10万PV突破記念番外編 ミランダ・スーのアルカナ占い

【星の白金】――あなたの未来は星のように光輝いています。ここから逸れることはまずないでしょう。今の調子で歩み続けなさい。ただ、真の1等星になるには、もう1つ2つ、殻を破らないといけませんね。


【宇宙】――あなたには一際不思議な星の元に生まれついていますね。でも、いつもその宇宙のように良くも悪くも純粋な心を失わないでください。そうすれば、なるようになります。宇宙がいつまでもどこまでも広がっていくように。何もせずとも……。


【怪鳥】――あなたは凄いですね。今まで占った生徒の中でもトップクラスの素質です。まぁ、本当の化け物2人には及びませんが、それに準じる才覚があります。あなたの純粋さ故でしょうか。少し混じって――いえ、これは踏み込み過ぎですね。申し訳ありません。ただ、あなたの人の規範の枠に収まらない純粋さは、もしかしたらいつか何らかのトラブルを招来するかもしれませんね。その時、あなたを理解して、あなたの側に立ってくれる、誰かがいるといいですね


【業炎】――あなたは強いですね。天才という言葉を体現しているかのようです。ただ、同世代に化け物みたいな才能が集まっている影響でしょうか。傲岸不遜なようでいて、その実上には上がいるとどこか自分を諦めてしまわれていますね。それがあなたの魂格の成長を妨げてしまっています。駄目ですよそれでは。それでも超えていくんだという意気を持たねば、レベル100の頂などとても、とても。



【悪魔】のリバーシ――あなたの運命は――。



そしてミランダは今日の来訪者へその運命を語る。







 とある日付。


 廊下。


 ラグナロク学園第3棟【部活棟】の隅っこに部室を構えるダンジョン同好会への道中、その位置関係上、どうしても横切ることになるある一つの教室を見て、シャルナが声を上げた。


「ん? ここ、こんな教室、だっけ?」


 シャルナの視線の先には暗幕に閉ざされた教室。玄咲は阿吽の呼吸でシャルナに解説した。もはや恒例行事だ。


「ああ。ここはカード占い同好会だよ。そうか、今日は気運が満ちてるのか……」

「占い? 気運?」

「ああ。ミランダ・スーって先輩が部長を務めてる同好会だ。なんでも気運とやらが満ちたときだけ活動を行うらしい。中に入ると占ってくれるぞ」

「面白そう。入ろ」

「ああ。入ってみよう。俺もミランダ先輩に興味があったんだ」

「先輩に興味があったんだ」

「ああ。当然――」

「……」

「……占いにも興味はある」

「だよね!」


 シャルナが年頃の少女らしい好奇心を発揮する。2人は占い同好会の部室に入った。




 



「いらっしゃいませ。ようこそ占い同好会へ」


 中に入ると、一人の女生徒が話しかけてきた。ごく普通の容姿。モブだ。女生徒が案内する。


「占いをご希望ですか?」


「「はい」」


「了解しました。現在中で他の生徒が一人占い中のため、終わるまであちらの席でお待ちください」


 珍しい程普通の生徒の普通の案内によって2人は部室の隅の複数並んだ椅子に隣り合って着席した。


「……風情あるね。占いって感じ」


「ああ」


 暗幕で閉ざされた部室の中は夕闇色の照明具で怪しく照らされていた。部室には、黒い装丁の書物などが詰まった本棚や、儀礼用のマットや絵柄のついたカードの束などが置かれた机など、占い部らしい備品や小道具が多くあった。


