要求されたけど、あの襲って来たアルラウネを解体して素材として利用出来るようにしていたから『アルラウネの花びら』なんて素材ももちろん持っている。
そして進化したアルはダンジョンでテイムを成功したアルラウネと違い、人型部分は若干背が高く、美人というよりかは可愛い寄り。花の上に人の上半身がある感じだけど、花もダンジョンで見たアルラウネより大きいな。そして案の定移動速度が遅いけど、別に花の下に根っこが生えているわけじゃないからハルが抱えて飛べる。
で、ここからコミュニケーションをとっていくわけだけど成長させたら成長させたらで尊敬の念が貰えるのは何かおかしい気がする。……もしもこの世界が本当にゲームの世界なら、戦闘をこなすことで好感度やら絆やらのステータスが上がる可能性はあるし、その可能性は高いと思っているけどもう二度と足元掬われたくないから油断はしない。
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