第46話 ラブコメ2 ――大好き――

「上がったよ」


 シャワーを浴び終えたシャルナが洗面所から出てくる。背中が破れておらず血にも塗れていない新しい制服を纏っている。


「……なんで、ベッドの隅で、体育座り、してるの?」


「え? 落ち着くから……」


「ふーん……」


 シャルナがベッドに上がる。そして玄咲の元まで近づく。戸惑う玄咲の足を開いて、その間に背中で割って入った。


 玄咲はシャルナに、もたれかかられた。


「!!!!!!!!!!?」


 しっとりと濡れ光る髪が、ほんのりと蒸気する肌が、真新しい制服が、玄咲の体に押し付けられる。軽い背中。しかしその存在感は玄咲の人生の中で最大級の重厚感だった。


「本当だ、落ち着くね」


「はっ! シャ、シャル、な、なにを……」


「いや?」


「嫌じゃ、ない」


「よかった」


 シャルナはさらに深々と玄咲にもたれかかってくる。心臓が跳ねる。おそらくシャルナにその鼓動は伝わっただろう。なにせ胸板に密着しているのだ。伝わらない訳がない。動悸を鎮めたいが、だからといって鎮められるほど現在の状況は甘くなかった。甘々だけど。甘くなかった。


 シャルナは玄咲に合わせて体育座りしている。つまり、脚線の坂をスカートがずり落ち、太ももが大部分見えてしまっている。少し動けば、またその奥まで見えてしまいそうだ。それに、少し視線を下げただけで、制服の内が、その白い丘陵が見える位置関係。


 色々と際ど過ぎた。


「嫌じゃない、が、シャル、この体勢は、その、色々とヤバい」


「もうちょっと、だけ、このままで、いさせて」


「し、しかし……」


「耐えられない?」


「あ、ああ」


「でも、嫌じゃ、ないん、だよね」


「……ああ」


「だよね」


 そしてシャルナは言い放った。


「玄咲は、私のこと、大好き、だもんね」

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