 そして、部室の中央には黒い暗幕のテントがあった。その中で占いを行っているらしい。女生徒が補足する。


「カード魔法による防音仕様を現在施しているので中での会話が外に漏れることはありません。安心してください」


 カード魔法は万能だった。





 それから数分の時が経ち、暗幕の中から一人の生徒が出てきた。その生徒は2人の知っている生徒だった。


「……当風気勢の、自我を脱ぎ捨て、核がなければ、自分を信じて、って感じかな。ラップに関しては……」


「えっ!? アルルちゃん!?」


 顎に手を当て何事かぶつぶつ呟いていたアルルが顔を上げ、2人に気づく。


「あっ、おはよ。2人とも。意外な所であったね……」


 占いを受けていたのはアルルらしい。玄咲は尋ねてみた。


「なぜ占いに」


「ん-……最近悩みが多くてね。ちょっと自信なくしてたこともあって、占いにきたの。あはは、意外だった?」


「意外だった」


「そっか。でも、いいアドバイスを聞けたよ。……ここの部長は凄く良い腕だね。きっともうプロでもやっていけるよ」


「そこまでか」


「うん。ただ、ズシリとくるね。その重さが、良くも悪くも人を選ぶ。そんな気はするな」

 

「そうか……」


「うん。本当、ズシリとくるよ。……なんていうか、自分の運命の中心点をピシャリと言い当てられる感じかな。……」


 アルルが顎に手を当て、真剣な表情で呟く。


「Michaelの逆位置――歌で成功を収めるが、差別問題と長く戦うことになる、か……」


「え?」


「あ、ううん。何でもない。2人にもきっといい占いをしてくれるよ。じゃあね」


「あ、うん。それじゃあ」


「また明日ね」


 アルルが手を振って部室を出る。次は玄咲たちの番。女生徒が手でテントを指す。


「それでは次はあなたたちの番です。どうぞお入りください」


 黒子のように無個性な女生徒に促されるままに、玄咲たちは暗幕のテントを潜った。






 ミランダ・スー。


 制服の上からマントのような黒装束を纏い、黒い三角帽を長い黒髪の上に被った、テンプレ的な占い師然とした格好のキャラだ。ゆったりとした服装に包まれたやや贅肉はあるもののバランスのいい肢体と、ハイライトが薄く感情も薄く見える垂れ目の瞳と、無表情の上に整った美貌が、ミステリアスで神秘的な雰囲気を醸し出している。まさに占い師らしい。雰囲気の美少女だ。


 ゲームではメインストーリーには一切絡まない、主人公以外との会話シーンすら存在しないサブキャラ。しかしゲーム内ではかなり存在感のあるサブキャラだった。ストーリーの節目節目に占い部を開き、主人公に次の章の運命を暗示する占いを授けてくれる。そして、ヒロインたちの現在の好感度を教えてくれる。また、文化祭でヒロインと占い部を訪れると、好感度がアップするイベントが発生する。まさしくサブキャラらしい働きをするキャラだった。


 そのミランダが、暗幕の内に入った2人に視線をちらと上向かせて声をかける。


「どうぞ……おかけください……」


「は、はい。失礼します」


「また、美少女だ……」


「この世界では中の上くらいです……」


 そんな客観認識のしっかりした台詞を吐くミランダの対面に2人は座る。双方の間には黒い布を敷いた机。その上には絵柄のついたカードの束。あれを用いて占いを行うらしい。


「最初に言っておきますが」


 静謐な、暗く沈んだ、しかし底に星の煌めきを転がしたような艶のある声に、確たる意思を込めてミランダは告げる。


「私の占いは忖度をしません。どんな結果が出てもそのままお伝えしますので、悪しからず……」


「ッ! 分かりました……!」


「は、はい……」


「では、まず、軽く占いについて解説します。私が占いで使用するのはこのアルカナカードです」


 ミランダが黒い布の敷かれた机の上に様々な絵柄が描かれたカードを広げる。星、宇宙、宇宙人、鳥、炎、魔人――やや濃い目のイラストで様々なイラストが描かれている。ミランダはその中の一枚を手に取って、


「53枚のカードに描かれた多種多様なアルカナが複雑怪奇に絡み合い運命力学が極点収束し曖昧模糊と厳正明大を二律背反した唯一無二にして千変万化の奇々怪々な占星結果を一元抽出する――それがアルカナ占いです……。ここまでよろしいですか……?」


