第8話ダンジョンライブ運営統括責任者島本麗香

 ダンジョンライブ社本部は、緊迫していた。


「なんだ……? あのモンスターは……? 物理攻撃が効かないなんて……」


「誰か現場に行ってなんとかしてこい!」


「無理です! 魔石の試作品がまだ間に合っていません! 試験段階で暴発が続いています! それに今からでは間に合いません……」


「クソが……。死人なんて出たら責任問題だぞ……」


(なんてことなの……。折角ここまで上手くいっていたのに……。このままじゃ、経営陣全員の首が飛ぶわよ。いえ、それだけじゃなく、下手したら株価暴落で倒産するわよ……)


「見てください。男性が助けに入るみたいですよ」


「なんだ~……? あの弱そうな奴は? 死にに行くようなもんだぞ……」


「モンスターが次々に倒されています!」


「なんだと! 信じられん……」


「マジかよ……。助かったのか……」


(……九死に一生を得たわね……。あの少年に感謝しなくては……)


 島本麗香は、地面にへたり込んだ。


「統括? 大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫よ……。それにしても何者なのかしら……? あの子は?」


「確かに。只者じゃないですね」






 島本麗香は、危機を救ってくれた少年にメッセージを送った。

 直接会って謝罪を受け入れてもらおうとしたが、断られた。

 それでも、何度もお願いし受け入れてくれる運びとなった。


 彼の自宅に部下を連れて訪問し、自室に招き入れてもらった。

 彼女は、ダンジョンライブ社の不手際を謝罪した

 彼に名刺を渡すと、何故か表情が曇った。


(それにしても、冴えない子ね。この子が本当にあの配信に出てた子なの……?)


 部下がお詫びの品【魔石】を渡そうとすると、彼の感情が見る見るうちに怒りに包まれていく。


(お金で解決しようとしていると誤解されたのかしらね。まあ、あながち間違いじゃないけど。それにしても、急に空気が変わったわね。あんなに自身がない雰囲気だったのに、凄いプレッシャーね……。配信の時も、冴えない感じが画面から伝わってきてたのに、急に鬼気迫る雰囲気に変わっていたし。急にスイッチが入るタイプなのかしら)


 島本麗香は、彼に【魔石】を譲ること、そしてダンジョンライブ公式チャンネルで、それを世界初、使用してほしいとお願いした。

 だが、彼は首を縦に振らなかった。


(おかしいわね……? 悪い話じゃないのだけど。まだ子供という事かしら。それにしても、彼にはお金の匂いがするわね。私の直感が告げてる。彼がこれからのダンジョン攻略界の中心になる。私の野心の為に利用させてもらおうかしら)


 島本麗香は、『返事は後日で良い』と告げ、剛力家を後にした。


(怒りに震えてたわね。可愛い。ちょっと悪いことしたかしら。頑張ってね、私の為に……)


 彼女が妄想して不気味な笑みを浮かべているのを、2人の部下は心配そうに見ていた……。

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