第2話ニート、ダンジョン初潜入

 ダンジョンの入口まで到着した。

 早速、中へっていう事にはならなかった。

 だって、足がめちゃめちゃ震えてるんだもん。

 足を少し中へ入れて、戻すってことを繰り返した。


「…………」


 何やってんだ……。このままじゃニートに逆戻りじゃないか……。

 恐怖心はあるものの、衣食住を失うわけにもいかず、このまま中に入っていく。


 内壁は、岩でできており、触ってみると固い。

 中は暗いのかと思っていたが、配信の為か、結構明るい。


 スマホを取り出し、配信アプリを起動させ、配信を開始する。

 当然だが、登録者はゼロだし、同接もゼロだ。

 始めたばかりだし、それはしょうがないが、家族は見ろよ!


「さあ、やってまいりましたよ、ダンジョン。冒険者達とモンスターの迫力あるバトルが繰り広げられてます、ドキドキしますね~って、誰もおらんやないか~い!」


 それもそのはず。ネットで調べた情報によると現在は中級者ステージの配信がメインとなっており、ワイがおる初心者ステージは現在、人の気配はしない。

 初心者ステージのモンスターは弱すぎて、配信に向いておらず人気がない。

 上級者ステージのモンスターはまだ倒せる配信者がほとんどおらず、こちらも人気がない。


 動画勢が、【モンスター倒し方 初心者】みたいな動画の撮影を、たまにしているみたいだが現在はその人たちもいない。

 ちなみにワイは、動画はやるつもりない。動画編集できないしね。

 生配信の方が手間はかからないし、リアルを伝えられるし、ワイに向いてると思った。


 ゆったりとした足取りで辺りを見回す。不気味だな~、って当たり前か。ダンジョンなんだし。


 ダンジョンにかなり慣れてきたと思う。誰もいないし、ワイの部屋にそっくりやなって、心の中で呟く。自虐やん……。


「さあ、モンスターさん、じゃんじゃん出てきちゃって下さい」


 完全に安心しきっていた。初心忘るべからずという言葉など完全に忘れていた。


 と、そこで人?の気配。 だが、それはひとではなく、尖った鼻に耳、緑の肌、邪悪な目つきをした小人型のモンスター、ゴブリンだった。


 RPGではザコ敵として登場するが、実際に相対するとめちゃくちゃ怖い。

 足は震えているが、何とか配信しないと。今は誰も見ていないがアーカイブに残るし。

 だけど、モンスターとどう戦ったらいいかわからない。上手く配信するやり方もわからない。


「さあ、ゴブリンが目の前にいますよ。どう料理してやりましょうかね」


震える声で何とか実況する。


 そんなワイの恐怖を感じ取ったのか、ゴブリンは完全にワイのことを舐めた態度でいて、襲ってくる様子はない。


 チャンスだ! 何か攻略の糸口が見つかるかもしれない。スマホでワイと奴のステータスを調べる。


ワイ氏(剛力剛毅)


レベル1

HP1

MP1

攻撃力1

防御力1

攻撃魔力1

回復魔力1

魔法防御1

命中1

回避1

運99


ゴブリン


レベル5


HP18

攻撃力8

防御力6

命中9

回避2

運1




「……………………」


 ワイ、めっちゃザコやん! 詰んだ。はい、詰んだ。終わり。てか、一発食らったら終わりって……。


 ゴブリンがワイ目掛けて棍棒を振り回してくる。回避1のワイと、命中9のゴブリンなら本来命中してるはずだが、奴が舐めプしているため、全然当たらない。


 でもこのままだといずれ必ず命中する。ワイは走って逃げる。それを追ってくるゴブリン。

  もう終わったと思ったその時、勢いよく走ってくるゴブリンが、ワイの足に躓いて気絶する。

 気絶している奴の棍棒を奪ってタコ殴りした。


 勝利。


「見てください、皆さん。勝利しましたよ。」


 初めての配信は、誰も見てないし、とんでもないかっこ悪かった。


 あ、レベル上がった。


ワイ氏(剛力剛毅)


レベル2

HP10

MP15

攻撃力6

防御力5

攻撃魔力19

回復魔力20

魔法防御17

命中7

回避9

運178


ファイアボールを覚えた

ヒールを覚えた。


 ん、何か、覚えた。


 レベルが上がって、多少嬉しいというのもあるが、初配信で死ななくてよかったというのが率直なワイの感想だ。

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