「!? は、はい……」


「問題ないです」


 占いを語る際、時にミランダは四字熟語を多用した特徴的な物言いをする。唐突な漢字連打と占術家らしい物言いにやや面食らうも、シャルナも玄咲に続いて頷く。


「1つだけ、占いをする前に言っておきます」


 ミランダは真剣な瞳をその長い髪とフードの内から覗かせる。


「結果だけは、真摯に受け止めてください……。私があなたたちに求めるのは、それだけです……。悪しからず……」


「はい。分かりました」


「俺がミランダ部長の結果を適当に受け止めるなどありえない。絶対、真摯に受け止めます」


「よろしい……嘘は、一ミリも混じってませんね。あなたたちは資格を満たした。では」


 ミランダはコクリと頷き、カードに手を伸ばす。一瞬で、表情が切り替わる。


「占いを始めましょう」





 シュババババ!


 シュババババババ!


「……」


「……」


 ミランダの手が縦横無尽に動く。高速でカードをシャッフルし、配置し、組み換え、スライドし、広げ、摘まみ出し、また束に。不規則にしか見えない動きはしかし全く淀みなく行われ、その間ミランダは札を全く見ていない。まるで、宇宙を見るかのように、何事かをぶつぶつと呟きながら瞑目したまま虚空に視線を向けている。トランス状態であるかのようだ。


「な、なんか凄い……」


「あ、ああ。猛スピードだな……でも、よく見ると動きに規則性がある。本人にしか分からない法則に従っているんだろう。そういう動きっていうのは、人を惹きつけるものだ」


「うん。惹きつけられちゃうね……」


 初めて見るミランダの占い姿に玄咲もシャルナも圧倒されていた。ミランダは時折カードを机に敷かれた黒いシートの端に弾き出す。そのカードがシートの端に7枚溜まったところで、ミランダの手の動きは止まった。ミランダが目を開ける。


「定まりました――では、運命開示しましょう……」


「は、はい……」


「……ゴクリ」


 シャルナが唾を飲み込む。ミランダが裏返しのままカードを一枚ずつシートの上に並べていく。それは一枚のカードを頂点としたアンク型を取った。下から順に捲っていき、頂点を最後。そして最後に捲ったカードは――。


「――天使、だ」


「でも、逆、向いてるよ?」


「はい――それは天使のリバーシです……。それに、運命を補助するカードは悪魔に、科学者に、導手にMichaelに――なるほど、大体分かりました……」


 ミランダがシャルナに占いの結果を告げる。


「あなたの運命は、苦難に満ちたものになるでしょう……。特に、己の欲望。それとの戦いになるはずです……。しかし、その欲望に打ち勝った時、あなたはきっと、誰よりも高く羽ばたけます」


「お、おお……」


「正直、あなたに関してはあまり心配していません……。彼が」


 ミランダは視線を玄咲にやる。


「いれば、きっとあなたは大丈夫なはずです……。私はそう信じています」


「は、はい……断言は、しないんですね」


「未来は不確定なものです」


 ミランダの眼が曇る。俯く。まるで、無力を嚙みしめるように。


「占いは所詮占い……。未来を変える力はない――無力なものなんです……。でも、それでも」


 ミランダが前を向く。シャルナに微笑む。


「私は信じてる。占いで、人の背を押すことはできると。正しい方向性に導くことはできると。不確定な物……断定はできない。だから、信じてるとしか言えない……。でも、それでも、私は占いを、そして人の可能性を信じている……。それは祈りにも似た気持ちなのかもしれない……。だけど、それでも――」


 ミランダは断言する。その言葉の中には、確かな優しさがあった。


「私は、信じている。あなたがきっと幸せな未来に辿り着けるって。――だから、頑張ってくださいね。シャルナ・エルフィンさん」


「は、はい……!」


 シャルナはジーンと目頭を熱くした。感じ入っている。どうやら、ミランダの占いにいたく感動したらしい。それは、占いの結果や、実力によるものではないだろう。ミランダの真摯な占いに対する姿勢。それが一番大きかったはずだ。ミランダは僅かに口元を緩めた。


