第5話ニート、有名配信者になる

 久方振りの帰宅。

 相変わらず登録者0、視聴者数0。

 家に帰るのが気まずい。

 なにやらリビングが騒がしい。


「お父さん、お母さん、あいつ凄いことになってるんだって!」


「はあ……」


 ワイのこと言ってるぽいな……。

 ドア開けたくない……。

 でも、このまま聞き耳を立て続けるわけにもいかないから、リビングに入ることにする。


「ただいま……」


「あ、帰ってきた! アンタ、大変なことになってるわよ! ダンガの四つ葉のクローバーのチャンネルに出てたでしょ! ダンライの公式チャンネルにも出てたし」


 何か、知らない単語いっぱい言われた。

 ダンライは、ダンジョンライブの略で、ダンジョン攻略の運営だ。

 公式チャンネル登録者は1億人以上いる。

 公式チャンネルで攻略情報配信していたり、配信アプリもダンライが作り運営している。

 それだけは知っているが、他の単語は知らない。


「ダンガ? 四つ葉のクローバー?」


「綾瀬よつば! ダンジョンガールズの! 登録者178万人の!」


 昼間助けた女性が綾瀬何某という人だったのか……。

 でも、カメラマンらしき人は近くにいたけど、気絶していたし……。

 ワイが映ってたってマジか……。


「綾瀬さん……の、カメラマン気絶してたけど……」


「気絶してたけど、偶然カメラは四つ葉のクローバーを映し続けていたのよ! それにダンライのドローンが飛んでたでしょ? 気づかなかったの?」


 1億人と、178万人のチャンネルに出てたって……。

 ドローン……? 飛んでたのか……? 必死すぎてそれどころじゃなかった。

 少なくても、初心者ステージでは飛んでなかったと思うけど……。

 目立つのが嫌いなワイには、悪い夢でも見てるみたいだ……。


「友達に、アレ、アンタの弟じゃないのって言われてどうしたらいいかわからないし……。アンタ、アプリ確認した?」


 疲れてて、それどころじゃなかった……。

 急いでスマホを確認する。

 ヤバい、ヤバい、ヤバい、何これ……?


当該配信の綾瀬よつばチャンネルコメント欄


『え、よつばちゃん囲まれてる……』


『おい、お前ら逃げるな! よつばちゃん助けろ!』


『お前が助けろ、カス!』


『今から行って間に合うわけないだろ……てか、誰でもいいので助けてくれよ!』


『え、モンスター一瞬で吹き飛んだんだけど……』


『マジ……』


『何だ……あのド陰キャは……』


『陰キャ言うな! よつばちゃん助けてくれたんだぞ』


『……確かに、救世主じゃね?』


『そうだ……救世主だ!』


 頭痛くなりそうだ。

 なんで、ワイが救世主扱いされてる……


当該配信のダンジョンライブ公式チャンネルコメント欄


『なんだ、あの霧状のモンスターは……。シャドウって表示されてるけど……』


『やばそうじゃね……。ほら、配信者達、逃げまどってるし……。これ、放送事故じゃね……?』


『何だ……? あのボサボサ頭……。ド陰キャって感じじゃん』


『何か、手の平から出してるよ……炎? 氷? 風? 雷』


『CG? 動画編集?』


『いや、生配信だって! それに、CGだとモンスター倒されてる理由説明できないでしょ! アプリでシャドウが倒されましたって表示がいっぱい出てるし。』


『じゃあ、何なんだ……。あいつは……』


『分からん……。ただ、只者じゃないってことだけはわかる』


 只者です……。只のニートです。

 なんで、こんなことになった……。


 自分のチャンネルをアプリで確認してみると、登録者100万人超えてた……。

 登録者増やすことが当初の目的だったけど、ここまで注目されると陰キャのワイに はどうしたらいいかわからない……。


 綾瀬何某を助けた時は、必死で撮影する余裕なかったけど、過去の初心者ステージの配信のアーカイブが数百万再生回っていた。


過去配信のコメント欄


『やば、ゴーレム切り裂いてるじゃん! カッコよすぎ!』


『氷像にしてるよ。どんなセンスだよ』


『こいつ、これからくるんじゃね?』


『いや、もうきてるって、遅えよ!』


 もう、ほっといて下さい……。

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