第2話 吸血鬼と眷属
俺は、今何を言われているんだ…。
夕日に照らされている俺たちだが、何か聞き馴染みの無い言葉を聞いた気がする。
「返事欲しいんだけど…」
「あっ、えっと…」
返事ね…
返事…
何の!?
「ごめん、もう一度言ってくれない?」
「えぇ…恥ずかしいんだけど」
「ごめんね」
白神美緒は、深呼吸をする。
「貴方の血肉をください」
うん。
聞き間違いじゃなかった。
何だろ、カニバリズムかな。
「えっと…。はい?」
「もうっ!!私は、黒神の血肉が欲しいの!!」
「何で俺は怒られているんだ!?」
分からない。
俺に何が起きているのか理解が追い付かない!!。
「あの…もう少し詳しくお教え願えないでしょうか?」
「仕方ない」
夕暮れの放課後。
屋上にて白神さんから事情を聞くこととなった。
「私って人間じゃないの」
「…」
これはあれか、中二病ってやつか。
完全把握。
「今、こいつ中二病だって思ったでしょ」
「っ!?」
「いや、今のは貴方が分かりやすいだけだから。まあ話を続けるけど、私は吸血鬼と人間のハーフなの」
「…?」
前言撤回。
何にも把握できてないわ。
「お母さんが吸血鬼でお父さんが人間なの」
「へぇー」
「信じてないでしょ?」
「そりゃあな」
「じゃあどうしたら信じてくれる?」
どうもこうも無いだろ…。
なんか面倒くさい話になって来たな。
ここは適当に…。
「俺の血吸ってみろ」
「…良いの?」
「ああ、存分に吸え。何だったら眷属にしても良いぞ」
「本当!?やった!!」
あれ?
なんかおかしな流れになってる気がする。
「じゃあいただきます」
「いつの間にッ…」
白神さんは、俺の首筋に歯を立てる。
やばい…。
血を吸われてる感覚がする…。
「ぷはぁ…。美味しい」
「お前、マジなの?」
「マジだけど?」
「マジかよ…」
「というか貴方、もう私の眷属だから」
「は?」
「黒神が良いって言ったんじゃん」
「理解が追い付かないんだけど…」
マジで何を言っているんだ…。
「んー。じゃあ仕方ない。黒神礼、私の前に跪いて」
「何でそんなこと…ってえぇ!!」
俺の身体が勝手に動き、彼女の前に跪く。
「体が勝手に動いたでしょ?」
「何だこれ…?」
「貴方は私の眷属になったの」
「ちょっと待て、お前が吸血鬼なのは分かったから解放しろ」
「良いよ」
彼女が力を解いたのか、俺の身体は自由になった。
こいつ、マジで人間じゃねぇ…。
「それでね、黒神。私たち吸血鬼って一人眷属を作ったらそいつを伴侶とするの」
「…は?」
「まあ私としては、時間の問題だったし。黒神から許可を得れたのはありがたかったな」
「待て伴侶ってまさか…」
「これからよろしくねダーリン♡」
「急展開過ぎる…」
こうして俺は、白神美緒の眷属となり伴侶となった。
まだ彼女の事を大して知りもしないのに、これで良いのか…。
「というか白神さん」
「美緒って呼んで、ダーリン♡」
「美緒さん」
「美緒」
「…美緒」
「何?ダーリン♡」
「どうして、俺を眷属にしたんだ?」
「それはね、ダーリンのことが好きだからだよ」
「…何故?」
俺は、言うほど目立つ人間ではない。
運動もどれもある程度出来るレベル。
勉強も平均レベルだ。
器用貧乏とはよく言ったものだ。
そんな俺が、こんな美女に眷属にされる覚えは無いんだが。
「私ってあまり仲の良い友達はいないの。最初は物珍しさから話しかけてくる人は居たけど、今ではあまり話しかけてこないの。まあ、私の性格のせいでもあるんだけどね。私って興味ない事だったり興味ない人に対して、素っ気無い態度になってしまうの」
確かに、彼女はクールな雰囲気を感じさせる。
でも、別に近寄りがたいとは思わないんだが、他の人は違ったりするのか…?
「でもね、ダーリンは違ったの。下心とか打算とか無く、私と話してくれたから。それに、こんな立ち入り禁止の屋上にまで来てくれたんだもの。好きにならない理由が無いよ」
「好きになる理由も弱い気が…」
「良いの。もうダーリンは私のものだから♡」
これはもう流れに身を任せた方が良いのかもな。
関わりが無いだけで、彼女は美人だし、俺には勿体ない。
「今、自分には勿体ないとか思ったでしょ」
「当たり前のように考えてることが分かるんだな」
「そうだよ。ダーリンと私の感覚は共有されてるから」
「はっ?」
「貴方の痛みは、私の痛み。私の痛みは貴方の痛みだよ」
「なんで、全部後出し何だよ…」
「ダーリンが血を吸っていいって言ったから」
「そうだった!!」
俺としたことがっ…!!
「まあ私は、ダーリンじゃなきゃやだ。私の全てはダーリンにあげる。その代わり、ダーリンの全てを私に頂戴」
「ちなみに、拒否権は?」
「無いよ♡」
「了解です」
なんかよく分からんけど、もういいや。
彼女に任せよ。
「あっ、そうそう。もし浮気とかしたら…」
「したら…?」
「こうだから♡」
美緒は、どこからか取り出したカッターを彼女自身の手に突き刺した…。
「痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「痛いよね、これが私の痛み。浮気したら、このくらい痛むってことを覚えておいてね」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は、ひたすら叫ぶ。
感覚の共有。
彼女の痛みは俺の痛み。
それを証明するかのようなものだった。
「これからよろしくね、ダーリン♡」
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