7日目 第27話 クゥと3択コミュニケーション

コスモがレイプ未遂されることをメタ的に知っていたため、クゥと悠長に話してた時間でコスモの危機に間に合ったんじゃないかと思ってしまい没に。その内後日談でも書いてクゥとの会話の伏線も回収しようかとも思っています。キララの約束とエンジェル・ハイローの伏線を回収しないといけないし。中々時間が。






「……なにあれ。反則」


 たった今HPを0にした地面に倒れるクゥに玄咲は告げた。


「――ある意味では、バエルに匹敵する、俺の切り札さ」


 答えながら、玄咲は心の中でメリーに感謝を捧げる。


(HPが10%を切ると取ってくるクゥの発狂行動【ガルダ召喚】。やっぱり使ってきたな。メリーがいて本当に良かった……)


「そっか。本当、底が知れないね。ゲンサックは。……ね、一つ質問していい?」


「ん? まぁ一つくらいなら」


「ゲンサック。あなたには何が見えてるの?」

 

「……」


 玄咲は少し考えてから簡潔に答えた。クゥにはそれだけで伝わると信じて。


「死の予感と、殺しの導線」


「――なるほど」


 クゥは口元に柔らかな笑みを浮かべた。


「たくさん死にかけて、たくさん殺したんだね」


「ああ」


「今までさ、どれくらい人殺してきた?」


「間違いなく君よりも」


 玄咲は今度も簡潔に答えた。クゥはやはり、その口元に笑みを浮かべて答えた。


「……そっか。私もさ、たくさん、人殺してきた」


「……そうか」


 知ってた。クゥの過去も、詳細に知っている。クゥはさらに語る。


「それが普通だと思ってた。でもこの学園にきてたくさん浮いて、異なる価値観に触れて、普通じゃないのかもって、思うようになった。あのさ」


 クゥは涙を目に溜めて、玄咲と視線を合わせた。


「私、おかしいのかなぁ」


 返答候補は即座に3つ思い浮かんだ。



 ――あんた、それおかしいよ! うえ、ぺっぺ! 好感度-100。フラグ消滅。


 ――俺はそういうの嫌いじゃないよ。個性あって、つーかキャラ立ってていいじゃん? 好感度+1。フラグ消滅。


 ――うるせぇ! 友達になろう! 好感度+5。フラグ継続。



(……)


 合理的に考えれば「うるせぇ! 友達になろう!」というべきだった。それでクゥも、玄咲も救われる。だが、なぜだろう。玄咲はそんな台詞を吐きたくなかった。


 自分の言葉でクゥと接したかった。


「おかしいん、だろうな。普通じゃない。それは誤魔化さないよ」


「……」


 クゥは落ち込んだ。


「だよね」


「でも、それでいいじゃないか」


「え?」


「この学園で変わっていけばいい。なりたい自分になればいい。俺はそう思う。そうしてる」


「……」


 クゥの瞳が見開かれる。玄咲は言葉をつづけようとする。


「えっと、だから、その、変わっていけば、いいと思うよ」


 だが、限界だった。結論を言い終えたら、それ以上言葉が続かない。思いを、上手く紡げない。


「……ふふ」


 だが、クゥには十分思いは伝わったようだった。


「うん。ありがとう。そうだね。少しずつ、変わっていけば、いいよね」


「あ、ああ。そうだ。そういうことがいいたかった」


「その隣に、ゲンサックがいてくれれば、嬉しいかな」


「え?」


「ねぇ、ゲンサック。私と友達になってくれる」


「――もう」


 玄咲は微笑んで答えた。


「友達だと思ってる」


「……そっか」


 クゥは美しい笑みを見せた。玄咲は今更ながら気恥ずかしさに照れて視線を外す。それから、言った。


「じゃ、じゃあ俺はもう行くよ。急がないと。長話しすぎたな……」


「うん。じゃね。ゲンサック。私の、この学園初めての友達。頑張って」


 クゥが小さく手を振る。かわいらしい動き。


「ああ。頑張る」


 玄咲は頷き走り出した。

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