第8話 2人で登校

日の出近くまで、セックスをしていた俺たちだが、今は朝食を食べていた。

トーストにベーコン、スクランブルエッグにサラダ、そしてコーンスープ。

非常に健康的な朝食だ。

これも美緒が作ってくれた。


「ダーリンの制服のサイズもぴったりだね」

「ああ、ありがとうな」

「このくらい平気だよ。それでお願いだけど」

「何?」

「昨日まで着ていた制服貰っても良い?」

「…貰う?」

「うん!!ダーリンの匂いが付いた制服を貰いたいの!!」

「ま、まあこの制服をくれたんだ。別に良いよ」

「やった!!あの制服パジャマにする!!」


美緒って元気だなぁ…。

学校に居る時はあまりおしゃべりなイメージ無いのに。


「私の本当の姿は、ダーリンだけ見てくれればいいの。おしゃべりな私、家事が好きな私、ダーリンの事が好きな私、そして吸血鬼な私。私の事を知ってる人なんてダーリンだけで良いの」

「美緒って凄いな」

「えっ?」

「そんな好きなものをはっきり好きって言えるのは美徳だぞ。尊敬するわ。俺には勿体ないくらいだ」


本当に美緒の相手が俺で良いのか。

そんな事を思ってしまう。


「ダーリンしかいないよ。私の相手なんて。私の身も心もダーリンのもの。だからダーリンも私に頂戴」

「俺から渡せるものなんて何にも無いぞ」

「ダーリンさえ貰えれば良いの」

「そんなんで良いのか?」

「そんなんじゃないよ。私からしたらこの世にそれ以上のものは無いから」

「それは凄いな」

「そうでしょ。ダーリンは私にとってそんな存在なの」

「そっか」

「うん!!」


美緒の印象が1日で変わった。

意外にこの子は繊細なのだろう。

吸血鬼で、他の女の子と喋ったら彼女自身の身体を自らの手で傷つけ、その痛みを俺に与えてくる。

そんな女の子だ。


「あっ、ダーリン」

「何だ?」

「朝昼夜、ダーリンの血が欲しいの」

「それで?」

「朝は学校に行く前に、昼は、ご飯食べた後、夜は寝る前に欲しいな」

「朝と夜は良いけど、昼ってどうするんだ?」

「一緒にお弁当食べよ。そして食後のデザートに欲しい」

「そういう事ね」


朝食を済ませ、学校に行く準備をする。

とは言っても、教科書類は、全て学校に置いてきている。


「ダーリン」

「んー?」

「学校で私以外の女の子と話したら許さないから♡」

「安心しろ。仲の良い女子なんていないから」

「本当に?」

「本当だ。同じクラスなら知ってるだろ」

「それなら良いけど」


学校に向かう時間となり、家を出る。

その時、突然首筋が痛む。


「ぷはっ♡」

「吸う時は言えよ」

「いろんなダーリンを見たいから」

「全く…。ほら遅刻するぞ」

「うんっ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


家を出て、学校に向かうのだが、美緒は俺の腕に抱き着く。


「暑くないのか…?」

「暖かいよ?」

「あっそう」


5月も下旬。

春というには、少し暑い時期だ。

これからもっと暑くなるとなると億劫だな。


「そういえば、もうじき中間テストだね」

「確かになぁ。美緒って頭良いよな?」

「普通だよ?」

「4月のテスト順位は?」

「1位」

「頭良いよな?」

「普通だよ?」


…というか美緒は俺の思考が分かるらしいがその逆はできないのか?

美緒が今何を考えているのか知る事が出来れば、それは完全犯罪級のカンニングが出来るはずだ!!


「ダーリン、それは無理だよ」

「そうですよねー」

「あくまでダーリンは私の眷属。私の従者なの。従者がご主人様の頭を覗くって無理な話だよ」

「なるほどな」


くそっ、これじゃあカンニングは出来ないじゃないか!!


「それでダーリンはこの前のテスト何位だったの?」

「30位」

「素敵!!」

「何が?ってかどこが?」


美緒の感性は俺には分からん。


「ダーリンは別に何か秀でてる必要はないのです」

「というと?」

「ダーリンが目立ってしまえば、他の女どもがダーリンに近づく恐れがあるのは分かるよね?」

「分からないけど、続けて」

「そしてあわよくばダーリンを狙う人が現れかねないのです!!」


美緒は自身満々に考えを告げたようだ。

俺には、最初から最後まで理解できなかったが、それは置いておこう。

というか、その理論で言ったら頭いい奴全員彼氏彼女いることになるぞ。

…そういえば神門は、4月のテスト2位って言ってたな。

あいつ彼女居るな…。

ってことは、美緒の考えも案外馬鹿にできないのか。


「あっ、学校見えて来たね」

「そうだな」


学校が近くなり、白夜校生がちらほら見えてきた。

人前でこんな状態を見せるのは恥ずかしいと思い、美緒から離れようとする。


「…美緒?」

「何をしているのかなダーリン?」


美緒の声が低くなった気がする。

何だろうこの寒気。


「いや、ほらもう人が多くなってきたから」

「だから?」

「えぇ」

「だから何?」

「いや、恥ずかしいじゃん」

「それが理由?」

「うん」

「見られたらまずい人とか居るの?」

「いないけど」

「じゃあ問題ないじゃん」

「は、はい」


結局このまま校舎に入る事となった。

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