第24話 映像 ―Video Room―

 映像の中で二人の生徒が向き合っている。飾り気のないだだっ広い白い部屋。バトルルーム内だ。


 1人は雷丈壱人。実名よりサンダージョーの異名の方が有名な、悪名高き雷丈家の鬼子だ。父の雷丈正人の真似事だろう。似合ってもいない笑顔を浮かべている。実に胡散臭い。


 もう1人はよく知らないピンク髪の女性徒だ。兎耳が生えている。その時点でヒロユキは嫌な予感がした。


 カードバトルが始まる。サンダージョーが悠然と女性徒へと歩く。ADを武装解放もしない。後ろ手を組んで、コツ、コツ、と歩み寄っていく。


 女生徒が弓型のADを雷丈壱人に向ける。女生徒が口を動かす。


「ファイア・アロー!」


 弓から火矢――ファイア・アローの魔法が放たれた。


 顔面に着弾。サンダージョーの笑顔は小動もしない。魔力煙をヌッと超えて不気味な接近を再開する。


 女生徒がファイア・アローを連発する。全弾着弾。狙いが良かったのではない。サンダージョーが避けなかったのだ。避ける必要もなかったのだろう。その笑顔には何の痛痒も浮かんでいない。抗魔力に――というかレベルに差がありすぎるのだ。この年頃の子としてはありえないことだった。


 とうとうサンダージョーが兎耳の女性徒とあと1メートルの距離まで接近する。兎耳の女性徒が怯えを顔に浮かべて逃走しようとする。サンダージョーの手が素早く動いた。


「逃がさねぇよ」


 サンダージョーが兎耳の女性徒の手を掴んだ。弓型のADを力づくで奪い取り遠くへ放り投げる。女生徒が絶望の表情を浮かべる。サンダージョーはそのまま女性徒を乱暴に組み敷き馬乗りの体勢になった。ヒロユキには獣が人間に襲い掛かっている図にしか見えなかった。


 サンダージョーが女性徒の兎耳に両手を伸ばす。掴む。根元を。しっかりと。


 サンダージョーが女生徒の兎耳を双方向に引っ張り始めた。引き抜こうとでもしているのか、拳に血筋を浮かべて、腕を筋肉の漲りに震わし雑草に対する容赦のなさで引っ張っている。サンダージョーの薄く空いた瞳が愉悦の弧を描いている。女生徒は体をガタガタ震わし、恐怖からだろう。とうとう瞳を閉じてただ涙を流すのみとなった。ヒロユキは憤怒した。


「何をしているんだこいつは!」


「兎耳を引っこ抜きたいんじゃないのかい。あるいは加虐を楽しんでいるのかもしれないし、まぁ多分その両方だね」


 テーブルを挟んだ対面のソファに座るマギサが平然と言う。ヒロユキは70年来の友人であり学園の共同運営者であるマギサに激しい剣幕で言った。


「何でそんなことをしているのかと言っているんだ!」


「あの微笑みデブ――雷丈正人の子供だよ。何も不思議じゃないだろ。人間至上亜人絶滅主義のエルロード聖教の聖書片手に子供の頃からしっかり教育を施したんだろうね」


「そもそもなぜこんな我が学園に相応しくない屑を入学させたんだ! 私は許可していないぞ!」


「私にも色々考えがあるんだよ。それよりほら、動画の続きを見なよ。こっからが面白いんだ」


「っ!」


 何も面白くない。そう言いかけた言葉を呑み込んで、息を吐き、ヒロユキはテーブルの端のスライド付きの台座に挟み置かれた長方形のデバイス――レコード・カードに記録された映像を再生する、モニターと呼ばれる映像再生画面付きの魔工金属の板で作られたビデオ・リード・デバイス通称ビデオへと視線を戻した。


