7日目 第35話 狂夜勝利ルート

 勢い任せの初稿がこっち。しっくりくるのもこっち。しかし、この案を採用してしまうと全体の帳尻合わせがとんでもない手間になるので元の案を採用しました。こっちの方が自然な流れな気はするのですが。



 裏話をするとそもそも狂夜くんVSアルルはシャルナVSアルルで使うネタを勢いで使い倒してしまって、予定と大幅に違う形になったのです。アルルの16小節もライムもシャルナ戦に取っておくはずが現稿の結果に。そもそも2章はイレギュラーだらけでシャルナはここまで強くなるはずじゃなかったのです。少しずつ強くなって、現時点では狂夜くんに削られて手負いのアルルと何とか引き分け程度の強さに落ち着くはずだったのです。それが、当初の構想とまるで別キャラのカミナ君を登場させた結果、作品のテンションと比例してここまで強くなりました。当初のカミナ君は玄咲君にキレさせてゾディアックサンダーを打たせるだけのただの亜人迫害思想持ちのやられやくのチンピラだったのです。楽しい学園生活と友情をテーマにした2章が初めての即興尽くしで上手くいかなかったからシリアスにテコ入れ……ってのありますが、単純に、当初のキャラが気に入らず、しっくりくるキャラ案を探していたらいつの間にかあんな形に着地していました。作者にも理由がよく分かりません。






「……俺の、勝ちだ」


「……そうだね。僕の負け」


 大の字になってアルルはしみじみと呟く。三日月を遮って頭上に立つ、赤い眼に戻った狂夜に、拳を突き出す。


「ナイス、ファイト」


「……ふっ」


 狂夜も笑みを浮かべて、アルルに拳を突き出す。


「ナイス・ファイト」


 そして、拳を突き合わせた。悔しくも清々しい思いを抱きつつも、アルルは思う。


(……もしかしたら、僕も将来的にはママと同じで、魔府士以外の道を選ぶことになるかもな――)


「――ハッ、ハッ」


「ん?」

「む?」


 ――森の中から、吐息が聞こえる。その吐息はあっという間に近づいてきて――。


 シュタタタタタタタタタタッ!


 2人の前で土煙を上げてズサァッ……と減速した。2人が引き気味に驚くほどの猛スピードでB組と狂夜の元戦場に到着したシャルナが膝に手をついて、呼吸を整える。狂夜に問いかける。


「ハァ、ハァ、助っ人に、きたよ。きたんだけど……なんで、アルルちゃんと、一緒にいるの?」


「「……」」


 アルルと狂夜はとても残念なものを見る目でシャルナを見た。狂夜はため息をついて、シャルナに告げる。


「B組は俺が一人で全員倒した。お前の出番はない。大人しく飼い主(天之)の元に帰ってろ」


「え?」


「うん……彼一人に負けちゃった……」


「……」


 シャルナは当たりを見回す。そしてアルルのSDのHPゲージが0になっていることを確認して、表情を強張らせた。


「……え? ちょっと、強すぎない?」


「だから俺は強いんだ。それより、もう行け。ここにお前の仕事はない」


「う、うん。そうだねシャルナちゃん。急いだほうがいいよ」


 シャルナは何度も首を捻りながら来た道を引き返していった。


「おっかしいなー。絶対私が、大活躍する、流れだったのに。おっかしいな―……」


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