第47話 光ヶ崎の血
「光ヶ崎の血?」
「ああ」
イベント2日前。前日玄咲の家に泊まり込んだのでお弁当を作る暇がなかったシャルナと、なんとなく今日はカフェテラスでランチ。シャルナはカルボナーラスパゲッティ。玄咲はサンドイッチ。シャルナはラーメンに限らず基本麺類が好きだ。「ラーメンに似ているから」らしい。
「光ヶ崎家は代々星魔法に強い適性を持つ。その究極であり、光ヶ崎の完成形の異名を持つ天才がリュートだ。リュートの星魔法適正は異常だ。もはや異能の域に達している。その分他の魔法の出力が大分低いらしいが、大したデメリットではない。なにせ星魔法は数あるカード魔法の中でもトップクラスに強力なカードカテゴリーだからな」
「そうなの?」
「ああ。む、これ美味いな。流石、ラグナロク学園は一味違う」
玄咲は食べたことのない味の謎肉が挟まったサンドイッチを齧って、思わず零した。シャルナもスパゲティを啜りながら喋る。
「ふぉっちも、ふぉいひいよ」
あまり品の良くない真似。だが、可愛いので問題なかった。玄咲はシャルナに一切突っ込まず話を続ける。
「でだ、星魔法がどういったカード魔法体系かというと、一言で言えばフュージョン・マジック特化だ。カテゴリーのあらゆるカードがフュージョン・マジックの素材となる。ある程度人為的にそういう志向性を狙って、光ヶ崎家の先祖が開発したカテゴリーなんだ。スロットに差し込んだ5枚のカードだけで複数のフュージョン・マジックを使い分けられる。それも、カード同士の異様な親和性の高さにより、通常以下の魔力消費でな。人為的にフュージョン・マジックを再現した歪みかその分威力は少し下がるが、コスパを考えたらやっぱり普通のフュージョン・マジックより優れている。フュージョン・マジックに特化している分、単発の魔法がちょい貧弱という欠点はあるがな、それでも強力なカテゴリーなのは間違いない」
「私も星魔法使いたい」
「適正ありきの魔法だから普通の人には使えないんだよ。光ヶ崎が光ヶ崎たる由縁さ。そしてそんな光ヶ崎の人間の中でもリュートの星魔法適正はずば抜けている。その結果何が起こったと思う?」
「凄く魔法の威力が上がった」
「それも正解。だが30%だ」
「3、30%?」
「ああ。リュートの適性の本質はそんな所にない」
玄咲は食べ終えたサンドイッチを包んでいたペーパーを折り目正しく畳んで店員が処理しやすいように皿の上に置いてから、告げた。
「星魔法に限り魔力消費が4分の1になる。つまりリュートはちょっと重めの通常魔法程度の魔力消費でフュージョン・マジックを発動できるんだ。しかもそもそもの魔符士としての素質も歴代トップ。まごうことなき天才さ」
「ずるいね。ずるいずるい。ずるずるだよ」
シャルナがスパゲティをずるずるすすりながら感想を述べる。玄咲は頷いた。
「ああ。ずるい。大空ライト君が必死にカードを入れ替えてたくさんのフュージョン・マジックを貧弱な素質でメタを意識しながら必死に使い分けている横で、リュートはカードを入れ替えることもせずローリスクで強力なフュージョン・マジックを使い分ける。はっきり言ってどこがライバルだっていいたくなるくらいの性能差だ。大空ライト君と対極になるフュージョン・マジックの使い手と公式では明記されていたが、まぁある意味間違っていない。糞雑魚の対極は最強だからな。リュートが主人公だったらCMAはヌルゲーだよ」
「よく分かんない」
「あ、ごめん。そりゃそうだよな。今度CMAについて初歩の初歩からレクチャーするよ」
「……うん」
「そして何より、それだけ強力なのに、リュートには他の生徒にない切り札がある。というか、星魔法にだな。カードのランクが上がればサンダージョーの
「うん。過去形なのが、ちょっとおかしいね。もぐもぐ……うん! 美味しかった!」
シャルナが笑顔でフォークを皿に投げ出す。カランカランと音を立てる。あまり品がよろしくない。でも、シャルナが可愛いので玄咲は気にしなかった。口の周りをナプキンで拭くことは忘れないシャルナを可愛いなぁと眺めながら、椅子にもたれかかって、しみじみと口にした。
「本当、天下一符闘会結論メンバーの一人なだけはあるよ。次のイベント、炎条司くんにぶっ倒されてくれないかなぁ……」
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