第4話ニート、初めて人助けする
そろそろ初心者ステージにも慣れてきたので中級者ステージに挑戦しようと思う。
人がいっぱいいるだろうし、コミュ症のワイには辛いが生活の為にはしょうがない。
進んでいくが、全然人の気配がしない。
おかしいな、全然配信者いないな。
と思っていたら、人の波がこちらに押し寄せてきた。
「助けてーーー!」
「逃げろ、逃げろー!」
「どうなってんだよーーー!」
「何なんだ……あれは……聞いてないぞ……」
何だ……。何が起こっている。
人の波が去っていくと、フロア全体が見渡せた。
霧状のモンスター、シャドウが大量発生していた。
「武器が効かねえ……あんなのどうしろって言うんだ……」
「なんだ、ブレスって……パーティーが壊滅しちまう」
地獄。フロアの光景を見てそう思った。
逃げていく人、腰を抜かして逃げ遅れる人。
皆、絶望を口にしている。
その中でも、ワイが目に付いたのは、フロアの中央、女性がシャドウに囲まれていた。
「あ、あ、あ、だ、だ、だ、誰か……助けて……」
女性は腰を抜かしている。女性を取り囲んでいるシャドウからブレスが吐き出されそうになっている。
女性は、涙を流し、観念するように目を閉じる。
「お父さん、お母さん、ごめんね……。人気が出てきて、実力があると勘違いしちゃった……。私、ここまでみたい……」
助けるべきか……。
でも、ワイは人に助けられたことはあっても、人を助けたことはない……。
足が震える。
なんて、言ってる場合か! 例え、現在絶賛ニートだとしても、そこまで腐ったおぼえはない!
「ファイアボール」
「ブリザード」
「ウインドカッター」
「サンダーボルト」
次々とシャドウが消滅する。彼女の周りの奴は全て片付けた。残りも全て片付ける。
「まだだ、MPがなくなっても打ち続ける!」
ワイは、シャドウから放たれるブレスをよけながら魔法を放ち続ける。
人生でこんなに恐怖に支配されたこともないが、口角は上がっている。
ワイ、興奮している……? そんな、バカな……ワイ、超絶ビビりやぞ。
何とか全滅させた。
女性は、不思議そうな顔でこちらを見ている。
「え……、私、助かった……?。アナタは……? 今、何を……」
女性は錯乱しているようだ。
こんな時どんな言葉をかけたらいいかわからない。生粋のコミュ症だから。
女性は少し落ち着くと、立ち上がりお礼を言ってきた。
「助けてくれてありがとうございます。もう、私、ダメかと……。申し遅れました、私、ダンガの綾瀬よつばと申します」
ダンガ? なんじゃそりゃ? 女性はアイドルのような衣装に身を包んでいた。
学生時代には見たこともない美人で、超絶小顔で、おめめパッチリ。
ワイとは完全に住む世界が違っているように見えた。
「……ワイ、いや、僕は剛力と申します……。ええと・・・・・・何て言うか、ええと……、アナタが困っていたから……助けた……というか……なんて言うか……」
コミュ症発症。
てか、家族以外の女性に話しかけられたの何年振りだ……。
「ワイ? 関西人なんですか?」
「……いや……、そういうわけじゃなくて、口癖というか、……何というか……」
「ぷっ……。面白い人ですね。あんなに強いのに。」
「……ワイ、いや、僕は全然面白くないですよ……」
「すみません、ご不快でしたか?」
「……いや、そういうわけじゃないですけど……」
何か気い使わせてるみたいだな……。
早くこの場から立ち去りたい……。
「良かったら、これから仲良くしてくれませんか? コラボとか?」
ワイと仲良くしたい? そんな人おんのか……。
宗教の勧誘とか、詐欺か……?
コラボ……? ワイと無縁の言葉やな……。理解できなすぎて、異世界とか、宇宙ぐらい離れてるわ……。ワイにとっては……。
「……いや、コラボとかは、ちょっと……。僕、ソロプレイヤーなので……」
何が、ソロプレイヤーだ! お前はただのぼっちだろ! って、心の中で自虐ツッコミしてみるも、悲しくなるだけだ。
「……ご飯の時間なので……。……これで失礼します……」
「え、もうちょっと話したいのに……。お礼もしたいし」
「……お礼とかいいので……。……それじゃ、今度こそ本当に失礼します。」
「あ、ちょっと……」
今日こそ自分のコミュ症を呪ったことはない。
ダンジョンの出口に向かう途中、振り返ると、彼女は悲しそうな顔をしていた。
レベル28
HP251
MP290
攻撃力192
防御力198
攻撃魔力263
回復魔力287
魔法防御187
命中175
回避182
運777
魔法
ファイアボール
ヒール
ブリザード
キュア
ウインドカッター
サンダーボルト
ホーリーアローを覚えた。
スマホを見ると、レベルアップの通知音が悲しく鳴っていた。
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