第19話 ジャンク改造とスパルタ特訓
4章書き終わりました。あと4話。毎日投稿で今年中に投稿する。
【グルグル工房】
「そういえばさ、お兄さんたち、カード開発科行ったことある?」
グルグルが作業をしながら玄咲たちに尋ねた。玄咲は首を横に振った。
「まだだ。その、暇がなくてな……」
「あ、そういえば、行ったことないね。同じ校舎なのに」
「その内行くといいよ。結構面白いからさ――よし、最終調整終わり!」
グルグルが作業を終えて額を拭い、手中のものを角度を変えて眺めて満足げに頷く。グルグルの手中にあるのはエンジェリック・ダガーだった。柄に黒翼のパーツが追加されている。グルグルがシャルナにエンジェリック・ダガーを手渡す。
「――エンジェリック・ダガーのジャンク改造完成! パーツはできてたからすぐだったよ!」
「おー……か、格好いい……」
「この黒翼のパーツが黒翼魔法限定で魔力消費を軽減させてくれるはずだよ。軽減、というか正確には魔力伝導の効率化だけどね。結果は同じ」
「よ、よく分かんないけど、凄いや。黒翼魔法の燃費、私が一番困っていたとこだ。ありがとうグルグル!」
「ふふ、僕は天才なんだよ」
「ああ。それは間違いない。レインボードライブも凄かったしな。グルグルには本当助けられてばかりだ」
「ADの改造って、やっぱり、ワクワクするなー……これが新しいエンジェリック・ダガー……」
シャルナは眼をキラキラさせてADを眺めた。グルグルはうんうんと満足げに頷く。玄咲もシャルナの嬉しそうな様子を見て顔を綻ばせた。
「ふふ、ADの引き渡しは終わったようですね……」
「「「…」」」
部屋の隅。腕を組んで不敵に笑う明麗。最初からずっといた。グルグル工房に向かっている時から随行していた。誰も触れなかっただけだ。シャルナが視線を逸らす。明麗がその手を掴む。
ガシッ。
「それでは特訓に行きましょう。ドントストップですよ。シャルナちゃん」
「はい……。……」
チラ、チラ。
シャルナは視線で玄咲に助けを求めた。その意図は明白。玄咲は明麗のCMAでのキャラ付けを思い出す。
(……天之明麗の裏面。狂気的にストイックな特訓信者。その特訓は大空ライト君を干からびたミイラグラフィックにする程。でも、その効果は間違いない。レベル99の秘訣。ただ地道にストイックに狂的な努力をしてきた人間だから会長は強い――シャルには少し酷かもしれない。だが、俺はシャルのためなら鬼になる。シャルのためなら、シャルの、ためなら――!)
玄咲はギリっと歯を噛みしめシャルナのために心を鬼にした。ポーカーフェイスで拳の内に血を握り込めながら、
「シャル……会長がストイックなのは俺も最初から承知していた。それでも一番シャルを鍛え上げられるのは会長だ……シャル、心を鬼にして言うぞ。会長についていくんだ、必ず君を強くしてくれる」
「っ!」
明麗が手の内で唇を食んだ。瞳孔がややピンク色。シャルは「うー……」としばらく唸っていたが、やがてコクンと頷きよわよわな笑みを浮かべた。
「分かったよ。玄咲がそう言うなら、逝ってくるよ」
「ああ。行ってこい。強くなれるのは間違いない」
「うん。それは間違いない。……うん。うん……」
「ふふ、話は纏まりましたね……。それでは行きましょうかシャルナちゃん。いざ、ダンジョンへ!」
「はい……」
(へぇ、今はダンジョンで特訓してるのか……ちょっと心配だな。まぁ、会長がいるなら敵にやられて死んだりはしないか)
「今日もダンジョン60~70階を私に合わせて飛んで駆け抜けましょうか。大丈夫です。敵は大体私が片付けますから」
「はい。うぅ……もう死にたくない。今日こそはどこにもぶつからずに最後まで飛ぶんだ……」
(――ん? もう?)
明麗に引かれてシャルナがグルグル工房から姿を消した。その常にも増して小さく見える背中が見えなくなると同時、玄咲は呟いた。
「……もう?」
「……魔符士科って大変なんだなぁ」
グルグルが遠い目をした。玄咲も遠い目をした。それ以外何も出来なかった。
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