第6話姉上

 ワイは姉上のことが嫌いだ。

 承認欲求の塊。

 目立ちたくないワイとは正反対だ。


 各種SNSをやっているが、どれもフォロワー数十人程度。

 いつも『フォロワーほしーい』って言ってる。

 以前、ワイがポロっと『そんなにフォロワーほしいなら、ダンジョン攻略やれば?』なんて言ってみたが、『ダンジョンなんてきついし、危険だし、汚いでしょ? そんなとこいくわけないでしょ』とのこと。


 ダンジョン攻略が人気のコンテンツになってから、SNSの話題はそちらの話題で持ち切りだ。

 芸能人でもない何の実績のない素人が知名度を手に入れるためには、ダンジョン配信者になった方が近道だ。


「アンタが有名配信者だなんてね~。世も末だわ。あ、そうだ! 今度一緒に写真撮ってよ、ダンジョンの入口で。あ、中には入らないからね、危険だから。私の綺麗な顔に傷がついちゃうじゃないの。フォロワー増えるかな~、夢が膨らむ」


 以前は、ニート、ニートってバカにしてたのに有名になった途端手の平返しかよ……。

 ムカつくな……


「……るかよ……」


「は? なんか言った?」


「誰がお前なんかと写真撮るかよ! ふざけんな! いつもバカにしてたくせに!

こっちが有名になった途端手の平返しかよ……。」


「な……。実の姉に向かってなんて口の利き方を……」


「こっちは、リスク取ってやってるんだ。何の努力もしない、リスクも払いたくない、そんな奴の力になりたいと思うか?」


「……………………」


 ちょっと言い過ぎたか。

 実の家族だし、かわいそうってのもあるが、言うべきことは言わないといけない。


「覚えてなさい! この借りは必ず返すわよ!」


 いや、悪役三下キャラの捨て台詞か……。

 姉上は、自分の部屋に帰っていった。


 確かに腹は立ったが、まあ、こんなこともあるかと思った。

 有名になったら、急に周りは手の平返し。

 数字を持っている者は優秀、そうでないものはクズ。


 確かに努力してフォロワーを獲得することは素晴らしいことだ。

 でも、努力しても結果がでない人たちが多数いて、その人達を簡単にクズ認定するなんてワイには出来ない。


 ワイがフォロワー獲得できたのは完全に運だ。

 まだ日の目を浴びていない、努力しているダンジョン配信者達が報われる日がきてほしいと思う。


 そういや、収益化申請しないといけないんだった。

 フォロワーが沢山いて、過去配信のアーカイブがいくら再生されても現在無収入の状態だ。

 条件は、登録者1000人以上かつ、総再生時間4000時間以上だ。

 登録者は、500人以上に今後緩和されていくみたいだ。


 どちらの条件も余裕でクリアしていた。

 収益化申請は、1時間も掛からずに通った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る