「真摯に受け止めてもらえて幸いです……。でも、どっちかというと」


 シャルナから視線を外し、ミランダは玄咲を見た。


「私が占いをしてあげたいのはあなたの方なんです。天之玄咲」


「えっ」


「……なんで、ですか?」


 シャルナが真剣な瞳で尋ねた。ミランダも真剣そのものの瞳で答えた。


「彼の未来は厄塗れです……これ程厄い人は珍しい。天之玄咲。あなたが、今日ここに来ることは分かっていました……。今日私があなたを占うことは決められた運命だった……さぁ、それでは占っていきましょうか」






「補助カードは天使、科学者のリバーシ、怪鳥に宇宙に、犬のリバーシに――なるほど。そしてメインカードは」


 シャルナの時と同じくアンク型にカードをくみ上げたミランダが最後に頂点のカードを開示する。


「悪魔のリバーシ……最悪と最善が常に表裏一体。悪魔のようであり、真逆の性質も兼ね備えており、何とも言い難い。ただ一つ言えることは、必ず吉凶禍福の極端な運命に置かれること――破滅と救済が裏合わせのような、そんな運命に。心当たり、ありませんか……?」


「あります」


 即答。心当たりしかない。そもそもシャルナと二人そろって置かれた現状がまさに破滅と裏合わせの救済そのものとも言える。ミランダは深々と頷いた。


「でしょうね、そうでしょうね……悪魔のリバーシが出た者は必ずそういう運命を贈るんです……逃れようとしたことも、きっとあるでしょう……」


「はい……でも、いつも、同じような運命に帰結して、結局俺には現実逃避することしかできなかったんです……」


「そうでしょうそうでしょう……運命は必然。必ず戻っていく。戻っていっちゃうのよねぇ……残酷だけど、そういうもの。あなたの努力が悪かったんじゃない。運命が悪かったのよ……運命は時に、残酷なものなのです……そういう、ものなのです……」


「はい……はい……俺が悪いんじゃない。運命が悪いんだ。そう開き直らないとやってられないことも多々あって、本当、やってられなくって……」


 玄咲は言わずとも己の心情を察してくれるミランダに前世での鬱屈を思い出しながら、愚痴る。玄咲のずっと抱いていた己の人生への不満。それを察してくれた相手に思わず本音を零さずにいられなかったのだ。ミランダは唐突に言う。


「そうですね……あなたの前世は相当不幸だったようですし。彼女もですが」


「ッ! ぜ、前世、ですか?」


「はい。あなた、軍人だったんでしょう? つい最近まで……おっと」


 ミランダは冷や汗をだらだらと流す玄咲とシャルナを見て、話題を方向転換した。


「この話はしない方がいいようですね。話を戻しましょう」


「え、ええ……あの、どこまで察して」


「想像にお任せします……それで、あなたの占い結果の続きなのですが」


「あ、はい――!」



「――あなたはこの先、あなたという存在そのものを揺るがすような、あるいは死よりも辛い未来が訪れます」



「……え?」


 玄咲は絶句する。シャルナも。ミランダはあくまで真剣に、誤魔化さず、占いの結果を玄咲に伝える。


「それはきっと避けようとしても避けられない――ううん。避ければ避ける程、反動で酷い結末を迎える――そんな未来です。避けては通れない。どんな形を辿っても後悔が残ることになる。……ひょっとしたら命を落とすことになるかもしれません……」


「……そ、れは」


 玄咲の脳裏にこの先のCMAのストーリーの断片が蘇る。心当たりは、ある。それは玄咲がずっと恐れている未来。今は平和。だけど、この先も平和か分からない。CMAのストーリーは中盤から徐々にシリアスに変化していく。その変化を恐れていた。今が、幸せだから。


