第7話 にゃん歴979年9月①
学園の入り口で拉致られたかの如く軍の輸送機に押し込まれて首都近郊の基地に移動した後、軍の最新鋭の平気だと言われる空を移動する乗り物に詰め込まれた。朝迎えにきてくれた人は、僕を新兵器に詰め込んだ後、引継ぎは完了したと言って去っていった。
首都近郊の基地から空の旅を行い向かった先は、国境警備のための基地であり、到着した時には次の日の朝になっていた。基地に到着してすぐに指令室に出頭命令が出た。その指令室にて栄えある学園の入学式ならぬ、入隊と部隊の任命式が行われたのである。
入室した時には二人の立派な軍服を着た人がおり、基地の総司令官と思いしきひとより、ありがたい祝辞をいただいた。
「ようこそ、合衆国との最前線である西側国境警備基地へ。試験を優秀な成績で合格した、ウィリアム=レイ少尉。あそうそう、君を本日付で少尉とし、特殊任務部隊009小隊の小隊長に任命する。前任者は部隊丸ごと全滅しているので引継ぎ等は、後で手配する。もちろん隊員も全員新規メンバーだ。詳しいことはこのものに聞くといい。」
もちろん拒否権なんてあるわけじゃないし、とても短い入学の挨拶に文句を言うこともできないだろうが学生に小隊長を任せるってどういうことだと疑問に思った。が、とりあえず復唱しなければ。
「はっ!ウィリアム=レイは少尉として009小隊小隊長の任謹んでお受けします。」
その言葉に満足げにうなずいた二人のうち今度は隣の人から、
「私の名はギルモア。階級は大佐で君たちが所属している特殊任務部隊を指揮しているものだ。特殊任務部隊は現在001からウィリアム少尉に任せることになる009まで9つの部隊に分けられていて、それぞれの部隊で役割が違う。では、少尉ついてこい。隊員との顔合わせを行う。」
と言って部屋を出ていく人の後に遅れないように慌てて追いかけた。部屋を出たところでギルモア大佐はまた話しをしてくれた。
「まずは、特殊任務部隊の成り立ちから立ち位置について軽く話していこう。特殊任務部隊は軍内では部隊全体をさすときは『特務部隊』と呼ばれている。各部隊ごとに呼ばれることはほとんどなく、大体は対外的な名前で呼ばれている。空戦特化の002部隊が帝国空戦部隊や、超人部隊と呼ばれている004部隊とかだな。」
大佐が話してくれた部隊の役割は、001部隊は特務部隊の頭脳として全体の作戦立案を。002部隊は空戦に特化している。003部隊は、001部隊から分かれる形で立ち上げられた情報分析隊。004部隊は、特務部隊の主な武力任務や超人が属している。超人とは人知をはるかに超えた能力を持っている人達で、現在の体系にない魔法や武術を知っていたり、噂によると別の人間の記憶を保有していたりもするそうだ。005部隊は要人の警護や護衛を得意としている。006部隊は、特務部隊の裏方的存在で、現地でのセーフハウスの用意や任務で必要な物資の調達などを行う商会に擬態している。007部隊は、暗部を統括しており、各地での情報収集を任務としている。008部隊は、海戦に特化しており、海兵隊などの部隊も有している。そして、僕が隊長となる009部隊は初動で活動する部隊で不測の事態にも臨機応変に対応することが求められる部隊で、任務も多岐にわたるとか。
特務部隊の成り立ちは、先の合衆国との大戦にさかのぼる。当時は実験部隊として009部隊のみ先行して立ち上げられていたのだが、大戦がはじまり001から004部隊までが立ち上がり、戦後005部隊から008部隊までが整備されたのだ。」
「特務部隊自体、現在の形になっているのはここ数年のことなのですね。」
「そうだ。そして、重要なことだが部隊は秘匿性が高いことから作戦に関するあらゆることは公式には残らない。ウィリアム少尉は公的には学園に通っており、この場にはいないこととなっている。なので、戦死した場合は偽名で処理されて、学園在学中であれば首都の列車事故に巻き込まれたとなるだろう。実際に事故も起きるだろうからな。」
「なんとも怖い話ですね。」
「ああ。それで、009部隊なんだが実は、先の大戦の終戦時にとある任務で全滅しており、それ以後後回しになっていてな。今回久々に部隊が結成される。前任についての資料は公的には残されていないため、後で君に支給される端末に入れておく。閲覧するためには君の身体情報が必要なうえに一度見た後消去されるので注意すること。もちろんメモを取ることも、内容を第3者に伝えることも禁止されている。」
「了解であります。」
「きっと、驚くだろうから先に伝えておく。特務部隊自体の立案は私と君の叔父であるカール=レイだ。カールは残念なことに合衆国による不意打ちの空襲で戦死している。そして、前隊長も君と縁のあるサイモン=レイだ。作戦行動中の戦死であるから、君たちが受け取ったであろう戦死報告とは内容が異なっている。もし家族で会話することがあるなら気を付けることだ。」
大佐の話は、衝撃過ぎて僕は何を言われているかわからなかった。かろうじてできた返事は、「了解しました。」であった。
「やはり、血筋なのか。何かの因縁かは分からないが君は009部隊に任命された。これから厳しい任務が待っているだろうが叔父さんたちみたいに死ぬんじゃないぞ。あと、偽装の為でもあるが、任務の合間にしっかり学園のカリキュラムもこなしてもらうので、そのつもりで。勉強で赤点だけは取るなよ。」
大佐との話もひと段落したところでちょうど部隊の兵舎の前にたどり着いた。
「話もちょうどいい区切りだし、これから君の部隊に所属する隊員を紹介しよう。全員年上でやりにくいかもしれんがウィリアム少尉の適正は軍が厳格に審査して認めたものだ。臆することなく頑張ってくれたまえ。」
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