第7話ダンジョンライブ社謝罪

 ダンジョンライブ公式から、謝罪文と謝罪動画が上がった。

 なんでも、先日の物理耐性持ちモンスターシャドウが大量発生した件だ。

 突如発生したダンジョンには未知なことも沢山あり、ダンジョンライブ公式もわか らないことが沢山あるとのことだったが、物理耐性持ちモンスターが発生することは想定していたという。


 物理耐性持ちモンスターには、ダンジョンライブ公式が開発した課金アイテム【魔石】を使用して倒すことを想定していたとのこと。

 だが、その開発が遅れたまま、ダンジョン攻略が始まってしまったとのことだ。


 死人も出ておらず、ダンジョンライブ社の利益は上がり続けており、そのままダンジョン攻略を続けている現状を放置していたらしい。


 アプリを開いてみると、ワイが先日綾瀬何某を助けた件で個別に謝罪をしたいとのメッセージが届いていた。


『お世話になっております。ダンジョンライブ運営島本と申します。先日は大変申し訳ございませんでした。弊社としても、物理耐性持ちモンスターの出現は当然想定していたのですが、あのような事態になってしまい、大変申し訳ございませんでした。つきましては、直接ご訪問させていただき謝罪させていただきたいのですが、ご都合はいかがでしょうか?』


 ワイの知らない内に大事になっとる……。

 各種SNSを確認してみると、ワイを褒め称える声、綾瀬何某が可哀そう、ダンジョンライブ運営を非難する書き込みが沢山あった。


『お疲れ様です。謝罪とか大丈夫ですので、本当に。お気になさらず』


送信っと。


『そうおっしゃらずに。ご迷惑おかけしたのですから』


 即レス。

 よっぽど悪いと思っているのか。


 その後も手を変え品を変え断ろうとしたが、全然折れてくれず、渋々謝罪を受け入れることにした。






 一応、有名配信者になったわけで、外で会うわけにもいかず、自宅に招き入れることになった。


「お世話になっております。ダンジョンライブ運営の島本と申します。この度は申し訳ございませんでした。」


 彼女から、謝罪され名刺を渡された。

 そこには、ダンジョンライブ社専務取締役、ダンジョンライブ運営統括責任者と書かれてあった。


 ワイとほとんど歳変わらない感じだし、凄いな……。

 ちょっと前までニートだった自分が惨めになる。


 彼女の容姿は、色白美人で茶髪のロングヘアー。細身だが、出るところは出ている。

 胸元が見えるスーツを身に纏っていて、目のやり場に困る……。


「それで、お詫びの品といたしまして……」


 彼女の後ろに巨体のハゲ頭2人が立っている。

 2人はアタッシュケースを抱えており、目の前のテーブルにドスっとそれを置いた。


 中身は、お菓子の下に金色の何かがってヤツか……? 悪代官から何かを渡され、『お主も悪よのう』ってヤツか……?


 許すつもりでいたが、金で解決しようとする姿勢に腹が立った。


「ふざけんな……こっちは死にかけたんだ! 金で解決しようってか……」


「いえいえ、よくご確認下さい、中身を」


 と、彼女はアタッシュケースの蓋を開ける。

 中には、怪しい光を放つ石が入っていた。


「魔石です。物理耐性持ちのモンスターを倒すための。開発が遅れておりましたが、この度、試作品が完成しまして」


「…………?」


 話がよくわからないな……? どういうことだ……?


「こちらを弊社の公式チャンネルで使ってほしいのです。報酬は勿論お支払いします。その様子を、そちらのチャンネルでミラー配信してもいいですし。いかがでしょうか?」


「ワイ、いや、僕にそちらのチャンネルの出演者になってほしいと? それで内側に取り込んで、事態を収めようと……?」


「いえいえ、ゲスト出演でよろしいですよ。世界初、魔石をダンジョンで使う。とても注目を集めると思いますよ。登録者増にも繋がりますし、広告収益も見込めますよ」


「生憎、こちらは目立つことが嫌いでこれ以上登録者は増えなくてもいいです。……

断ると言ったら?」


「……んーっ……」


彼女は考える素振りで、


「そちらに広告収益をお支払いしているのはどこですか? 止めることもできるのですよ。それに、あの力は何ですか? 魔法? チート行為ではないのですか? 規約に基づき、ダンジョンへの立ち入りを禁止することも出来ますよ」


 折角収入が得られそうなのにそれは困る……。

 それに、チート? そうではないことは言えるが、上手く説明出来ない。


「……卑怯な……」


「今すぐ結論を出さなくてもいいですよ。良いお返事期待してます」


 ワイは、彼女らが帰って行くのを拳を握りしめながら見送った。

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