第31話応援
中級者ステージ50層。
ダンジョン内のセーフゾーンで最も施設が多いフロア。
ダンジョンガールズ社のコンサートホールがあるが、今日のワイの目的地はそこではない。
ダンジョンライブバトルアリーナ。
ダンジョンライブ社が運営する対人戦の会場。
そこがワイ達の決戦の舞台だ。
ダンジョンのメインコンテンツは人対モンスターで、人対人はあまり人気がない。
その理由としては、武器の使用が禁止。
攻撃によって命を奪うことを禁止されていることから、モンスター戦のような緊張感がないことが不人気の理由であると、ネットに書き込みがあった。
だが、ワイがいる会場の様子はそんなネット上の意見など嘘に思えるようだった。
まだ対戦が始まっていないというのに、『わー!!!』っと、歓声が上がっていた。
血の気の多い奴多すぎだろ……。
そんな異常な程の注目の中心は……ワイだ。
オッサンと対戦ということはそこら辺で殴り合いかと思っていたが、会場で観客が見ている前で対戦しないといけなかった。
対人戦のルールで決まっていることらしい。
ダンジョンの運営を取り仕切るダンジョンライブ社の会場で、さらにダンジョンライブ社から審判を派遣してもらい執り行うという事だった。
ダンジョンには、武器の持ち込みと使用を法律で許可されている。
ただそれは、モンスターに対する限りであり、人への使用は厳格に禁止されていた。
殺傷を絶対に禁止するからである。
ダンジョンへの武器の持ち込みに関する法案について当時の国会でも議題に上がっていたらしい。
野党から『人へ使われたらどうするのか』という反対意見が上がったが、そこは法律で厳罰に処すと最終的には可決された。
そういう理由でダンジョン内で、人に対しての武器の使用は禁止されている。
さらに会場に観客を入れている理由として、衆人環視の下、正々堂々と素手で対戦する為だからである。
ただし、法律で決まっているのは人への武器の使用だけであり、衆人環視というのはダンジョンライブ社がチケット代金を稼ぐ口実だとの批判もある。
会場は満員であり、ダンジョンライブ社は大儲けだろうが、1000兆円企業からしたら何十億、何百億稼いだところで雀の涙程度なんだろうか……。
ワイの控室。
ダンジョンキングダムの3人、綾瀬さん、海藤姉弟が応援に来てくれていた。
「剛力さん……怪我だけはしないで下さいね……剛力さんに何かあったら私……」
「ふ~ん、アンタがあのレジェンドと戦うとはねぇ……それにこの観客数……って、見直してなんかないわよ!!!」
「アニキ、ファイトっす!!!」
「ゴウリキ君、こういう事態になって申し訳ない……せめて過去の遺物に引導を渡してやってほしい……」
「ゴウリキさん……」
「ワイ君、さっさと終わらせて又デートに行こ~ね!」
皆から応援コメントを貰う。
嬉しいが、心配、尊敬、期待、罪悪感といった感情のフルコースを目の当たりにし、受け止めきれない自分もいる。
ベティーナさんの発言に「又? デート?」って、綾瀬さんの眉間に皺が寄っているが、見なかったことにしよう……。
色々な感情が胸に渦巻いているが、ワイは決意を口にする。
「行ってきます。僕にも譲れない想いがあるので」
ワイは控室を後にし、対戦のリングに向かう。
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