 サンダージョーが引っこ抜くのを諦めたのかようやく兎耳の握りを解いた。ヒロユキは少しほっとした。女生徒はまだ目を空けない。震えたまま涙を流している。サンダージョーは数秒間その様を見下ろしたあと、いきなり、にやりと口角を大きく広げて笑った。いいことを思いついた。そんな子供の表情だった。ただ無邪気さはなく、溢れんばかりの邪悪さだけがその表情にはあった。ヒロユキは背筋がゾクッとした。


 電光石火。


 どうしても女生徒が目を瞑っている内に叩きつけたかったのだろう。そうとしか形容しようのない早さでサンダージョーが女性徒の目を目掛けて拳を振り下ろした。


 醜悪な絵面がヒロユキの視界の中で再生された。女生徒の心中の恐怖はいかほどのものだったろうかとヒロユキは想像する。怒りと憐憫が同時同量心中に湧き上がる。


「よもや生徒のためと私が建設させたバトルセンターをこんな風に悪用されるとは思いもしなかった……!」


 もう何をしても壊れないと判断したのだろう。サンダージョーの拳は雨あられと女生徒の顔に降り注ぎ、女性徒は可愛らしい顔を醜いほどにくしゃくしゃにして泣き叫んでいた。サンダージョーはそれを見て明確に笑っていた。胡散臭い笑みではない。心の底からの邪悪な笑みを浮かべていた。女生徒に外傷はない。しかし心の傷はどれほの深さに達しただろう。もう魔符士として再起不能かもしれないとヒロユキは思った。退学試験には間違いなく落ちるだろうとも。


 サンダージョーが右の握りこぶしの底部を大仰に振りかぶって女生徒の鼻っ柱に叩きつけた。ダメージはない。それなのに女生徒の鼻からずるずると鼻血がナメクジのように湧き出した。サンダージョーの拳を掻い潜って顔の横を伝って床にたらたらと落ちてゆく。人は時に強い思い込みによって傷を負う。女生徒の鼻血もその類だろうとヒロユキは思った。女生徒がどれだけの恐怖心を抱いているのか。その鼻血を見ればあまりにも容易に想像が働きヒロユキは胸が痛んだ。


 サンダージョーの表情が変わった。


 拳に付いた血を見た瞬間だ。表情が無表情に変わった。その身に纏う不穏な雰囲気が沸騰せんばかりに膨れ上がる。


 スッと立ち上がる。逃げようとした女性徒の腹に右足をドスンと突き刺して拘束しながらポケットから2枚のカードを取り出した。口が動く。


「武装解放」


 サンダージョーの手の中に白い鞭型のAD――ベーシック・ウィップが生まれる。その柄の部分のスロットにサンダージョーがカードを挿入する。腹を踏み躙りながら180度方向転換。ベーシック・ウィップを振りかざす。


 目を見開き内心の怒り苛立ちを一気に露わにして、サンダージョーが勢いよく口を開いた。


「サンダー・ショック!」


 ベーシック・ウィップに女生徒の放った火の矢とは比べ物にならない大きさの雷が灯る。バチバチバチバチと音まで聞こえそうなほど激しく棘光りしている。サンダージョーの背面で女生徒の顔がこれまでで最大の恐怖に歪む。


 サンダージョーがベーシック・ウィップを振り下ろした。女生徒の股にベーシック・ウィップのしなりに乗った極大の雷が炸裂した。


 女生徒の体が痙攣する。陸に上げられた魚のように、あるいはそれよりも激しくバタバタと、痛ましく。白目を剥いている。口から涎が垂れている。股から小水が溢れている。そして口に出すのも憚れるものまでが床に姿を見せていた。


「もういい」


 ヒロユキはもう見ていられなかった。


「そうかい」


 女生徒のHPの残量――0になったに決まっている――をSDで確認したサンダージョーが、冷たい目で動かなくなった女性徒を見下ろし、「穢れ血の亜人が」そう吐き捨ててバトルルームを出ていく所で映像はブツ切れた。マギサが手元のボタンのついた長方形の板――ビデオを操作するリモートコントロール・リード・デバイス通称リモコンの動画再生終了ボタンを押したのだ。


