第26話 現代人は病み上がりに無理をしない
ぐっすり眠って目を覚ますと、目の前に狐耳と6本の尻尾を生やした美女が全裸で土下座していた。……あ、これキューか。狐だし、変化でもしていたのかな?
どうやら眠っている間に一悶着あったようで、ローがキューを躾けた模様。にしても新しく出来るようになったことは逐一報告するよう言っていたのに、教えてもらえなかったということは信頼されてない感じなのかな。
まあキューはこの中で一番の新参だし、化け狐って頭回りそうなイメージしかないから「主様の肩に乗っていたかった」だの「主様と触れ合いたかった」だのの言い訳はあまり信用しないようにしよう。というかやっぱもう命令に強制力ないじゃねーか。大体は自主的に守ってくれているってことか。
……三尾の時にはもう強制力なかったってことは、命令って本当に最初しか通用しないものなのかこれ?なんか考えている内にどんどん悪い予想になってしまうけど……まあ、今大丈夫なら当分は大丈夫だろう。問題なんて先送りにしてしまえ。
テイマーは、時に支配下の魔物に反逆されることもあるけどそういうのって大体命令の穴を突いてのことだし、起きた回数自体がそんなにないはず。そんなポンポン裏切られるような職なら誰もやらないし、絶対服従というイメージの方が強い。
まあ、自殺しろみたいな命令は通らなさそうだと命令する前に分かったことは良い事だ。あと自分が療養している最中に、スネーク君はあれだけ嫌がっていた下水道とダンジョンのトンネル作りに着手している辺り魔物達からの好感度というのは稼げていると思っておこう。
病気で寝込んでいる時とか、演技しているだけなら絶好の裏切りタイミングだっただろうし。たぶんちょっと病気を拗らせただけで抗生物質も解熱剤もないこの世界、人間は簡単に死ぬ。
病み上がりは慎重に、2日ほどダンジョンでの活動は辞めて家でのんびりと過ごす。魔物達が暇そうにしていたのでとりあえずトランプを与え、ババ抜きやら大富豪やらの遊びを教えると普通に嵌ってくれたので人間らしい感性もあるんだな。
というかトランプ自体は売っている異世界、絶対他の転生者か転移者は存在する。この世界に来て初めて会った商人は、自分のことを日本人だと見抜いてきていたし、日本人であることはあまり知られない方が良いというアドバイスまで貰った。恐らく何らかのやらかしを先人達はしているのだろうと考えているけど、調べものをしている時に利用している古本屋の方にはその手の話の本が無かったので調べ辛い。
とりあえず六尾のキューについて、出来ることと出来ないことを確認。すると三尾から六尾までの人型形体を見せてくれて、各段階への変化は可能とのこと。三尾は幼女、四尾は小学生、五尾は中学生、六尾は高校生って感じだから順調に成長していく感じか。あと尻尾や狐耳はもう消せるとのことだったので、要するに四人分の変装が可能ということか。
……これ滅茶苦茶悪用出来そうだな。幼女の姿とか、人間はかなり警戒し辛いだろうし。あと進化する度に、ある程度の知識が生えるということを今知った。ルーとかずっとアホの子だったけど最近はそれが演技っぽくなってきているし、納得ではある。進化する度にどこからともなく知識を得られるとかめっちゃ怖い世界だけどな。植えられた知識に誰も疑問を持ってねえ。
まあそもそもダンジョンで無から魔物が生まれている辺りも考えれば考えるほど怖いが、キューによるとダンジョンやその周囲で昔死んだ魔物や人間の霊を再利用している感じらしい。こいつ霊とかそっち方面の知識生えてるってことは除霊とかそういうことも出来るのか。……また考えること増えたわ。
霊を魔力で肉付けして魔物を生み出しているということは、スーに毎日500回光線で貫かれているケルベロスの霊がいたというわけで……なんか凄く可哀想なことしている気がして来た。でもこれで経験値的なものが稼げたり素材からお金稼げるのが悪い。
「……とりあえずキューは今後狐形態でお願いします」
「……そっちの方が好きなのかの?」
キューに関しては人型の方が戦闘力上がりそうだけど、抱えやすいしいざという時の盾にしやすいので狐形態を継続して貰おう。人型の尻尾には顔埋めにくいけど狐の尻尾なら大丈夫だし。あと人型形態が美人過ぎてトラブルの種にしかならねえ。次の七尾に進化したら、人型形態は大人の女性になってそうなので封印。
将来的には九尾なるのかな。となると、Aランクより上のSランクとかSSランクとかあるのだろう。魔物図鑑での分類で、Aランクがやたら多かったのはAランクとその上を分類出来てなかった可能性がある。自分が使える鑑定とたまに見えるランクが違ってたりもするし、謎システムの方が紙媒体よりかは信頼できるのでそっちを基準に考えよう。
……個人的にはステータスで見れる情報について、作った存在がどういう存在なのか気になるけど気にしてもしょうがないか。大体神かそれに近しい存在だろうし、絶対的強者と対面なんかしたくない。
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