第9話ニート、慕われる

 ワイは、少し後悔していた。

 収益を止められ、生活が出来なくなるかもしれないことに。

 そんなに悪い話じゃなかったと思う。

 でも、あの女の、力で何でも言いなりにさせようとする態度が気に食わなかった。


 気にはなるが、収益は止められておらず、本日も配信をしていこうと思う。

 収益停止にビビりながらも。


 目の前には、鋭い牙と角を生やしたモンスター、オーガがいた。

 正に鬼って感じだな。凄い形相だ。

 でも、不思議なことにあまり怖くない。


「オオアアアアアアアアアアアアア」


 ドスン、ドスン、と足音を立ててこちらに近づいてくる。

 棍棒を振り回してくるが全然当たらない。

 遅すぎる。そして戦い方が雑過ぎる。


 ワイは、以前、物理攻撃が効かなくて、ブレス吐きまくってくるモンスターと戦ったんだぞ。

 そんなの当たるわけないやろ。


 あっけなく倒してしまうと配信映えしないので、適当に魔法を当てて、足止めし、いいころ合いで一気に魔法をぶちかまそうと思う。


「サンダーボルト」


 痺れさせるだけのつもりだったのに、プシュウーーー、と音を立てて、モンスターは消滅してしまった……。


「あれ、やり過ぎた……?」


コメント欄


『草』


『草』


『草』


『草』


『草』


『草』


『ワイ氏、やり過ぎwww』


『圧倒的過ぎw』


『オーガ、瞬殺ってどんだけ……』


『相変わらずワイ氏ヤバすぎwwww』


 コメント欄は、驚愕に包まれていた。

 ワイ、そんなにヤバいことした……?

 普通だと思うけど……。






 配信が終わって、一休みすることにした。

 ダンジョンには、5の倍数のフロアに転移装置が配置されていて、入り口や、自分が行ったことのある5の倍数のフロアに瞬間移動することが出来る。

 いや、瞬間移動て……。便利すぎるだろ……。


 どう考えても、魔石の方が作るの簡単そうなんだが。

 なんで、転移装置の配置は済んでるのに、魔石の開発が遅れてるんだよ……。


 その他に5の倍数のフロアには、武具屋、道具屋、休憩所、各種食べ物屋、娯楽施設、ドロップアイテム換金所、アイドル達が歌い踊るライブステージがある。


 このフロアは、結界で守られていて、モンスターは入ってこれない。

 いや、何度も言うが便利すぎだろ……。

 なんなん、その技術力は……。

 早よ、魔石作れば良かったやん……。


 フロアを歩いていると、他の配信者から声を掛けられる。

 もう、ワイは150万人登録者の有名人ってことなのか……。

 コラボして下さいとか、握手して下さいとか、ワイはコミュ症なんや……。

 ほっといてくれ……。


 コラボの誘いを丁重にお断りして、お腹がすいてきたのでお昼にすることにした。

 食べ物屋には、庶民的な店や高級店が揃っている。

 ワイは、庶民的なお店で素うどんをいただこうと思う。

 一杯180円でリーズナブルだし。


 食堂のおばちゃんから、「アンタ、もうちょっと栄養のある物食べなさいよ、ヒョロヒョロじゃないの……。おばちゃん心配になっちゃうじゃないの」


 生活の心配からか、あまり高価な物は食べる気にはなれない……。

 おばちゃん、心配させてしまったか……。

 悪いことしたな……。

ワイ、弱そうやし……。


「おい、おばちゃん? 失礼じゃないの」


 いや、今のはワイじゃないぞ。

 その声の主に目を向けてみると、イカつい男が立っていた。

 髪は金髪で逆立っていて、目つきは鋭く、ピアスが鼻、口、耳と大量に付いていた。

 耳に至っては、数が多すぎて、耳というより、最早ピアスだった。

 おばちゃんは、男の容姿と振る舞いに怯えていた。


 ワイは、男を制止する。


「ちょっと、ちょっと! おばちゃんは、ワイ、いや僕のことを心配してくれて言ってるんだし、言い過ぎなのでは……?」


 ヤバい……。

 言い過ぎたのでは……。

 学生時代に出会っていたら、即ボコられてただろうなんて思っていたら、以外な反応が返ってきた。


「申し訳ないッス……」


 男はシュンとしていた。

 以外に気が弱いのかな……。


 おばちゃんにお詫びして、2人で店を後にする。


 男の名前は、海藤快斗というらしい。


「ワイさん、いや、剛力さんのファンです」


 なんて言ってきたが、ワイのファンなんて本当にいるのか……?


「さっきは申し訳なかったッス!」


「いやいや、ワイ、いや、僕のことを気にして言ってくれたんだし、全然気にしてないよ」


「ありがとうございます。流石ッス! お心が広い!」


 学生時代には、こんな熱い男に慕われることなんてなかったのに、どういう状況の変化なのか完全についていけてなかった……。


 ブンブンと手を振る彼にお別れして、スマホを確認してみると、オーガ戦での経験値によりレベルアップしている通知がきていた。


レベル35

HP322

MP360

攻撃力265

防御力272

攻撃魔力358

回復魔力375

魔法防御246

命中228

回避237

運1001


魔法


  ファイアボール

  ヒール

ブリザード

  キュア

ウインドカッター

サンダーボルト

   ホーリーアロー


ウォータープレッシャーを覚えた

  ロッククラッシュを覚えた   

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