 陽が沈み夕が過ぎ窓の外には闇が広がっている。ラグナロク学園学園長マギサ・オロロージオに見せたいものがあると呼び出され来室した学園長室。ヒロユキはソファーに深々と腰かけてため息をついた。


「あの女性徒はどうなった」


「係員が保護したあと保健室で目を覚ましたよ。試験は放棄。自ら退学を選んで学園を去っていったよ。他にももう一人、同じように辞めていった子がいたね。同じく雷丈壱人の対戦者で、亜人の女の子だよ」


「そうか――」


 闇に満ちた窓の外を睨みながらヒロユキは言った。


「退学にしよう」


「却下だ」


「なぜだ!」


「あんな奴にも、あんな奴だからこその使い道がある。最大限利用してから捨ててしまえばいいんだ」


 そう言って笑うマギサ。愉快気だ。ついていけないなと思いながらヒロユキは言う。


「あいつは他の生徒までダメにする。いわば腐った果実。早急に取り除くべきだ」


「生徒は果実じゃない。人間だ。反発力がある。腐った果実があれば自ら取り除こうと奮起するさ。その作用が欲しいんだよ」


 マギサがウィンク。ヒロユキは吐き気がした。


「しかし!」


「ま、それは取り除ける力があればの話だ。……まさかここまで他生徒と実力に開きがあるとは思わなかったね。眉唾だったが例の噂は本当のようだ」


「雷丈壱人には成魂期までの人間にあるはずの第一次レベル限界がないという噂か」


 マギサはコクリと頷いた。


「ちょっと待ってな。これを、こうして――」


 マギサが手元のモニター付きの板――スクールターミナル・リード・デバイス通称STをタッチ&スライドで操作する。SDの情報を集積するリード・デバイスだ。


「お、あった!」


 マギサがSTをヒロユキに見せる。サンダージョ―の生徒情報ページ。そこには成魂期入りたての子供では絶対にありえない、第1次レベル限界の20を遥かに超えるレベルが記載されていた。


「化け物め」


 学園の教師の平均レベルよりも高いレベルだった。


 成魂期の人間は若ければ若いほど強い。つまり、今のサンダージョーは人生で一番強い。最大レベル100の大人をも軽く凌駕する強さだろう。雷丈家は国を魔獣モンスターから護る七霊王家セブンスロードの一家。表の生業である強力な魔物退治の依頼には事欠かない。サンダージョーは幼い頃からその仕事に準じていたと聞く。多くの魔物を倒してレベルを上げたのだろう。


「ただレベル限界がないだけではなく、成魂期と同等の成長速度まで持っているのか。そうでなければ絶対たどり着けないレベルだ。成魂期のレベル成長速度はそれ以外の年齢帯の30倍。この世界では15歳~20歳までの生き方でそれ以降の人生の全てが決まる。だがサンダージョーにその法則は通用しないようだ。まさか成魂期の期限や第二次レベル限界までないんじゃないだろうな?」


「前者は分からないが後者はなさそうだ。ここ数年サンダージョーは伸び悩んでいるらしいからね。高レベル者特有の停滞期だよ。そこまで化け物ではなかったらしい。要は凄まじい早熟ってことだ。サンダージョーと同じような人間は歴史書に眉唾物の伝承として描かれている。今までずっとフェイクだと思われていたが、どうやら真実だったみたいだね。カード魔法研究家としての好奇心が実に刺激される。本当、面白い子だよ」


 マギサがヒッヒと笑い、悪趣味な冗談を飛ばした。


「魂を解剖してメカニズムを解明してみたいねぇ。新しいカード魔法の参考になるかもしれない」


 実行しない理性があるだけで10割方本音なのだろう。昔からずっとカード魔法キチ――バカで好奇心が強く、今では世界的に高名なカード魔法研究家にまでなったマギサはカード魔法に関連する未知の事象――成魂期のメカニズムもそのうちに入る――には異様な関心を示す。今頃サンダージョーを頭の中で殺して解剖しているのだろうなとヒロユキは思った。望まずして得た70年物のツーカー。


