第9話 にゃん歴979年9月③
ギルモア大佐から、全員のプロフィールの紹介が終わり、任務の説明前に事前情報と知っとくべきと、ヘイスティング曹長より各国の簡単な説明と注意するべき人物や組織について簡単な説明が行われた。
まずは、最も注意するべき国として挙げられたのは、にゃんこ帝国の西側に位置するわんこ合衆国についてのおさらいがあった。400年前にアニマル大国内で起きた後継者争いを端とする内戦で分裂してできた国である。にゃんこ帝国がアニマル大国で使われていたにゃん暦を使っているが、合衆国は分離独立した元年とするワン歴を使用しており、にゃん歴979年はワン歴329年である。帝国の皇帝がファミリーネームがムギであるのに対して、合衆国大統領が世襲制ではないとしている為、大統領はミドルネームにムギを使用している。このムギという名前も、未だに続く戦争の原因の一つである。また国力の差はほとんどなく、技術力に関しては、空の合衆国、陸の帝国と言われている。先の大戦から停戦合意がされて早7年が過ぎようとしている今、また、合衆国が新兵器をひっさげ攻めて来ると噂もある。相手の軍隊が一番危険視するものであるのだが、現状では相手の情報局の密偵に特に気を付けないといけない。
また、出資者がいまだ不明であるが近年老舗のSIBA社を抜いて各方面に対して力をつけているCIWAWA社の製品が、帝国の4大公爵家が出資してできている総合企業であるミックス社(製品群は多岐にわたりおむつから動力銃、はては列車まで作っている)と比較しても遜色がないレベルであり注意が必要とのことであった。
次は、レイ家とも国境が接しているうさみみ王国であるが、かの王国は帝国の北西に位置し大部分をヒマラヤン山脈で分かたれているため、ある程度の規模の人間が通行できる場所は2か所しかない。友好国ではないが、国交は開いており人の行き来はそれなりにある。キナコ王家が統治しており、国力は大きくないが帝国、合衆国ともに国境を接しているがどちらにも絶妙な外交バランスで独立を保っている。王国経由で入ってくる共和国の密偵は注意しないといけないが、王国には裏社会を牛耳る任侠者なる集団がおり、その根は全世界に伸びており王家の暗部ではないかと目されている。
北に位置するポッポ神聖国は、国土は大きくないが、世界的な宗教である「はと十字教会」の総本山があり、ポッポ法王が治めている国である。宗教国なので中立を表明している。また民間組織である冒険者ギルドの本部もあり教会騎士団と冒険者が治安維持に努めており侮れない勢力でもある。また、教会内部も黒い噂が絶えず油断できない国でもあるらしい。
次は東のネズミー共和国があり、現国家元首はミキー大統領である。わんこ合衆国と同じ民主主義の国であるため合衆国と民主同盟をくみ、帝国ににらみを利かせている。国力は帝国の3分の2程度で独力では帝国の脅威ではない。合衆国と一応同盟は結んでいるが、アニマル王国時代、共和国は大国と仲が悪くそのころの確執がいまだに尾を引いている。本音は帝国と合衆国が共倒れすることを狙っているため共和国経由で合衆国の情報が流れてくることもあるらしい。そこには、老舗の民間軍事会社のウォール社の影がちらついているとか。また、かの会社は裏社会のマフィアを通して表の政治にも口出ししており、海側では海賊の手助けもしているらしい。帝国としては共和国の軍隊よりウォール社への対処のほうが、頭が痛い問題とのこと。共和国はレイ家からも遠いため僕は基本情報もあやふやだった為覚えるべき項目が多そうである。
北東は、はむす連合国であり小国が集まってできている。連合は表向き民主同盟側の陣営であるが、裏で帝国や教会とつながっている国もある。その為連合と言えども仲がいいわけではなく、どの国も盟主の座を狙っている。大ぴらにできない新兵器を試す場として、この地域はいろいろな勢力の代理戦争の地でもあり小競り合いが絶えない場所である。
ちなみに、帝国の南側は海に接しており、他大陸との交易を行っており貿易が盛んである。僕たちが乗ってきた空飛ぶ輸送機の存在が一般化すれば貿易の主力が海から空に変わるかもしれない為、利権を逃さない為空への投資も盛んである。
大佐と曹長の話でいい時間となったため、009部隊は昼休憩となった。僕は隊員と各国の情報で一杯一杯であり、整理する時間がもらえて正直助かったのである。普通の学生であれば、入学式の後は各クラスに分かれて今後の学生生活についての注意事項を聞いているはずなのだが、僕の学園生活としての知識はとても平和的なものとは言えなかったのである。
昼食は、本来食堂でたべるものであるが部隊の性質上そこが使えない為顔合わせをしている兵舎に運ばれてきた。昼食時に気を利かせたのかアルベルト軍曹が話を切り出したのであった。
「大佐。ウィリアム少尉は、学園入学前でもあるにもかかわらず特務部隊の隊長に任命されるほどの試験成績を収めたという話でしたが、どのような試験であったがおききしてもよろしいでしょうか?」
「私も、それが聞きたいです。私の場合、副隊長を拝命しましたがこれといった試験を受けた記憶がございません。」
ソフィア少尉は、僕が隊長になっていることに納得いっていないのか質問をかぶせてきたのである。話をしてもいいのかわからずギルモア大佐のほうを向くと、
「ふむ。この面子なら問題ないだろう。私から話してもいいだろうがいい機会だ。ウィリアム少尉、話をする許可を出す。」
「了解です。どこら話せばよろしいのでしょうか?」
「実技試験を受けるために基地に来た辺りから話せばいいだろう。」
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