 この学園でみんなと共に過ごす青春は、本当に幸せ過ぎて、たまに怖くなるくらいだから。


「……心当たりが、あるようですね。きっとその懸念は、懸念に終わらない。何らかの形で結実してしまう。そういうもの。そういうものなのです……しかし」


 ミランダは玄咲の手を両手で包み込む。優しく、人肌の温度で。


「きっと、あなたは幸せになれる。いつも、越えてきたじゃないですか。どんな艱難辛苦も、試練も、あなたなりのやり方で。きっと乗り越えられますよ。今回だって……」


「ミランダ、先輩……」


「何よりね」


 ミランダはシャルナをちらっと見て、微笑む。


「その子が隣にいれば、きっとあなたは大丈夫だわ。比翼連理の大天翼。あなたたちはそういう運命にある。重力も逆風もきっと強烈。でも、その先の景色は、きっと誰も見たことのない、天を之くものにしか見えない、絶景になるはずだわ……。人の運命は不確定なもの。だから私には信じてるとしか言えない。だけど、それでも言います。きっとあなたたちは幸せに辿り着ける」


 ミランダは天の言葉でなく、人の思いと笑顔で占いを締めくくった。


「私はそう、信じています」





 その日の帰り道。ラグマにて。


「ラーメン、美味ひいね」


「ああ。たまにはラグマオリジナルのラーメンも悪くないな」


 2人は月清をパクッて作ったカップラーメンの空き容器をゴミ箱に捨て、帰路を辿る。途中、シャルナが神妙な表情で言った。


「……ミランダ先輩の占い、アルルちゃんの言う通りズシっと来たね」


「ああ……誤魔化しなく、占いの結果を伝えてきた」


「玄咲の占い、ちょっと、怖かったね」


「ああ。でもさ、凄く暖かくて、優しくて、何より前向きだった。悲劇を悲劇として伝えるんじゃなく、試練として伝えて、そして幸せな未来に辿り着いて欲しいって思いを、凄く感じたよ。……占いでさ、人を救いたいんだよ。ミランダ先輩は。だから、あんなに真剣なんだ」


「うん。優しいからさ、占いの結果が、響いたんだろうね」


「そうだな……占いの実力もだが、あの占いに対するスタンスが、後に大占い師となる所以なんだろうな。本当、暖かくて、柔らかくて、可愛くて――」


「……」


 玄咲は咳払いした。


「……ゴホン。とにかくいい先輩だった……しかし、前世の話が出てきた時は驚いたな。しかもつい最近までとしっかり明言された」


「そうだね……本物だって、思ったよ」


「どこまで把握しているんだろう……。まぁ、人に吹聴するような性格ではないし、そこまで気にすることでもないんだろうけどな。しかし、驚いた……」


 ミランダの占いについて話しながら二人はラグナロク・ネストへの帰路を辿る。その最中、玄咲はふと思った。


(……CMAは中盤から段々メインストーリーがシリアスになっていく。序盤の明るい時期は、あるいはもうすぐ終わる。大空ライトくんが曇空期と呼ばれる時期がもうすぐ訪れる。……俺も、そうなるのかな。でも、だとしても)



 ――きっとあなたたちは幸せに辿り着ける。私はそう信じている。



 ミランダの言葉が脳に浮かぶ。その言葉が、勇気になった。


(それに、何より――)




「その子が隣にいれば、きっとあなたは大丈夫。比翼連理の大天翼。あなたたちはそういう運命にある。重力も逆風もきっと強烈。でも、その先の景色は、きっと誰も見たことのない、天を之くものにしか見えない、絶景になるはずだわ……。人の運命は不確定なもの。だから私には信じてるとしか言えない。だけど、それでも言います。きっとあなたたちは幸せに辿り着ける――私はそう信じている」




「――シャル」


「なに? 玄咲」


「必ず、幸せな未来に辿り着こう。絶対辿り着ける――そう、信じよう」


「……うん。そうだね。信じよっか。……この先の未来が、必ず」


 シャルナは光に満ちた通学路を真っすぐ歩きながら、言った。


「幸せだって。信じることから、全ては始まる、もんね」

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