「しかし、こうなるとちょっと考え物だ。これだけ周りの人間とレベル差があると反発しても踏みつぶされるだけで成長が生まれない。確かに現状では害にしかならないねぇ」


「ならばやはり退学に」


「停学だ」


 マギサはピシャリと断じた。迷いの類は一切感じられず、自分の中で結論が出ているようだった。こうなるともう覆る余地はない。ヒロユキは嘆息した。


「停学か……」


「ああ。そうだね、3学期くらいに復学させれば周りとの実力差も埋まって、生徒たちを発奮させるいい起爆剤になると思うんだよ。エルロード聖国が覇国の座に居座り続けるとどうなるか、サンダージョーを見れば生徒たちにも想像がつくだろう。仮想エルロード聖国としてサンダージョーはこれ以上ない好適役の敵役さ。まさに学園の敵役たるG組に相応しい。私の理想の生徒だね。こういう劇薬みたいな生徒が欲しかったんだ。成魂期の子供はとにかく敵がいた方が伸びる。今年の新入生は強くなるよ」


「……」


 人類史上最強の魔符士マギサ・オロロージオ。しかしその代償とでもいうようにその性格は歪んでいる。時々、人の気持ちがないのではないかと見えることがある。実際はそうではなく、価値観が常人と異なりすぎるだけなのだが。


「邪魔な雷丈家を潰す手がかりが見つかればという目論見もあったけど、あまり期待していなかったからそっちの方はどうでもいいか。というわけでヒロユキ、停学手続きをしといてくれ」


「分かった。今から停学の通達を出そう。明日の試験に間に合うようにな。それでいいな?」


「いや、せっかくだから3日全部試験は受けさせよう。ガキどもの青いケツに火をつけて程よい焼き加減にしてもらってから退学にするんだ。それが最善だって私の勘が言っているんだよ。ヒッヒ」


 ヒロユキは喉まで出かかった反論を飲み込んだ。吐くだけ無駄だと事前に悟れる自分に悲しさを覚えた。


「また勘か。もう少し合理を大事にしたらどうだ」


「勘でこれまで上手くやってきた。符闘会だって我が校の生徒たちだけで4度も優勝させた。だからこれからも勘でいく」


「その割には前2大会は1回戦負けという無残な結果に終わったようだが――」


 マギサへの反感がヒロユキに致命的な失言を吐かせた。文字通り命に至る失言を。癇所を的確に抉ったことが表情の変化で分かる。怒気が、表情を一瞬で飽和し、呪詛のように溢れ出る。魔力の渦がマギサを中心に生じる。まずい。そう思った時には既にマギサは手首のSDをヒロユキに向けており、


「待て――」


「マジックボール」


 轟音。背後を振り返る。壁に穴が開いていた。穴はどこまでも貫通し外の景色と繋がっている。でたらめが過ぎる光景。あとでカード魔法で治さなければならない。補正値1のSDでランク1の魔法を放ち、これだけの破壊をもたらせる存在は世界広しといえどもマギサくらいだろうと、対面する友人のでたらめさにヒロユキは生涯何度目かも分からぬ戦慄を抱いた。マギサが鼻をふんとならす。


「1日1回までは怒りを堪えてやる。約束だからね。今日これからは慎重に言葉を選びな」


「……ああ」


 堪えてない。全然堪えてない。そう言いたい気持ちをヒロユキはグッと堪えた。胃に、穴が開きそうだった。


(いくら生徒たちのためとはいえよくこんな狂人のブレーキ役を私は理事長として50年も続けてきたな……)


「ああ、そういえば、もう一人あんたに見せたい生徒がいるんだった」


 マギサがビデオに近づく。そして枠縁側部のカードスロットからレコード・カードを引き抜き、ポケットから取り出した新たなレコード・カードを挿入した。ソファに戻りリモコンで動画を再生する。


「この子だよ。あんたが珍しくエゴ発揮してG組に編入させた生徒さ。くく、絶対ただものじゃないと油断したタイミングで魔法を打ち込んだ私の眼は間違いじゃなかった。やっぱり強かった」


