貴方の全てを食らい尽くしたい。

MiYu

第1話 貴方の血肉をください

絶世の美女。

この世には、アニメや漫画のような創作の世界にも匹敵するような美女が居る。


「黒神…貴方の血肉をください」

「は?」


黒神礼くろかみれい16歳。

高校一年生。

今、俺は屋上に呼び出されていた。

目の前にいる美女、白神美緒しろかみおによって…。





時を遡る事6時間前。

5月20日、体育祭を終えた2日後。

白夜高校に入学し、一カ月ほど経った日だった。

俺は、自分の靴箱の前に立ち尽くしていた。


「黒神~」

「おう、神門。今日も元気そうだな」


俺に話しかけてきた男、こいつは神門煉みかどれん

同じ1年2組に在籍しており、席も隣で仲良くなった。


「というかどうした?靴箱の前に立ち尽くして。バレンタインにしては早すぎるぞ」

「ちげぇよ。なんか手紙が入ってたんだ」


そう、俺が靴から上履きに履き替えようとした時に、靴箱に手紙が入っていた。


「手紙?靴箱に手紙なんて、ベタだけど意外に無いものだと思ってたんだけど」

「同じくだ」

「それで中身を見たのか?」

「まだ」

「見てみようぜ」

「はいはい」


手紙の内容に目を通す。


『黒神礼、放課後、屋上にて待ってます』


「…いたずらか?」

「さあなぁ。というか、ここの学校って屋上どうやって入るの?」

「知らね」


白夜高校は4階建ての校舎だ。

俺たち1年2組の教室は3階に位置する。

じゃあ、屋上は4階の階段を上ったら行けるだろうと思うがそれは不正解。

4階には、授業で行くことがあるのだが、階段は4階までしかない。


「ああ、そういえば」

「なんか心辺りあんのか?」

「もしかすると非常階段を使えば行けるかも」

「へぇ」

「まあわざわざ非常階段を使わせて、屋上に呼ぶのは非効率というかありえないだろ」

「じゃあいたずらか」

「かもな」


手紙をポケットに入れ、教室へと向かう。


「というか神門」

「んー?」

「首筋にキスマークついてるんだが…またか?」

「…そうなんだよ」

「愛されてるなぁ」

「まあな」


神門は、1個下の彼女がいる。

その彼女から愛されている様子は分かりやすい。

というより、神門は彼女にマーキングされてる気がするが、本人には伝えていない。


「それでどうする?」

「どうするって?」

「手紙だよ。行くのか?」

「放課後か…。暇だったら行ってみる」

「おう」


そうして、放課後。

神門は、文芸部に入っているため教室で別れた。


「えっと…。ここから非常階段に行けるんだよな…?」


周囲に誰も居ないか確認し、非常階段の扉を開ける。

階段を上り、屋上を目指す。

普段、ここは使われていないのかとても静かだった。


「本当だ…。4階より上に行ける階段があるじゃん」


4階をあとにし、さらに上を目指す。


「ん?鎖?」


屋上に入るための扉の前に着いたのだが、足元に鎖が落ちていた。


「これって立ち入り禁止って事か…?」


周囲を警戒し、扉に手をかける。

もう少し扉は重いかと思ったが、大したことなかった。

開かれた扉の先に、先客が来ていた。


「白神さん…?」


白神美緒。

俺と同じく1年2組に在籍している女の子。

金髪に、エメラルドグリーンの瞳。

目つきは鋭く、切れ長。

背丈も173㎝ある俺とあまり変わらない。

日本人離れした容姿した彼女だが、あまり特定の誰かと仲良くしているイメージはない。

授業中も寝ている気がする。

あまり会話する事無いから、彼女にはそういうイメージしか湧かない。


「黒神」

「ん?」

「来てくれてありがとう」

「という事は、靴箱の手紙は白神さんが?」

「うん」


手紙の差出人は白神さんだったようだ。

しかし、どうして呼び出されたのか皆目見当もつかない。


「それで黒神」

「はい」


彼女は、大きく深呼吸をし、俺を見据える。


「黒神…貴方の血肉をください」

「は?」

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