「っ!」


 映像の中で2人の生徒が対峙している。男子生徒と女性徒だ。男子生徒の方は黒髪。黒目。おぞましく目つきが悪い。ヒロユキの知っている生徒だった。


「こいつは――天之玄咲ッ! 我が愛娘のアカネに狼藉を働いた変態! それに、あ、ああっ!」


 そして女性徒の方もまたヒロユキの知っている生徒だった。


「ユ、ユキちゃん! 小さいころ家に遊びに来たこともあるアカネの友達のユキちゃんじゃないか! あ、一気に接近して――や、やめろぉっ!」


 映像の中で天之玄咲による暴虐が始まる。水野ユキが過剰なまでにボコボコにされる。雷丈壱人を彷彿とさせるなぶり方だった。ADで殴打するさまには虫唾が走った。最後の、わざと低威力の魔法を使って幾度も疑似痛覚による痛みを味わわせるやり方に至っては雷丈壱人を超える悪辣さで本気で殺意を抱いた。


 2、30回、水野ユキの後頭部をアイス・バーンで作った氷の床に叩きつけて天之玄咲は勝利した。全く無意味な手間だった。水属性の魔力の持ち主ならば水野ユキのADを奪ってアクア・ボールを何回か撃てばもっと早く勝負はついた。にも関わらずその方法を選ばずアイス・バーンなどというゴミカードを用いた攻撃に頑なにこだわった。それはつまり、水野ユキを精神的にいたぶるのが目的だったということだ。


 なんでそんな酷いことができるのかヒロユキには分からない。屑の思考回路など理解できるはずがない。怒りが腹の内を炙る。瞳をぶるぶると赫わせる。ヒロユキは迷わず断じた。


「退学にする」


「……はぁ。あんた孫が絡むと本当駄目だね。この程度で退学にできる訳ないだろう。雷丈壱人と違って尋常なカードバトルの範疇さ」


「し、しかし」


「黙りな。私はこの子が気に入ったよ。邪道なようで凄まじい練度で完成されているこの子だけのゲテモノバトルスタイルが実に斬新だ。とても興味深くて面白い。そして何より――シンプルに強い。今まで見てきた全ての魔符士――生徒じゃないよ、魔符士だ。と、比較しても、戦闘センスが飛び抜けている。そんな子を、当然のように今日最多勝利をあげた将来有望な生徒を退学にしようってんならあんた――本当にぶち殺すよ」


「うっ……マギサがそこまで褒める程強いのか」


「ああ。全ての試合を見たけど、強いよ。正直魔符士としては異質だけどね。なんというか本能で戦いというものが分かってる。カード魔法への習熟は浅いけど、それさえ補えれば化物になるだろう。先が楽しみだよ」


「……私は奴のことが気に入らん。気に入らんが、それでも君がそこまでいう生徒を退学にする訳にはいかないな」


「くく。結果的にはG組に入れた判断はナイスだったよ。実力的にも性格的にも学園の悪役であるG組にぴったりの逸材じゃないか。ハッハハハハハ!」


 マギサが楽しそうに笑う。余程気に入っているらしい。これは退学にするのはもう無理そうだなとヒロユキはため息をついた。


(まぁ、機嫌が直ってよかった)


「一応パートナーの子も成績が良かったから確認したけどそっちは、まぁ、どうでもいいかな。光るものはあるがそんな人間はこの学園には溢れてる。対戦相手に恵まれただけだったみたいだ。名前は、えっと、どうでもいいから忘れちまった。うん、どうでもいい生徒だ。それ以外の感想はないね。ああ、見目は良かったか」


「……」


 気に入った生徒以外には本当に冷淡だった。ヒロユキは天野玄咲などとペアになったその生徒に2つの意味で同情した。


「あとただの私の勘なんだがね、なんというかこの天之玄咲という生徒はとんでもないものを隠しているような」


 突如として発生した轟音がマギサの台詞を途中で遮った。

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